建築先導技術研究開発助成事業2

今回の研究開発の要点は、木構造の建物を、使用後の解体時に、建築部材を、解体と再使用が容易にできるようにするにはどのような部材の仕組みと構成にすればいいのかを考える研究です。
それには、部材がレゴブロックのように同一素材で構成され、部材ごとに再使用できるようにするのが、解体と組み立てが容易になります。そのため、通常の木造軸組み工法では、柱、筋違、間柱、断熱材、外側に合板、防水紙、通気層、サイディング、内部に石膏ボード、クロス等の仕上げで構成されているものを、木材の塊だけで構成し、組み立て解体等の作業が容易に、使用材料の種類も少なくすることで、目的を実現することを考えました。

上の写真の集会場では、4寸角の柱で構成し、パネル内外表しとしました。関東から宮城県までや三陸沿岸の温かい地域ではそれだけで必要とする断熱性能はほぼ満たせますが、、三陸の内陸部では足りませんので、外部に断熱材を貼り、仕上げ材を貼っています。

それで、柱と同寸の角材をボルトで連結し、無垢の壁パネルとし、杉材の持てるあらゆる性能を活用し、そのパネルだけで構造耐力、断熱、耐火、内外仕上げ等、壁が必要とする機能を満たそうとする考えです。
言ってみれば、何のことはない柱を並べただけの壁です。ログハウスの壁を縦にしたような、誰もが一度は考えたことのある構造です。何が先導技術なんだよ、と言いたくなります。

ところが、ただ柱を並べてボルトで結合しても、杉は柔らかくめり込み、必要耐力が出ないのです。まして、杉は、木材でも一番燃えやすい材です。防火構造である、30分間、壁(3.6m×3m)の向こう側で、1000度で燃焼していても、こちらに火が来ず、点ほども見えず、温度も上昇しない、という条件をクリアーできないのです。その上、土台や桁(梁)にしっかり固定でき、しかも解体しようとすると容易に解体でき、再組み立て(使用)も容易にできないといけないのです。そうなってくると俄然難しくなります。
それで、まず考えたのが、連結する柱の間に木ダボを数本入れて、ボルトで締め付け耐力を測ってみました。

応急仮設住宅で採用した方法です。正直この方法ですと、仮設住宅で必要とした程度の耐力は出るのですが、期待したほどではないのです。それでもう少し耐力の出る壁にしようと、いろいろなダボをはじめ、コッタ―など、様々な方法を試みました。

土台や、桁との接合も、最初は木栓や枘等、色々な仕口を検討し、実験もしました。接合金物も独自に色々製作し、試してみました。


なんとか、部分解体もできるようにしたいと、最後まで何とか実現を試みましたが、部分解体を考えると途端に困難が数倍になり、とりあえず今回はお預けにしました。


防火構造も、単純に柱を連結しただけですと、木と木の隙間からすぐに火が通ってしまいます。燃えにくくするために、木が燃えると炭化し、それ以上は燃えにくくなる、燃え代耐火性能を活用して、30分間、何とか火が反対側に行かないようにしなければなりません。連結ボルトに火が入ったらすぐに反対側に火が到達してしまいます。下の写真は、耐火試験体を製作しているところ、設置前の試験体、炉に設置しているところです。

30分過ぎて、試験体を取り外す瞬間と、とり外した試験体の燃焼面の状態です。



今日、構造強度を出すための商品や防火用に接着剤を使用するとか、耐火も耐火シールなど使用すれば防げる製品は少なくありません。そのような製品を使用すると、量が量だけに、費用がとんでもなく増大し、それを設置する手間もばかになりません。今回の研究はなにより、できるだけ手間がかからず、安価な方法でパネル製作や解体組立が容易にできなければ、意味ありません。木の性能を活用して目的を達成しようとした志や技術屋としての性と、一緒に開発している者同志、他の製品に頼ることは、安易ではないかと思え、その選択は避けました。下の写真は、一緒に開発している森林組合の方が考えた、柱の数か所、同時に穴を開ける、手製の工作機械です。彼とも、行き詰って安易な方法を取ろうとすると、お互い、いいんですか?というセリフを交わし合っていました。

今日ここでブログでお話しできるのは、構造耐力が、12月に壁倍率の3.5倍弱の試験結果が出、2月8日に、30分の耐火試験をクリアーできたからです。さすがに、クリアーするまでは、できなかったことを考えると話す気になれませんでした。