株式会社
一級建築士事務所
 
結設計
空環居
人は思っている以上に囚われた発想をしがちです。


果実や生花の生産者は少しでも高く売ろうと早く収穫できるよう早蒔きや温室など様々な工夫を凝らします。山形の佐藤錦というさくらんぼは全国的に人気が有り、やはりなんとか早く出荷できるようにと皆懸命です。そんな時なんと夏冬逆のオーストラリアに苗木を移植し、そこから出荷しようとした方が現われたそうです。輸送燃料のCO2発生など考えるとその是非はどうかと思いますが、確かに囚われた発想をしていたことに気づかされます。


建築も眺望の良いところならそれを建物に取り入れようと誰でも考えます。しかし広さ70坪の土地と140坪の土地に建てようとする家を比較してもせいぜい150坪の土地の家を多少大きめにし庭を広く取ろうとするぐらいの発想しかしません。でもよく考えてみると倍の広さの条件なのです。発想も全く違ってしかるべきものなのかもしれません。


この住宅の敷地は140坪の長方形で全体的に1mほど土地が北と東の二面道路から上がっています。隣家の壁は郊外とはいえ境界近くまで迫ってきています。通常なら2台分の車庫を設けた住まいをコンパクトに北側に寄せてまとめようとします。せいぜい1mの段差を生かしたスキップフロア―の発想をするぐらいのものです。


この住宅では庭を広くという要望は強くなくむしろ周囲の視線が気になるということと、玄関から居間までが近いと味気ないかもなどという意見から通常の合理性を取り払いゼロ(O)から発想してみてみました。


車庫はまとめてとる必要はなく、出し入れの少ない一台は南側の目隠しを兼ねて南東の隅に、よく使う一台は東の道路から車寄せを通って北東の隅の車庫に、出る時は北側のシャッターを開けてそのまま北側の道路へ出て行きます。逆入りもできるドライブスルーの車庫です。勝手口はそこに設けて使いやすくしています。玄関は南東の車庫脇にありそこからゆっくり環状の回廊を通って居間に至ります。


この家の中心は空(くう&そら)です。模様と地の関係でいけば模様(中心)が外で地(周囲)が内です。ポジとネガが逆転しています。メインの庭を三方建物で囲みどこに居ても視線を集める何も無い(空―くう)庭でもって住まいの象徴的一体感を創り出し、居間から見える視界は1m上がった土地の特性を活かし1.2mの塀と車寄せの屋根で道路からの視線をさえぎりつつ開放感とプライバシーを確保しています。そしてこの空間は庭を見せているようで実は軒先で弓なりに切り取った美しい空を見せているのです。

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