アガパンサス

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アガパンサス、最近、ようやく名前が憶えられてきました。梅雨の今頃街並みを和ませてくれます。数年前に教えてもらってもすぐに忘れ、翌年には名前が出てこない。咲く時期なるといつも思い出せず、記憶力の無さにコンプレックスを感じさせられてきました。
ですが、最近自分に朗報となる本を見つけました。「知性を磨く」田坂広志氏著作の本です。
そこには、答えのある問を、早く正しく見出す能力が知能であるとのこと。ということで、自分の場合知能は低いことになります。ですがその低い者にとって朗報なのです。そこには、だが答えの無い問に問い続ける能力が知性である、とあります。自分の場合、住宅設計という仕事柄、殆どの与条件は、要望する床面積の割に、建蔽率、容積率が不足しているとか、予算の割に要望される仕様やグレードが高かったり等、常に矛盾を孕んでいることが多いのです。その矛盾する条件のまま、答えの無い問を求めつづけて、何とか結果として依頼者に矛盾なく、納得できるものを実現提示することが仕事です。常に答えのない問を、問い続けてばかりいます。この能力だけは、人には負けないと自負しています。
知能の高い人は、答えのない問には、割り切ることで答えを出そうとするとのことです。その場では答えのない問であることは明らかで、誰もがしょうがないと思えます。決して間違ってはいません。しかしこうした判断の奥にあるのは、楽になりたいという思いがあり、その精神が割り切りに流され、深く考えられず、答えのない問を問う力「知性」を衰えさせていくというのです。その本には、では割り切りせずに迅速な意思決定ができるのかという問いには、「割り切り」のこれで行くしかないという受動的回答ではなく、これで行こう!と「腹を決め」という能動的意思決定をするとのことで可能であるとのことです。割り切りでなく、腹きめの場合は心が楽になっていないません。割り切りは心が楽になっているから間もなく忘れます。腹きめの場合は、心が楽になっていないので、決めた対象を心に抱き続けます。心理学者の河合隼雄さんが、愛情とは関係を絶たぬことである、というように、愛情を抱き続ける精神的エネルギーこそが、知性を磨き続けるということです。
最も、自分がアガパンサスの名前を思い出せないでいるのは、決して応えのない問を探しているからではなく、単に、記憶力が衰えていて、思い出せないでいるだけでしかありません。知性を磨いているからでも何でもなく、全く言い訳にはなりませんね。
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