月: 2013年3月

善福寺の家  プチ見学会のお知らせ

3月31日(日)計画中の建主の方を「善福寺の家」にお連れするのですが、もう1組か2組の方をご案内することが可能そうですので、お知らせします。
1年半近く住んでみた建主様のご意見が聞ける貴重な機会です。

今回のプチ見学会は、予約制とさせていただきます。ご興味のある方は、下記の申し込み方法にてお申込みください。
申し込み多数の場合はお断りさせて頂く場合がございますのでご了承ください。

長期優良住宅仕様で、地下RC造1階地上木造2階の混構造の住宅です。
中央に位置するLDKは左官刷毛引き仕上げで、一部スキップフロアとなっており1.5層分ある広々とした空間となっています。
過去のブログでも紹介してきていますのでそちらもご覧ください。
住まわれてからの見学会ですので、その点のご配慮をお願い致します。

■開催地:東京都杉並区善福寺
■日時 :2013年3月31日(日)13:15にJR西荻窪駅にて待ち合わせ
■最寄駅:JR西荻窪駅より徒歩で約20分
■申し込み方法
見学ご希望の方は結設計宛にメールまたはFAXにて下記までお申し込み下さい。
お申し込みの際には、「善福寺の家内覧会参加希望」と明記して頂き、
住所、氏名、連絡先、参加人数をご記入下さい。

e-mail: office@yui-sekkei.co.jp
FAX:   03-5651-1934

※敷地内には、駐車場がありませんので、お車でのお越しはご遠慮下さい。
もしお車でお越しの場合は、最寄のコインパーキングをご利用ください。


Fマンション引き渡し

年が明けて早3カ月、もう春だなぁとしみじみ思いながら過ごしている今日この頃です。
Fマンション現場は2月末の工期に向けて着々と進んでいました。仕上がり間近で現場に足を運ぶことも頻繁になり、行く度に「もうここが出来ている」と感動しながら通っていました。現場監督さんはじめ職人さん達のおかげで無事竣工し、今月の頭に引渡しを終えました。

外断熱なので内側の部屋はコンクリート打ち放しに仕上げることが出来、バルコニーなど外断熱が途絶えてしまう部分は内側に断熱補強をしています。
キッチンはシステムキッチンではなく全部屋で全て製作なので、間取りの違う各部屋の寸法にぴったり合わせられ、ガス台のところは低くしたりといろいろ工夫することも出来ました。借りて住んでもらう多くの人に使いやすいと感じてもらえたらいいなと思います。
最上階の3階のお風呂は北側斜線により斜めになる部分にあります。
限られたボリュームの中で浴室が上手く納まり、それほど圧迫感も感じず快適そうな浴室となりました。

引渡しの時点で既に6部屋のうち4部屋の入居が決まっていました。
あと2部屋空いていたのでブログで紹介し宣伝しなきゃと思っていたところに、残りの2部屋も入居が決まりましたとのお話がありました。
ブログ紹介の出番も無く、全部屋の入居が早々に決まり設計事務所としてもホッとしています。

専用住宅で住む人が決まっているということではないので、住む人によってどのような使われ方をするかの想定範囲や、1番のベストの選択に難しい部分もありました。
より多くの人に満足して住んでもらえたらいいなと思います。


内装下地工事

少し時間が空いてしまいましたが、三鷹M邸の現場は竣工に向けて着々と進行中で、もう少し暖かくなった頃に引き渡しを迎えます。
現場は内外装の下地工事が進み、各部屋の機器・器具の取り付け位置などの詳細な位置も見える状況になってきました。

写真はトイレの壁です。トイレが居室に隣接するので壁は防音のためにボードを2重張りとし、壁内部にも防音効果を高めるために断熱材を充填します。

和室の天井は勾配天井と平天井の部分があり、平天井部分の仕上げは建て主さんの希望もあり葦ベニヤとしました。
葦ベニヤ天井が和室の雰囲気を更に引き揚げ、快適な空間となるのが今から楽しみです。


森の貯金箱事業ー2

前回のブログの森の貯金箱事業で、森林整備で産出される木材の半分は合板工場に4m又は2m材として、建築市場より割安に、安定した価格で引き取ってもらっている話をしました。岩手ではその合板工場の一つは流されて廃業し、丸太材の引き取り手がなく困っています。というので、森の貯金箱事業の一環として、被災地の通常高さの再建住宅とは別に、関東で、FSB工法で4m材を歩留りよく活用すべく、考え抜かれた、小さくて豊な住宅を規格化し、その提供事業も進めています。
通常の二階建て住宅は2.8mの階高で、二層構成で、軒高を5.5m程度になるのが普通です。それを、4mの一層構成ながら、内部の床面積の半分にロフトを設け、残り半分は吹き抜けとした、とっても豊かで、自由度が高く、多様な展開が可能な空間の家です。ニ階ロフトの天井は1.9m程度で、歩ける天井高です。
仕様等、興味ある方は、私どもの事務所(結設計)にメールいただければ、ご紹介いたします。


建築先導技術研究開発助成事業2

今回の研究開発の要点は、木構造の建物を、使用後の解体時に、建築部材を、解体と再使用が容易にできるようにするにはどのような部材の仕組みと構成にすればいいのかを考える研究です。
それには、部材がレゴブロックのように同一素材で構成され、部材ごとに再使用できるようにするのが、解体と組み立てが容易になります。そのため、通常の木造軸組み工法では、柱、筋違、間柱、断熱材、外側に合板、防水紙、通気層、サイディング、内部に石膏ボード、クロス等の仕上げで構成されているものを、木材の塊だけで構成し、組み立て解体等の作業が容易に、使用材料の種類も少なくすることで、目的を実現することを考えました。

上の写真の集会場では、4寸角の柱で構成し、パネル内外表しとしました。関東から宮城県までや三陸沿岸の温かい地域ではそれだけで必要とする断熱性能はほぼ満たせますが、、三陸の内陸部では足りませんので、外部に断熱材を貼り、仕上げ材を貼っています。

それで、柱と同寸の角材をボルトで連結し、無垢の壁パネルとし、杉材の持てるあらゆる性能を活用し、そのパネルだけで構造耐力、断熱、耐火、内外仕上げ等、壁が必要とする機能を満たそうとする考えです。
言ってみれば、何のことはない柱を並べただけの壁です。ログハウスの壁を縦にしたような、誰もが一度は考えたことのある構造です。何が先導技術なんだよ、と言いたくなります。

ところが、ただ柱を並べてボルトで結合しても、杉は柔らかくめり込み、必要耐力が出ないのです。まして、杉は、木材でも一番燃えやすい材です。防火構造である、30分間、壁(3.6m×3m)の向こう側で、1000度で燃焼していても、こちらに火が来ず、点ほども見えず、温度も上昇しない、という条件をクリアーできないのです。その上、土台や桁(梁)にしっかり固定でき、しかも解体しようとすると容易に解体でき、再組み立て(使用)も容易にできないといけないのです。そうなってくると俄然難しくなります。
それで、まず考えたのが、連結する柱の間に木ダボを数本入れて、ボルトで締め付け耐力を測ってみました。

応急仮設住宅で採用した方法です。正直この方法ですと、仮設住宅で必要とした程度の耐力は出るのですが、期待したほどではないのです。それでもう少し耐力の出る壁にしようと、いろいろなダボをはじめ、コッタ―など、様々な方法を試みました。

土台や、桁との接合も、最初は木栓や枘等、色々な仕口を検討し、実験もしました。接合金物も独自に色々製作し、試してみました。


なんとか、部分解体もできるようにしたいと、最後まで何とか実現を試みましたが、部分解体を考えると途端に困難が数倍になり、とりあえず今回はお預けにしました。


防火構造も、単純に柱を連結しただけですと、木と木の隙間からすぐに火が通ってしまいます。燃えにくくするために、木が燃えると炭化し、それ以上は燃えにくくなる、燃え代耐火性能を活用して、30分間、何とか火が反対側に行かないようにしなければなりません。連結ボルトに火が入ったらすぐに反対側に火が到達してしまいます。下の写真は、耐火試験体を製作しているところ、設置前の試験体、炉に設置しているところです。

30分過ぎて、試験体を取り外す瞬間と、とり外した試験体の燃焼面の状態です。



今日、構造強度を出すための商品や防火用に接着剤を使用するとか、耐火も耐火シールなど使用すれば防げる製品は少なくありません。そのような製品を使用すると、量が量だけに、費用がとんでもなく増大し、それを設置する手間もばかになりません。今回の研究はなにより、できるだけ手間がかからず、安価な方法でパネル製作や解体組立が容易にできなければ、意味ありません。木の性能を活用して目的を達成しようとした志や技術屋としての性と、一緒に開発している者同志、他の製品に頼ることは、安易ではないかと思え、その選択は避けました。下の写真は、一緒に開発している森林組合の方が考えた、柱の数か所、同時に穴を開ける、手製の工作機械です。彼とも、行き詰って安易な方法を取ろうとすると、お互い、いいんですか?というセリフを交わし合っていました。

今日ここでブログでお話しできるのは、構造耐力が、12月に壁倍率の3.5倍弱の試験結果が出、2月8日に、30分の耐火試験をクリアーできたからです。さすがに、クリアーするまでは、できなかったことを考えると話す気になれませんでした。


建築先導技術開発助成事業


上の写真が、前回の森の貯金箱に関するブログ記事で書いた、釜石の森林組合の事務所モデル棟のFSB工法パネルの外壁の実物説明模型です。角材連結パネルの外部側に、白い防水透湿シート、青い断熱材のスタイロホーム、通気用押さえ縁、カラマツの下見板(雨がかりの一部は金属鋼板)の仕上げ材です。これまで、当事務所が続けてきた、このFSB工法の技術研究開発が、平成12年9月、国交省の建築先導技術開発助成事業に、岩手県森連との共同開発研究事業として採択されました。9月以降13年の2月までに行われる技術開発と、構造耐力壁の構造性能と耐火性能について、公的機関で行われた試験で、その性能を確認する作業にかかった費用の半分を助成するというものです。
前回ブログで話した、森の貯金箱事業を進めていく中で、FSB工法で釜石地方の被災地の再建住宅を建てようとすると、この杉の角材連結パネルでの工法で建てるには、在来木造軸組み構造の耐力壁として認定されていない壁なので、下記の写真のような構造実験の上、確認申請時に試験データを添えて、安全を確認した構造の許容応力度計算書を添えて提出する必要があります。

また、殆どの市街地の敷地では、建物の外壁が必要耐火性能を有している必要があります。そのため、この工法の杉の柱の角材パネル表しのままで使用しても、必要な耐火性能を満たしていることを、下記の写真のような1000度の耐火燃焼試験の炉で、データを取りながら、試験をを行い、証明しないといけません。それでないと市街地で建てるには、外部にサイディング等の余計な外壁仕上げを施し、内部に石膏ボードを貼る必要が出て来ます。表しのままでその性能を満たせば、耐火性能を劣化させない材である限り、パネルの上に自由な仕上げができ、内部もパネル木材を表しにもできます。



被災地での再建住宅は、建築を予定していた人でありませんから、建築費に向けらる費用はとても少ない方が多く、そのような方に対応できる建て方をしなければなりません。
これまで開発してきたFSB工法は、二酸化炭素の吸収固定とその延長を図ることのできる建築にすることで、環境の負荷を削減しようと開発してきた建築工法です。自分としては、さらに木材の持つ熱容量の高さと、調湿機能による自然で快適な居住性能の高さから、ある意味理想的な住宅の工法になる予感を持って開発していました。それがたまたま仕上げに新建材等を望まず、杉材表しで良ければ、かなり建築費を削減できる効果があることを、応急仮設住宅で証明され、再建住宅に最適だと、森林組合の方に認められて、森の貯金箱事業が始まりました。この事業を続けていくためには、どうしても構造耐力と耐火性能の公的確認が避けて通れないのです。次回はこの開発事業で行われた内容の話をします。