FSU工法2016について

なぜFSU工法なのか  ― 説明を兼ねて ―

建築は資源の採取、エネルギーの消費、廃棄物の産出等で、どうしても環境に負担を強いてしまいます。FSU工法は、せめて自分が関与する住宅や建築だけでも、環境への負荷が少ない、むしろ負荷を削減する方向に作用させたいと、独自に開発した、木造軸組の新工法です。通常の3~4倍という木材の大量使用で、林業の活性化を図り、森林整備を進め、二酸化炭素の吸収を増大させ、それを更に木材の生長期間以上、建築に固定させ続けるため、使用後の建築の解体部材も容易に再使用できる仕組みとした、木造の新しい建築工法です。

この工法は建築生産時の人件費や新建材の使用を抑制することで、通常以下のエネルギーと建築費で、生産が可能になるよう工夫されています。都市空間に森林(二酸化炭素)を溜め込む=forest stock in ueban spaceの頭文字を並べてFSU工法と命名しています。

工法としての新しさには、建築物としての新しさと、造り方の新しさの二通り有しています。
建物としての新しさは、端的にはその壁にあります。
P1240015本来、木造建築の場合、構造壁(躯体)の構成は、構造上の柱を半間(0.91m)又は一間(1.82m)の間隔を置いて立て、その間に耐力を担う筋交い(斜材)や間柱を立て、中は空洞もしくは断熱材が充填されます。その躯体の内外にボードや合板下地を貼り、その上に仕上げが施されます。現場で多くの手間がかかります。
それを、FSU工法の場合は、写真のように柱と同寸の無垢の角材を隙間なく連結したパネルを持ち込み、建て並べ、それだけで壁の構造躯体であり、気密や水密材、さらに防火材でもあり、内外の仕上げ材にもなる工法です。しかもその壁は90㎝内外の幅にパネル化されていて、組み立てや解体、再組み立ては、パネルを固定するピンの抜き差しで容易に可能です。屋根や床もパネルになっていて、再使用を前提としているため、建物の引っ越しや、同工法の他の建築部材としての再使用が容易で、使い回しもできる特徴を持っています。(在来工法との比較図参照)
P1240057 造り方としての新しさは、事前に工場で、軸組だけでなく、壁や屋根等も、仕上げまで含めて、可能な限りパネル化して現場に持ち込まれ、建具及び家具、あるいは設備機器の取り付けも、事前にパッケージ化しておいたものを、現場に持ち込み、それを数人の多能工のグループで工事を行う、職人不足に対応した工事の仕方であるということです。パネル工場も大資本の工場のように、大量生産大量消費を前提とした大掛かりなものでなく、それぞれの地域のプレカット工場もしくは製材所又は建具工場に設置した簡易な機械で生産できるもので、地産地消に適した生産が可能です。

FSU工法の現段階での具体的内容

P1240030P1240065写真のように、柱と同寸の無垢の角材を、実材を挟んでボルトで連結した柱抜きの壁パネルとし、上下の横架材によって固定し、壁を形成します。壁は、最初に基礎の上に敷かれた土台に柱を立て、その柱間に壁パネルをクレーン等で釣り上げて挿入する方法と、柱まで一体的に連結されたパネルを、柱抜きパネルと交互に、順次建て込む方法の二通りあります。耐力を負担しない開口部等の壁パネルも、その時点で連続して設置していきます。どちらの方法も、パネルの上に横架材を載せ、金物で緊結します。床や屋根を支える軸組材(桁や梁)もその時点で掛けます。二階建ての場合も同様の作業をします。金物での接合もパイプとプレートの二種類あります。(金物は順次紹介して行きます。)
次に横架材の上に屋根パネルを載せ、これらも金物等で固定します。二階建ての場合は、二階の梁等が掛けられた時点で床パネルを載せ、金物で固定して剛性を確保します。場合によっては梁の上に根太を掛けて合板を貼る、在来の剛床と同様の方法を採ることもあります。屋根パネルは工場で仕上げまでパネル化する場合と、現場で仕上げる場合とがあります。
さらに開口部にサッシとドアを取り付けて(工場で取り付けて来ることも、床の仕上げまですることもあります)スケルトン(躯体)建築は完成です。
そのスケルトン建築さえあれば、後は自分で自由にやりたいという方には、そこでの引き渡しも可能です。更に住宅としての充実を図りたい方には、その後、解体組み立てを考慮して用意された多様な仕様のオプションを選択し、充実させることも、また、在来工法の注文建築と同様に、全く独自に自由な仕様で作り上げて行くことも可能です。

FSU工法住宅の蓄熱性能と調湿性能

IMG_5426IMG_5444FSU工法でつくる場合、壁の中が空洞ではなく木材で充填されていますので、材料的にはより高価な構成であるということが言えます。そのため、在来工法の場合より、躯体としての熱容量が大きく、暖冷房で所定の温度にするのに時間(日数)がかかりますが、一度その温度に達すると、その後の温度変化が他の工法のものに比して少ないことが確かめられました。また、木材の持つ調湿機能で、冬は結露も少なく、過乾燥にもなりにくく、夏も多湿になりにくいことが私たちの比較実験で実証出来ました。写真はその温湿度実験のデータを得るために作った3棟の小屋です。一番奥が在来工法、真ん中がFSU工法で、それぞれの躯体に同条件になるように、断熱材と下見板を貼ったもので、手前が、FSU工法の12cm角のパネルを内外表しのままの木材だけの小屋です。
5)-温湿度実験測定結果グラフ
それぞれ内部に写真のような、800ワットのヒーターで夕方6時から12時まで毎日温め、水盤も毎日一定量になるよう取り換えました。その結果が上のグラフです。FSU工法の住宅が在来工法の場合より、かなり温度と湿度の変化が少いことが読み取れます。尚、12㎝角のパネルの場合、そのままの仕上げ無しでの断熱性能は、スタイロホーム30㎜厚と同等の性能を有しています。

建築確認申請での構造の扱い

P1050662P1050664 基本的には建築基準法上の木造軸組工法の一種になります。在来の場合は筋交いや合板で揺れへの耐力を負担し、FSU工法での場合は連結パネルで負担することになります。基準法に適合させることで、確認申請で認可され易くしています。それでも、審査機関によっては受付を拒否されますので、公的審査機関で専門家集団による構造評定を申請して、その評定を得ています。確認申請では、4号ですみますが、許容応力度計算が必要です。当分は構造計算をこの工法の構造専門家に依頼するよう奨めています。

防火構造の国交省の認定について

日本住宅木材技術センターで耐火実験を行い、30分耐火の性能を確認し、国交省での防火構造外壁の認定を得ています。通常の在来工法の場合、準防火地域の延焼の恐れある部分で使用可能な、防火構造として認定された外壁の仕上げ材は、内部に石膏ボードを貼ることを条件付けされており、内部に木部の表しが出来ません。このFSU工法の場合、躯体そのもので防火構造の認定を得ており、そのまま角材パネルの木部を表すことができ、内外部とも、どのような仕上げにすることも可能です。但し仕上げ方法での是非は主事判断によります。

FSU工法部材の所在情報の一元管理

FSU工法の開発の趣旨から、本工法が普及し、部材の再使用が活発化しないとその意味が無く、そのために、建物や各部材の所在の情報は一元化し、解体部材の流通も促進したいと考えております。そのため建物と新旧の部材の流通は、同一組織で行い、またいたずらな模倣や類似の工法での事故や信用失墜を避けるために、特許の取得もしております。詳しくは当社にお尋ね下さい。

FSU工法が開発されるまでの経過

集成材工法時代

これまではFSU工法開発趣旨と同様のもと、120㎜厚、幅450㎜以下、長さ6m以下の集成材を使用した集成材造壁式工法を開発してきました。梁や桁と共に全面解体できる工法としてFM工法(事例参照)を、壁パネルだけの解体も可能な工法としてDEWS工法も開発してきました。(事例参照)

FSU工法の前身時代

昨今集成材の価格が高騰し、加工も複雑になり、製作可能な工場が少なく、工法として各地での採用が困難な傾向にありました。そこでさらに開発を進め、接着剤無しの集成材の製作ができないか検討していたところ、3.11の大震災に見舞われました。そこで岩手県の応急仮設住宅の提案募集に、集成材工法の考え方で、FSU工法の前身ともいえる角材連結パネルを使用した工法で応募したところ、採択され、宮古市と山田町で59戸の仮設住宅を建設する機会を得ました。
その後、その工法がエコであるとの評価をいただき、盛岡市が寄贈する、山田町、大槌町、陸前高田市の仮設団地に建てる集会場の工法として採用されました。(ブログ記事参照
さらにこの工法が森林組合向きであるという評価を岩手県森林組合連合会と釜石地方森林組合にいただきました。そこで津波で流された組合員の4割の方の住宅の再建に、この工法も参考にしていただこうと、釜石地方森林組合の仮設の事務所をこの工法で建て、その二階をこの工法のモデル住宅として建築し、組合員の方に、いつでも見ていただけるようにしました。(写真参照)その間、構造形式や材の接合方法は進化し続け、構造耐力実験も十回前後行い、耐火試験も行い、色々な試行錯誤を繰り返し現在に至っております。

被災者の移転先の高台の造成工事がまだ始まらない段階で、個人的に用地確保ができた方の住宅が、この工法で数棟完工し、生活が始まっています。
その後造成工事が徐々に終わり、岩手県沿岸部を中心に再建住宅が全部で十数棟完成しました。
関東・関西でもこの工法の部材製作と供給の体制を整え、本格的に始まっています。

平成23年7月  岩手県(山田町・宮古市)の応急仮設住宅59戸が完成しました。
平成23年12月 岩手県山田町・大槌町にもりの貯金箱(盛岡市が支援する家)集会所が完成しました。
平成24年3月  岩手県陸前高田市に「もりの貯金箱(盛岡市が支援する家)」集会所が完成しました。
平成25年10月 岩手県山田町に住宅(森の貯金箱再建住宅)が完成しました。
平成24年6月  釜石地方森林組合の仮設事務所が完成しました。
平成26年3月  岩手県釜石市に住宅(森の貯金箱再建住宅)が完成しました。
平成24年7月  岩手県遠野市に住宅(森の貯金箱再建住宅)が完成しました。
平成26年4月  栃木県那須町に住宅が完成しました。(事例参照
平成27年2月  岩手県釜石市に住宅(森の貯金箱再建住宅)が完成しました。
平成27年4月  群馬県に倉庫が完成しました。
平成27年5月  釜石地方森林組合の再建の本設事務所が完成しました。
平成27年8月  岩手県遠野市と盛岡市で、移設プロジェクトを行いました。
平成27年12月 岩手県大槌町に住宅(森の貯金箱再建住宅)が完成しました。
平成27年12月 ウッドデザイン賞2015を受賞しました。
平成28年3月  岩手県大槌町に住宅(森の貯金箱再建住宅)が完成しました。
平成28年6月  宮城県気仙沼市に住宅(森の貯金箱再建住宅)が完成しました。
平成28年5月  岩手県釜石市に宿舎が完成しました。
平成28年9月  岩手県盛岡市に住宅が完成しました。
平成28年9月  兵庫県伊丹市に住宅が完成しました。
平成28年11月 岩手県紫波町に住宅が完成しました。
平成29年1月  釜石地方森林組合事務所が、「いわて木材利用優良施設優秀賞」を受賞しました。
平成29年2月  岩手県陸前高田市の森林組合事務所が完成しました。

平成29年2月に、岩手県大槌町に放課後こども教育センターが完成予定です。(構造設計協力)
平成29年3月に、茨城県牛久市で住宅が完成予定です。
平成29年11月に、東京都練馬区で住宅が完成予定です。
現在(平成29年2月時点)、岩手県で5件の住宅の計画が動いています。