伊豆高原の家

「 伊豆高原の家 」当初は 別荘 として

「 伊豆高原の家 」は、土地探しから協力させていただいた家です。
最初は別荘として使用して、その後移住するということで始まりました。別荘造りのお手伝いは嫌いなほうではなかったので、最終的に決まるまで3、4回現地に通い、毎回数カ所の土地を一緒に見て廻りました。自分で土地を探して家を建てようとする方は、皆さん何らかのこだわりがあります。
それでいつも建主さんから教わることが多いのですが、今回も、そのこだわりを理解しているつもりでしたが、その強さまでは十分理解できていなかったようです。

 

 

リタイァして庭づくりを楽しむための土地探し、とのことでしたが、経験的に広い土地は管理で持て余す方が多くいらっしゃいます。

この土地は最初、鬱蒼とした森と藪と竹林で、火山岩が多く、その整備やその後の庭づくりにかなりの費用を要すると思われ、建築的にはなんとかなるものの、通常なら強く勧める土地ではありませんでした。

なるべく既存樹を残して計画しましたが、それでもかなり伐採を必要としました。ドローンからの写真に写っている大木の庭木群を見れば理解できると思われますが、新築時にこのような大木の既存樹のたくさんある計画はあまり経験ありません。
元の売主さんも持て余して手放したくなったものらしく、確かに広さ的には費用対効果の高い土地で、防犯カメラ等にも気を遣う必要がありました。

でも建ち上がってからの早めの移住と、庭づくりへの情熱を見ていると、こだわりの強さまでは十分理解できてなかったと反省しきりです。
写真の苔庭を見ればお分かりのように、その手入れは大変なものです。それを毎朝しっかり欠かさず手入れされてあるのをみれば半端な情熱では無いことが分かります。

建築計画も、最初南に開口部を向けた計画提案を、東に向けたいと要望された時も、庭づくりゆえのこと、日差しの採光のセオリーを変えることにはなりますが、デッキからの東側の眺めを見れば納得できました。

結果、西入り玄関となり、写真の左側はアプローチ庭を眺める開口部と飾り棚及びその下の通風窓で構成しています。右に立ててある棒は壁に手を触れさせないための縦の手すりです。

居間の開口部の先は広いデッキとなっており、その向こうには素晴らしい景色が広がっています。居間の天井を少し持ち上げ、高窓を設け、部屋に居ながらにして既存高木の梢の向こうの空を眺めて過ごすことができます。

食堂からは大分間引いて、整備し直した竹林の庭が見え、コーナー窓南側からは、しっかり南からの陽光が差してきます。

コーナー窓が南に寄ったので、隣家が近くなり、目隠しの樹木が十分になるまでは、障子で目隠しもできます。

居間と食堂及びキッチンは動きやすいよう一体になっています。正面の廊下の細い格子ガラリはエアコン隠しです。

居間の後ろは客室にもなる和室です。引き込み襖で仕切ることができ、鴨居上には間接照明が仕込まれています。

キッチンのそばにパソコンコーナーを配していて、リモートワークもできます。その後ろには倉庫を兼ねた食品庫になっていて、冷蔵庫もその中にあり、引戸一枚で隠れていています。

 

浴室・洗面所からは手入れの行き届いた専用の庭が囲われてあり、そこにも既存の大樹が生えています。

 

デッキのベンチ下にも照明が仕込まれてあり、夜の庭を彩ります。

夕暮れ時、東庭に内部からこぼれ出る灯りに照らされた庭もなかなか趣があり、また家の内部の空間が浮き上がるように見え、気持ちが暖かくなります。

迎えてくれた西側の庭の石畳と、見送ってもくれる窓と石段下の灯りと、大木の楠が立ち去りがたい思いにさせます。

庭の様子の動画を施主様よりいただきました。

写真撮影:齋部 功
動画  :施主様

伊豆高原の家データ
所在地  :静岡県伊東市八幡野
構造規模 :木造平屋建て
延床面積 :97.72(29.61坪)
敷地面積 :1077.95㎡(326.65坪)
設計監理 :結設計 藤原 ・加藤
施工   :㈱イズ工務店 担当 日景
造園   :武井基次(御庭番)