応急仮設住宅

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岩手県の山田町と宮古市に建てた全部で59戸の応急仮設住宅です。建築が廃材の排出や化石燃料の消費等で環境に負担をかける存在でしかない中に、十数年前から、設計行為が環境に資するとすれば、二酸化炭素の固定以外ありえない、という考えに至っていました。木材を貴重材としてではなく、用材として扱い、大量に使用することで二酸化炭素の固定をはかり、森林のケアを生業としている、林業の活性化に貢献する建築の仕方を、設計者の立場から提案しようと、工法の開発をこれまで続けてきました。それで、中断面の集成材を並べて構造壁とし、そのまま内外表しだけで必要性能を確保するという、木材大量使用の工法(FM工法)を開発し、十数棟つくってきました。
阪神淡路大震災や新潟地震の仮設住宅を見たとき、仮設住宅こそ、この集成材工法で作ってあげたらいいのではないかと感じていました。その工法がある程度の領域まで開発できたと思えた数年前から、その集成材の工法も、30年ほどで解体廃棄され、償却されては、工法提案の意図に反するとういうことが気になりだしました。設計者は、解体廃棄されない住宅を設計できると思い、励んでいますが、今日のように生活が多様化し、年代で生活の仕方が大きく違ってくる昨今、単に構造や性能がいいから誰もが住み続けられるというものではなく、生活の変化に対応できなければ解体されてしまうという実態が、日本の住宅の平均寿命を30年弱としているのではないかと思われます。解体されないと思えるのは設計者の傲慢ではないかという思いも強くなってきました。むしろ建て替えされることは自然なことではないかという気になり、解体されてもその部材を再使用できるような工法が重要ではないかと思い始め、今度はそれができるようにしようと開発してきました。60分の準耐火構造壁の認定や構造評定もあらかた得て、3月にその工法(DEWS工法)で完成した住宅が押上の家でした。その3月11日に発生した東日本大震災の状況をテレビで見ていて、仮設住宅が必要になる、設計者、いや建築を生業とする者として、今度こそこれまでの仮設住宅と違う提案をしなければ、と感じました。二、三年で解体される宿命を持つ住宅なのだから、まさに再使用を前提とした工法で建てられるべきだと思いました。
しかし、集成材はどうしても高価格になってしまう、それを何とか低価格で実現するには、接着剤で中断面にした集成材を、ボルトで柱材を連結したパネルで代用することで、集成材と同様の壁にし、DEWS工法を応用してつくれると思いました。それで集中して開発したのが、岩手県の応急仮設住宅の提案募集に応募した住宅の工法です。応急仮設住宅に要求される価格、それと性能や広さの基準はある程度決まっていて、設計者が関与できる要素は少なく、デザイン等で私どもが心がけたのは、特異な形状ではなく、普通であることで安心感を与え、惨めさを感じないようにすることでした。全体的にかなり経済的に出来ていつつも、無垢の柱材の連続の壁はある意味贅沢なことでもあり、その意図は多少叶えられているのではないかと思っています。それより私たちが関与する意味は、設計やデザインもさることながら、今回は建築を生業とする者としての、建築部材を再使用できる工法の提案にありました。それをなんとかできたのが今回の事例です。

岩手県応急仮設住宅の現場の様子は、ブログ記事でも紹介しています。併せてご覧下さい。

所在地:岩手県宮古市・山田町
間取りタイプ:6坪(1DK)・9坪(2DK)・12坪(3K)
構造:FSB工法 平屋建て
施工:昭栄建設
設計:結設計
現場担当:加藤

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