呪縛からの開放

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ボストンから引き上げる時に分解して以来、ずっとほったらかしになっていたギターを7年ぶりに組み上げたのですが、こやつには一つ苦い思い出があるのです。

私が彼の地を去ったのは、2001年の12月で、あの同時多発テロ事件の直後のことでした。3ヶ月経ったとはいえ、まだまだテロへの警戒心も強く、また、例の飛行機がボストン発だったこともあり、空港でのチェックは不必要に厳しかったのだと思います。ただでさえ外国人への警戒が強まる中で、大荷物を持っていた私が他の人よりやや厳しめのチェックを受けることになったのはまぁ仕方ないことかとは思えますが、実はこのギターのある部品が原因でゲートを通過させてもらえずに飛行機に乗り遅れる事になってしまったのです。その部品とは
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これです。この金属の塊が、何かの武器と勘違いされ、お前はこれで何をするつもりだと問いただされたのです。今でも忘れないふてぶてしい顔の検査員は、ギターの部品だと説明しても “I don’t know that.” の一点張り。私の後ろにいた白人男性が、「その部品が問題になるとは思わないけど...」と言ってくれても返ってくる答えはやはり “I don’t know that.” だけ。こちらとしては乗り遅れるのだけは避けたいので、「もうそれは要らないから通してくれ」と言ったものの、彼女の中では私は既に要注意人物になっていたようで、セキュリティっぽい人が呼ばれて別室に連行されました。もうこれでこの国ともおさらばと思っていた私は柄にも無く悪態をつき、それがさらに裏目に出て尋問は長引き、気づけば飛行機の出発時刻は過ぎていました。それでも何とか部品の説明はつき、無事釈放となったのですが、実はこの部品の他に鼻毛カッターも没収されていて、今日はもう乗らないんだから返してくれといっても力強く “No!” と言わる始末。鼻毛カッターは傷つけないように先端が丸くなっているのに本当に没収されるようなものなのかと口汚く告げたものの成果は無く、仕方なく先ほど別れを告げたばかりの友人に電話して迎えに来てもらいました。幸いにも航空会社は不憫に思ってくれたようで、追加料金も無く翌日の便で帰ってこれましたが、この部品は郵送することにしたのは言うまでもありません。

これ以来、飛行機に載るときの手荷物には細心の注意を払うようになり、また、確認申請の時など、役所で理不尽な要求をされても笑顔で対応できるようになったので、マイナスばかりではない出来事だったのでしょう。とはいえ、やはり7年も放っておいた潜在的な理由にこの部品の影響があったことは否めず、大げさですが、今回組み上げたことで、あの出来事を乗り越えたと言っても良いのではないかと思います。