環境の考え方

−サスティナブル(環境負荷削減型)建築(FSU工法)の普及と建築件数の推進−

 現代文明が、地球環境に人類存続の許容限界を越えた影響を及ぼしている事実は、もはや議論の余地ない程明らかです。今、現代文明を構成する全ての産業が、持続可能な社会の実現のために何をなすべきかを問われています。
 これまでの建築は、特に近年、自然形質の損傷だけでなく、新建材生産や輸送等での化石燃料等の有限な資源やエネルギーの消耗や温暖化ガスの産出及び建設廃材の排出など、地球環境に負荷を増大させる仕組みの上に成立してきました。これを改め、建築の部材を解体・再使用の容易な仕組み(FSU工法)として廃棄物の産出を削減し、使用材の殆どを循環型資源である地産地消の木材で構成することで、森林整備を広げ、二酸化炭素の吸収を促進させる仕組みの建築にする必要があります。このような仕組みの建築にすることは、日常業務を環境の負荷削減行為に転換させ、建築する意味を全く違うものにし、デザイン的にも居住性能的にも、これまでと異なる建築を生み出す事になります。
 このような環境負荷削減型の建築の仕組みは、理性的判断からすれば、時代の必然です。これを世に根付かせ、地球環境の負荷を少しでも軽減し、持続可能な社会構造を、行政や善意を頼みとせず、競い合う市場の建築を通して構築していく事業展開を多くお方の協力得ながら推進していこうと考えています。

IMG_3766

環境に対する考え方詳細

環境(生態系)と建築行為

 基本的な認識として、建築行為は無自覚なままなされた場合、環境や生態系に対して地形の形質変更や種の多様性の減少、廃棄物の産出、化石エネルギーの消費、二酸化炭素や代替えフロン等地球温暖化ガスの増大、等々負荷を増大させる方向に作用する原罪を有していると認識しています。それを如何に軽減できる形で建築していくかが、私たちに常に課された課題であると考えています。
 それで私たちは環境に対して1990年の京都議定書が発効された頃から色々な試みと提案をして参りました。学会の中での研究や単なるスローガンあるいは社会的アピールではなく、実効性のある提案や行動を心がけてきました。大切にしていることなので長くなりますが、そのことに関する考えを述べます。

環境に目覚めさせられたきっかけ

 バブル景気がはじけた頃、不法投棄の行方を追ってという建築雑誌の企画の取材で、東京湾中央防波堤埋め立て処分場と、江東区のごみ焼却処分場を見学する機会がありました(住宅建築誌1994/10)。
 埋め立て処分場では、東京中から集めてきた様々な廃棄物が、異臭を放ちながら累々と積まれ、見渡す限り水平線の彼方まで広がっていました。そのゴミの山の上を、白いポリエチレンの買い物袋が、ゴミを漁るユリカモメの鳴き声と共に無数に宙を舞っていて、この世のものとは思われない光景でした。
 焼却処分場では幅も奥行きも、薄暗がりのせいもあって、向こう端が見定められないほどの巨大なゴミ投棄槽に、なんとも言えない腐臭の立ち上がる中、これまた深さ数十メートルはあろうと思われる底の見えない暗闇の槽へ収集車が数十台横づけしてごみを次から次と吐き出していきます。投棄槽の見える限りの下の方で、ゴミが発酵したのかメタンと覚しきガスがあちこちでチョロチョロと燃え、辺りをぼうと全体を照らし出していました。奈落の底とはまさにこのようなものかと思われる光景でした。

安定型と管理型の廃棄物処分場

 ごみ処分場にはガラスや陶器のように投棄しても地中を汚染する心配のないゴミ用の安定型と、化学物質が含まれていて地中汚染の心配のあるゴミ用の管理型とがあります。管理型のゴミ処分場は、鋼製矢板や不浸透質シート、あるいはコンクリート等で周壁も底も覆われて、雨水で汚染物資が地中汚染をしないようにしてあります。それでも、管理型の処分場は周辺住民の反対も強く、また建設費用もかさみ、全国的に不足している状態です。

石膏ボード等建設廃材の行方

 管理型の処分場で大半を占めるゴミが建設廃材でした。しかもその多くを占めるのが新建材です。現在、住宅を求める消費者の、意向を先取りした建材メーカーが、丈夫で手入れの要らない、劣化し難く、仕上がりが一様で施工手間の少ない建材として、新建材を近代技術で次から次と大量に生みだしています。その中でも管理型に分類されていて驚いたのが石膏を紙で挟んだ石膏ボードでした。石膏ボードは殆どの建築で壁や天井に、大量に使用されている材料です。石膏も紙も土に返せるはずなのになぜ管理型の処分場に捨てなければならないのか不思議でした。それは使用されている紙が再生紙のためで、その再生紙に染み込んでいるインクが土中に捨てると地中汚染になるとのことです。また石膏と紙は接着剤等でくっついているのではなく、水と熱による石膏の化学変化で紙に食いついていて、はがすことが困難なため一緒に投棄せざるを得ないとのことでした。

設計行為が環境に果たしていた罪

 ショックでした。日夜要望に応えようと、良かれと思って励んでいる日々の設計行為が、このゴミの山を増大させる結果に繋がっていたのです。依頼者個人の利益にはなっていたとしても環境には相当の負荷を強いる要因を作り出していたのです。自分だけでなく、依頼主までをも社会に害を与える行為に無自覚に加担させていたのです。このまま設計を生業としていっていいのか考えてしまいました。

近代科学は望ましい方向に進むと限らない

 近代の科学技術からして紙と石膏をはがす技術はそれほど問題なく出来ることだろうと思われます。しかしそれが経済的に割の合わないことだから消費者がその分の費用を払わないだろうと考えて、環境のためにあるべき方向の技術を開発するより、売れることのために技術の力が向けられてきたのです。科学技術や研究への努力が、社会的にどこか違った方向に向けられている気がしてなりません。そこで、私も石膏ボードをまったく使わず、杉の板材を下地にした住宅を作る試みをしてみましたが、石膏の切りくずの粉がなく現場はきれいなのですが、小さな住宅の現場で実現するには予算が足りなかったり、依頼主の要求を満たす建築が作りにくかったりと、通常の手法として一個人が行うには、容易ではありませんでした。

文明の成熟度バロメーターとしての廃棄物処分システム

 そのころから建築業界でもリサイクルが叫ばれはじめ、アルミサッシがその先鞭をつけ、業界でも少しずつリサイクル製品が流行りになってきました。しかし中にはリサイクルしても廃棄処分は結局管理型処分場に捨てなければならないものもあり、それではどれだけ意味あるのか新たな疑問も生じさせました。すべての生産行為は、その生産過程と最終処理で如何に環境に負担がないかによって是非が問われるべき気がします。それが、人類誕生からの文明の成熟度のバロメーターであると考えています。

IMG_3562

エネルギー消費等建築の与える負荷

 建築行為が与えている環境負荷には、廃棄物の他にも、エネルギー消費による枯渇しつつある化石燃料の消費と、それに伴う二酸化炭素の排出があります。現在、新建材といわれる製品の多くは生産過程や輸送過程で大量の燃料か電気を使用します。推奨されるリサイクル製品も、アルミなど大量の電気を消費します。太陽電池でさえ、設置後に採取される電気の数年分を生産過程で先に消費してしまいます。エアコンやエコキュート等のヒートポンプの冷媒に使用される代替フロンも、その扱いを注意しないと、二酸化炭素どころかその数倍の地球温暖化ガスとして負荷を与えます。それだけでなく、建築時の造成や建築資材の原料採取で地球の表面を荒らし、自然の形状を変えていきます。

住宅の平均寿命30年弱の持つ意味

 このように環境に大きな負荷を与えて出来上がる住宅も、日本での平均寿命が30年弱という事実が示すように、構造強度に関係なく短い期間で建て替えられています。しかもその住宅に使用されている原材料の木材は、その成長に50年から60年を必要とします。これは、使用者に建築を永く使いこなしていくという価値観や習慣が少なく、あるいは建築そのものに時代の変化に対応する能力が不足していることを指し示しています。

社会と個人の対応のあり様

 今日の科学技術の急進は社会のインフラを大きく変化させ、グローバル化を促進し、大量の情報をもたらして、個々人の生活形態までも多様に変化させています。この状況の中では、新築時に遠い先まで見通した判断は困難です。また廃棄物にしろ、エネルギーにしろ、今までの仕組みのままで建築をし続けていくことは、いずれ限界がきます。何より、私たちの無自覚に作る住宅にしろ、石膏ボードの紙をはがす技術にしろ、社会の前線で日々現実と向き合っている者は、外圧が生じるまで変わらない各業界の中で、気付かないまま意に沿わない方向に引きずられて行きがちです。個人がいかに頑張ってみても、報われない努力に、虚しい想いをさせられることが多いものです。

IMG_3695

個々の立場で設計者は何ができるのか

 しかし、そのような者であればこそ、それぞれの立場で在るべき姿を模索し、社会の仕組みの適切な方向を、機会ある毎に提案し、示していくことが重要ではないかと考えています。設計者の場合、それが専門家としてのおおきな役割ではないかと考えています。現状を批判するだけではなく、少なくとも個別の対応を期待して依頼して下さる方に対してはもちろん、社会に対しても、問われた時に、「建築を取り巻く大きな仕組み」と「環境への負荷を削減する方向に働く建築の可能性について」の説明と提案が出来るようにしておくべき責務があると考えています。これまで、FM工法、DEWS工法、そしてFSU工法を模索、開発してきたのもそのためです。

東日本大震災での応急仮設住宅の建設提案

 2011年3月の東日本大震災でも、そこで大量に建設される応急仮設住宅は、廃棄処分を考慮したものではないだろうと予測し、建築部材を再使用できるように考えられた工法(FSU工法の前身)での住宅を、盛岡市の昭栄建設さんと岩手県に提案し、採用され、宮古市と山田町に59戸、実際に建設いたしました。

fac_in

盛岡市寄贈の仮設住宅団地の集会場建設提案

 応急仮設住宅の工法提案が盛岡市の復興支援で関心を持たれ、震災の翌年、盛岡市が寄贈する、大鎚町、山田町、陸前高田市の応急仮設住宅団地内の集会場の建設工法として採用され、盛岡市の昭栄建設さんと支援事業に設計者として参加いたしました。

国交省の先導技術開発助成事業等での採用

 建設廃棄物産出削減と化石エネルギー消費削減、及び二酸化炭素吸収固定増大かつ延長に貢献する工法として,FM工法やDEWS工法の技術開発ということで、三陸木材高次加工協同組合さんとの共同申請をして、市場活性化技術開発助成を受け、DEWS工法での60分耐火性能試験をクリアーし、認定を取得しました。2013年は岩手県森林組合連合会さんと共同で先導技術開発事業の助成を受け、FSU工法での30分の耐火性能試験をクリアーし、今、防火構造外壁の認定を申請中です。(開発業務参照)

釜石地方森林組合等との共同事業「森の貯金箱事業」

 釜石地方森林組合、岩手県森林組合連合会、(株)リンデンバウム遠野、それと(株)結設計とで、釜石地方の森林整備を進め林業活性化と二酸化炭素吸収固定のための「森の貯金箱事業」を行っています。具体的な一つとしては、KDDIさんの携帯電話のマニュアル本回収による、廃棄物削益社会減還元事業として、FSU工法でつくる釜石市のバス停のベンチや屋根の寄贈事業にも参加させていただきました。

fac_in

被災者再建住宅への提案と取り組み

 「森の貯金箱事業」の一環として、被災者の再建住宅建設を、“FSU工法で造るあなたの一軒の住宅が、釜石地方の森林整備を一ヘクタールすすめ、二酸化炭素を40年間で30トン削減することになります”というキャッチフレーズで、釜石地方森林組合の被災された4割の方を始め、被災された方の再建住宅の設計支援活動を行っています。

最後に

 ここまで読んで頂いた方は、私たちが石膏ボードや新建材を使わずに、開発した工法で住宅を設計しようとするのでは、と思われるかもしれません。最初に述べたように、私たちの業務はどれだけ個別の方の条件に適切かつ創造的に応えられるかと考えております。私どもの設計事例には、似た傾向の事例も多いかもしれませんが、独特の雰囲気を持つ事例も数多く見受けられると思います。工法開発は多様な条件に応える手法を増やすためであります。社会に対して建築の仕組みを再考して頂く、一つの試案として開発しているのであるとご理解ください。個々の方の条件が開発した工法と合えば良い住宅となりますが、必ずしもそれが最適の答えになるとはかぎりません。私たちは住宅メーカーのように量で勝負出来る立場の職能ではありません。工法ありきではなく、その時々で個別の要請と条件に最も適切に応えられる手法を選択することが重要であると考えます。