マンションや戸建て住居の改装・段階ごとアドバイスの用意

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最近なぜか身内に近い関係者から、改装アドバイスを求められることが多くなりました。ここ1年で4件です。身内はともかく改装相談は簡単なようで案外難しいです。何が難しいかと言ったら、こちら設計者側の対応ではなく、改装しようする側の方の状況や意向の的確な把握です。状況が的確に分かれば、技術的には殆ど何とかやりようがあり、判断もできます。ところが、改装しようとする方の条件の出し方が分かってなかったり、意向の全内容とその中の優先順位、それと条件等の抜けがあったりして、状況把握が難しいのです。特に改装は部分的で簡単に考えている方が多く、自分の状況をよく整理しておらず、説明も不十分で、言いたいことが多い割には、抜けも多く、それが心配なのです。本人が気づかない、あるいは大したことでないと思っている事柄も、そのことが設計を考えていく上で、結果を変えてしまう大事な場合もあります。新築と違ってその方の改装へのスタンスの置き方が軽いため、しっかり設計依頼してつくるつもりもなく、状況整理や説明が疎かになりやすいのです。そのせいか、継ぎ足し継ぎ足しの増築を繰り返している方が時々見受けられます。
それと自分の関わりの度合いを決めることが難しいです。これまで間取り程度やアドバイスだけでいいということで工事を始め、完成後呼ばれて見せて頂き、あそこをなぜこうしなかったのか、とか、ここをもう少しこうしておけば良くなっていたのにとか、と残念に思うことが少なくないからです。なぜ最初に教えてくれなかったのかと責められそうですが、それを事前に察知して手を打つには、実施設計まで自分がしない限り無理なことです。設計の価値はその方がその設計者の価値のバランス感覚や嗜好をどの程度に理解しているかで決まります。それを理解していない方には、その価値を言っても押し売りになるだけで、難しくなることも見え、気が進みません。そのため、アドバイス以上に踏み込めなくなります。
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一般的に殆どの方は、改装に限らず設計はマイナスにしないためには大切とは思っても、設計であらゆるところに散りばめられ、一言で言いきれないプラスの良さの体験がない場合、設計の重要さと難しさへの認識がありません。誰が設計しても同じだろうと思っています。釜石で再建住宅のお手伝いをしていて、予算も厳しく、やむなく建てざるを得ない方が殆どのせいか、それが嫌というほどよくわかります。設計は工事屋さんのサービス程度の認識です。設計者にしてみれば、工事費とは別に、額の多寡に関係なく、予算を設計にも割り振る意識を最初に提示して相談すれば、誠実な設計者なら喜んで協力してくれます。
しかし、殆どの方は予算がが少ないからと、設計料分は工事費に回したいと考えます。そして設計は自分が指示した間取りを工事屋さんが作図してくれれば十分で、プロの設計者は予算に余裕のある人が頼むもの、という認識です。いざとなったらどんな家でも住めるという住宅観が、提示された工事屋さんの間取りが、よく吟味されてあるかどうかも、また人によって吟味する内容が違うことも気にしません。設計者の必要性を感じないまま、それでいて工事屋さんの設計者にさえ、プロなんだからちゃんと考えてくれるだろうと、自分の吟味への怠惰に都合よく解釈して対応されます。自分はできてみないと分からないのだからと、想像力を働かせようとせず、提示されたものによほどの不具合でも見えなければ良しとしてしまいます。ですから設計の良し悪しは、他と比較して見るまで分かりません。分からない以上要望も口にだせず、できてみて後悔します。それでよく、「家は、三回建ててみないと、いい家は出来ない」と言われます。
工事屋さんがする設計は、設計費用が工事費に含んで支払う以上、設計者が気にする、使いにくさや出来上がりの雑然さなどは、言わない限り気にする必要ないよ、それより工事費の少ない方法を考えなさい、と依頼者が許容しているのだという自覚がありません。上の写真は27年前のマンションを昨年かなりの低予算(400万円程)で全面改装した住戸です。
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つい最近アドバイスした方も、設計が重要という意識がなく、工事屋さんに依頼したようでした。しかしできた2戸を広い一戸にする間取り図を見せてもらい、改装する者の条件はだいたい読め、既存の状況の良さを引き出せてないまま、要望も十分満たしておらず、依頼者も予算がないからと仕方なくすべて我慢しようとしているのが見て取れました。また改装する本人が見えてない問題や先々の展開も読めてないところも多く、身内関係者でもなければ私もスルーするところです。見た以上知らんふりもできなく、仕方なくアドバイスせざるを得なく、あまり意向を汲むことも、説得することもなく、確認だけしながら、予算も変わらず、殆どの要望を満たし、工事中も引っ越しせずにすむ、全く異なる間取りで、既存の状況から引き出せる最善と思える変更スケッチをアドバイスするだけで済ませてもらいました。それを見て、こんな間取りもできるのか、ということが分かったようで、それで進めるようです。本当はその後のことも重要なんですが、決まっている工事屋さんへの礼儀もあり、その辺でとどめることにしました。
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正直、身内関係者からの依頼は気のりしません。なぜなら、関係性だけできた相談は、その方なりの設計者のイメージがあり、私の考える設計を良しとして来ていることが少なく、関係者なんだから言うことを聞いてくれるのが当然、という方が多いからです。それはそれでちゃんと依頼されれば構わないのですが、設計の持つ多様な可能性に対する認識がなく、親しい分、要望の出し方そのものが設計の可能性を封殺するかのようになっていることがあります。かと言って住宅の単なる不具合程度なら容易に説明できても、その先の良さや価値観のようなものまでは、事前には説明しにくいところがあります。できればホームページの事例等から嗜好や価値観を読み取って、関係者だからこそざっくばらんに条件提示をして、相談していただいた方が良い結果を得られるのです。私どもの設計事例を見て殆どの方は予算があるものばかりだと思うようですが、個々の実際の建築費用を示すと、建築に詳しい方ほど、その安さに驚かれることも少なくありません。専門家としての長年の経験から提示する案は、いろいろな配慮や忖度をして提示するもので、言葉にできない部分も多くあり、それを納得させようとすると、関係性から押し付けるようで、抵抗あるのです。設計の仕事は大悪人からの依頼だろうと、予算が少なかろうと、与えられた状況で、最善の在り様を考えることなのです。設計がうまくいくかどうかは設計者にもよりますが、本当は依頼する側の見識と条件提示や状況説明の的確さ、それと設計者の価値観への共感や信頼の有無で決まることが多いのです。
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古いマンションが多くなり、借り手や買い手がつかず困っている方や、新築マンションが高いので、安い中古を購入して自分なりに改修したいと考える方が、今後ますます多くなると予測されます。私どものところは新築が多いせいか躊躇して、来られるタイミングが遅すぎる方が多くおられます。むしろ気遣いせず、割り切れるように段階ごとに料金設定をして、初期段階から気軽に相談でき、計画のステップに応じて協力してあげる仕組みを用意したいと思います。まずは自分でもセルフチェックできるチェックリストを公開し、その上で相談したいと思える方に、カウンセルのメニュウで対応させていただこうと思います。
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