木だけでつくった壁のすごさ

今日、今週月曜日から行っていた厚板壁工法の改良型の板壁の60分と30分の耐火試験それぞれ2体ずつを4日間に渡って、住宅木材技術センターで無事問題なく終了しました。
(厚板壁工法の改良型:施工性向上、一部取替えや解体後のリユース可能にする、新しい工法‐DEWS工法‐)

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試験前の試験体

ほっとしました。
60分じっと見ていて、60分過ぎに燃えている試験体を取り外し、消化作業や試験後の試験体の状態確認までしてきたせいか、家に帰ったら衣類や頭髪が煤臭くなっていました。でもこれで準防火地域でも、この新工法で堂々と外部に木の板壁を現して使うことが出来ます。国交省の技術開発助成金も気兼ねなくいただくこともできます。後は認定を取得して他の設計者や建設会社の方にも自由に使用できる手立てをとれます。

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炉で1000度まで加熱します

10年ほど前、最初に厚板壁工法(FM工法)の耐火試験をした際に、板壁の何でもないところに小さな穴が開いていることが分かったということがありました。耐火試験が30分経過したころ、壁の向こうで燃えて露になったのか、そこから小さな煙が出始め、45分過ぎ頃には向こうの火がかすかに見え出してきたのです。その時には、冷や汗がすうっと滴り落ちていく感じがしました。
その経験のせいか、どうしても「物事はそうそうまくいかないぞ」という思いがいつも自分を引き締めさせ、今回も大丈夫なはずだとは思っていても楽観視できませんでした。

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この向こう側では燃えていますが、こちら側は変化無し

今回、板壁一枚の向こう側では1000度で燃えているのに、炎とは反対側の板の表面に60分経過した頃に手を当てても、むしろヒヤッとするほどで、殆ど温度上昇はありませんでした。改めて木の持つ炭化性能(自己消化性能または耐火性能)だけでなく、他の特性?断熱、蓄熱、調湿、強さ、固さ、加工し易さ、粘り強さ(靭性)、自己保護膜形成性能、炭素固定化性能等の特性について考えてしまいました。

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加熱時間が終了して、炉を開けた瞬間

木の性能の素晴らしさは、性能の“ほどよさ”にあります。
どの性能も建築材料で一番ではありません。断熱性能も発泡スチロールより同じ厚さでは劣り、鉄やコンクリートよりは勝ります。固さは逆に鉄やコンクリートより劣り、発泡スチロールより勝ります。どの性質も似たような程度で、トップレベルではないけど、そこそこのレベルにあるということです。

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燃えた側面の様子

ですが、何より総合力がダントツなんです。これだけ色々にそこそこの性能を兼ね備えた材料は他に知りません。これまで内外装なしの壁を、殆ど木だけでつくった住宅を十数棟作ってきて、それがよくわかってきました。ある意味、全動物の中の人間と同じような位置にあるような気がします。象ほど大きくはないが、ねずみよりは大きい。豹より早く走れないが亀ほど遅くはない。熊より強くはないが山羊よりは強い。

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消火中

実はこの木のそこそこ感が人間の居住空間に最も合っているのではないかという気がします。条件次第で腐るとか、変色するとかの弱点を持っていることが素晴らしいことで、人間的な気がします。しかしこれだけ優れた木の性能を、私たちは十分かつ上手に使いこなせていません。性能のそこそこ感が安易な使用許さず、観察眼と熟練を必要としているせいかもしれません。それと現代人の論理的思考に、すぐそれぞれの性能で最も高いものを求める傾向があります。それが木を使いこなせなくしている気がします。

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消火後の表面の様子

木の性能は西洋医学のような論理的思考より東洋医学のような統合的思考に合った材料かも知れません。なんか難しい話になってきたのでそれはまたこの次に。

木だけでつくった壁のすごさ」への2件のフィードバック

  1. ピンバック: DEWS工法 構造実験 - 住宅設計、つれづれに想う

  2. Pearsword

    はじめまして、ブログ村のランキングから来た、二級建築士を目指す大工見習いです。
    そうですか、木の生地を出したままで、ブラスターボードなど使わずに、木だけで、準耐火建築物が出来るのですか。嬉しいですね。できれば、木だけで耐火建築物を作って欲しいですが、無理なんでしょうね。
     木の中庸性が人間に似ていると書いてありますが、生物材料だからでしょうね。私は、大学の専門が木材なので、木材が高く評価されると嬉しいです。現在、木が見直されてきて、高層の建物でも、中に鉄骨を入れた複合材料が使えるようになったと聞きます。木の可能性、どんどん開拓して行ってほしいですね。

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