結設計
     
気ままに
和風?

2007/9/3

過去の”気ままに”
 最近、私どものつくる住宅が和風と評されているのを時々耳にします。和風というテーマはお化けと同じで掴み所がなく、実はあまり取り上げたくないテーマです。厳密な定義もなく人によって捉え方が違っていて何とでも言いようができ、それでいて何となく伝わるものがある言葉でもあるからです。今回はあまり深入りせず考えてみます。
 和風という言葉は衣食住の衣では用いられることが少ないようです。衣の場合、着物も浴衣もすでに和そのものとして古くから確立された様式(デザイン)としてあり、それ以外は全て洋であって"和風"と付けざるを得ないあいまいなものがないためであろうと思います。食では和風サラダ、和風スパゲッティーなど、本来和の物でなかったものを和的にアレンジした場合に和風と表現しているようです。
 住の場合もやはり、すでに様式の確立した建物には和風とは言わないようです。民家風とか茶室風とはいっても和風神社とは言いません。ですから、通常使われる和風という言葉はあくまで洋風でない形容に対語として使用されているようです。
 では洋風はというと決してコロニアル様式やハーフティンバー様式など欧米の確立してある木造様式を指す言葉としてあるのではなく、やはり和でないもの(それまでの日本になかったもの)に対する形容に用いられているようです。というより明治時代以降発生した様式のものは殆ど洋風とされている気がします。現在身の回りに何気なく存在しているものは殆ど洋風で、現代風とも置き換えていうことができそうです。
 では現代風の住宅はどんなものがイメージされているか考えてみます。典型的なものとしては団地やマンションなどの共同住宅が頭に浮かび、陸屋根で平らな天井、コンクリートやタイルや石貼りの外壁でアルミサッシの窓、濃い茶色のフローリングの床と腰壁やクロスの内壁、ペンキ塗りの家具と内装材、ダイニングテーブル、ソファーといったところでしょうか。戸建住宅ですと洋瓦の屋根でサイディングの外壁と、アルミあるいは樹脂のサッシ窓とドアでしょうか。洋風というより無国籍風というほうが適切な気もします。
 その洋風に対としてある和風のイメージはどんなものでしょうか。和瓦の勾配屋根、垂木や野地板木部表しの深い軒天井、柱や梁を現わし、その間を漆喰や土壁などの左官塗りされた外壁や内壁、杉板天井などの木部生地表しの内装材、木製の建具窓、畳の床、床の間、卓袱台、縁側廊下、引き戸の玄関、といったところでしょうか。
 さて、ということは私どもの作る住宅が和風と評される所以はどの辺にあるのでしょうか。もしかして現代的でない建物ということになるのでしょうか?そう言われればそれほど現代的要素は多くない気もします。洋瓦は少なく、勾配のある屋根や天井が多く、木部生地表しの内装も多く、左官塗りの壁も多くあります。木製窓も時折使い、床の間や和室もよく作ります。何より深い軒に特徴があり、和風といわれても仕方ないのかもしれません。でも、欧米でも似たようなつくりのスイスの山小屋、フィンランドの古い農家住宅やペンション等がありますが、それらが和風と言われることはありません。
 では設計の際和風を意識しているのかと問われれば"全然"と答えます。和であれ洋であれ様式を意識して作ることは殆どなく、依頼主の本質的要望に応えようとして、その時点で投資効果が高く機能的で耐久性がある材料で、質実で美しく心地よい建物の在りようを探っていくとこうなってしまったということです。むしろ、形に見えにくい性能や機能を充実させようと努めても、現れてくる表情がそれまでの美しいありようを崩すまいとするようなところがあります。つまり求めてではなくその時の組み合わせで、結果がそうなっただけで要件が変われば結果もだいぶ違ったものになっただろうと思います。
 しかし、これまで色々な国の普通の個人住宅をいくつか見せていただきましたが、自分の感想としては、日本人ほど素材感やつくりに繊細でまた自然や時間の移ろいに敏感に反応しようとする感性や性癖を持った国民はいないのではという気がしています。そのためデザイン的にはともかく、住宅のつくりに関して世界で最も厳しい国民といえる気がします。職人さんのものづくり意識もその厳しさに培われてきたのではないかと思います。自動車等工業製品の性能が世界で評価される所以はその辺から生じているのではという気がします。
 つまり私どもが作る住宅が和風と評される所以を探そうとすれば、日本という気候風土と歴史の中で培われ磨かれてきた感性の建築主や職人、設計者、そしてその時代の素材の組み合わせがその時の住まいの最良を求めようとすると現段階ではこのようなものになることが多く、それがたまたま和風と評される要素を多く持っていたということではないかということです。


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