太陽光を住宅設計でどう考えるか その4

太陽光ブログ
その1 太陽光発電、これまで強いて奨めなかった理由】(4/29up) 
その2 太陽光発電、現在はお奨めするか…】(5/16up)
その3 太陽光についてのレポート~発電利用編~】(5/19up)
その4 太陽光についてのレポート~給湯利用編~】(5/24up)
その5 太陽光活用設計手法~住宅の蓄電池化~】(5/30up)
その6 太陽光活用設計手法~まとめ編~】(6/15up)

太陽光についてのレポート~給湯利用編

電気と同じく住宅の大切なインフラであるガスですが、昨今、電気料金と同じくガス料金も値上がりしています。寒い冬は毎日暖かいお風呂に入りたいですし、食器もお湯で洗わないと油汚れが落ちません。冬場、驚くほどガス代が高かった経験は誰にでもあると思います。

 太陽熱温水器
十数年前にはよく見かけた、給湯タンク一体型の 太陽熱温水器 。 現在は重量のあるタンクは地面に設置しているものもある。


オール電化ではない場合、住宅で使うガスは2種類です。一つ目はキッチンのガスコンロ、二つ目は給湯器です。給湯器は水を温め、シャワー、風呂、洗面台などにお湯を送ります。家庭のガスの使用量の75%が給湯器と言われていますので、より効率の良い給湯方法を考えることは重要なことではないでしょうか。
今回は太陽光発電に関連して、2つの給湯方法について調べたことをお話ししたいと思います。

一般的なソーラーシステムの模式図

〇太陽熱給湯( 太陽熱温水器 )システムについて

太陽熱給湯システムとは、屋根に施工したパネルで集熱をし、お湯を作り出す簡単なしくみで、上部の写真のように昔から使われています。
太陽光発電の太陽光エネルギーの利用効率は製品やメーカーによって違いはあるものの、通常のものは7~18%程度です。それに比べて、太陽熱を使って温水を作り、給湯に利用する太陽熱利用のエネルギー利用効率は40~60%ですので、太陽熱利用の給湯はとても効率が良いことが分かります。
屋根にパネルとタンク付いた太陽熱温水器は今は殆ど見かけなくなりました。最近の太陽熱給湯はタンクを地面に設置し、パネルの熱で温められた冷媒でタンクの中の水を温めます。そこから湯沸かし器に接続し、タンクのお湯がなくなったり温度が低い場合のみ湯沸かし器が作動する仕組みになっています。このタイプは初期費用は300リットルの蓄熱タンク付きで、約90~100万円程度で、月々のガス代を考えると費用回収できるのが10年前後で、それ以降の給湯にかかる費用は殆ど無料になります。

〇エコキュートについて

一方、電力で効率よくお湯を沸かす方法として「エコキュート」をご存じの方も多いかと思います。これは、ヒートポンプで空気を圧縮したときにできる熱を利用することで、少ない電力で熱を生み出すしくみです。

エコキュートを設置した事例(手前がヒートポンプ室外機、奥が貯水タンク)

初期費用としてはヒートポンプとタンクを合わせて60万くらいかかりますが、深夜の安い電気料金帯の間に電気でお湯を沸かして貯めておけるため、給湯分のガス代が不要になります。東京電力には、エコキュートなどの夜間蓄熱式機器(総容量が1kVA以上)を使う人が加入できる深夜料金が安いスマートライフというプランもあります。

スマートライフS・L AM1:00~AM6:00 【深夜】 AM6:00~AM1:00 【その他】
17.78円/kWh 25.80円/kWh

太陽光パネルとエコキュートを併せて設置するのであれば、昼間発電して使いきれなかった余剰分の電力を売電に回さず、夜使うお湯を昼間にエコキュートで作っておく方法もあります。発電分を自家用として使う比率を上げ、夜電気の購入を減らす方法の一つではないでしょうか。この組み合わせは、どの程度発電ができるのか、どの程度発電した電気を給湯に回せるのか等々の諸条件で変わってきますので、注意すべきです。

どのように導入にするにしても、太陽のエネルギーを建築としてどう採取し、どう蓄積させ、どう活用すべきかを考えて、住まいづくりの計画や設計をする必要がありそうです。


第4回まで続いたこの太陽光ブログですが、いよいよ次回は、これらのことをふまえた私共の設計手法についてお話ししたいと思います。
次回【その5 太陽光活用設計手法~住宅の蓄電池化~】(2022年5月30日upしました)是非ご覧になってください。