要望の伝え方、返し方

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設計者との家づくりで難しいのは、建て主の意向の伝え方、特にデザインセンスに関するするような部分の伝え方です。

私どもに依頼される住まいは、建て主さんの具体的意向どおりだけで建てたら満足していただけない可能性があります。だからと言って意向を聞かないとこれまたもっと不満な住まいになります。設計者もできるだけ依頼者の意向を尊重しようと努めます。
意向を強調しすぎると設計者の味も消しかねなく、十分伝えなければ不満の残るものになりかねません。自分なりにイメージのはっきりしておられる方もいれば、こだわらず柔軟に対応していただける方もおられます。意向の伝え方、意向の聞き方ということは奥深いところでは案外難しいことです。
そのようなやり取りで少し特殊かもしれませんが、最近参考になりそうな事例がありましたので、紹介してみます。

“鎌倉の家”の建て主さんは人生経験も豊かで、かなり自分なりの住まいへのデザインイメージのお持ちの方でした。ホームページもよく研究されていて、それゆえ私たちのところに尋ねてこられたようでした。
そうであるだけに、単純な要望の伝え方をしてしまうと、設計者が建て主の既存のイメージに添ったものを作ってしまい、設計者の良さを出してもらえなくなるのではとか、あるいは自分の既存のイメージを超えたものにはならないかもしれない、と言うことを心配されていました。

そこで今回、建て主さんがひとつ、私がひとつ、そのための手をそれぞれ試みていたことになりました。つまり建て主さんはイメージを言葉で伝える危険を事例で表現し、私のほうでは、建て主さんが伝えたい要望がたくさんあるのに、伝え過ぎて設計者のよさを出せなくすることを恐れて遠慮しながら伝えるもどかしさを取り除くために、間に担当者を入れてコミュニケーションすることにしました。。
建て主さんは、私どもの過去の設計事例を徹底的に研究され、自分の意向に近い事例を1件取り上げ、それを自分の意向とイメージの伝達の手段とすることで、間違っても最低限そこまでは保証されるという、滑り止めを設定されたのです。
私の方は、建て主さんが設計者に気兼ねなく話し易いように、基本提案後の細部や嗜好部分の意向のコミュニケーションを事務所在籍10年の、これまでの大体のことは理解しているベテランのスタッフを担当にしてまかせ、そばで見守り、私はそのやり取りに口を出さず、気になった時だけ新たな提案とアドバイスをするというスタンスで徹底してみました。

家を作ることに強いこだわりを持つ建て主さんでしたので、そのこだわりのエピソードのいくつかをブログでご紹介したいと思っています。

<長くなったので明日に続きます>