私たちの考え方


私たちがお手伝い(設計支援)する意味

住宅が余っている今日、新たにつくる意味はあるのか、とよく問われます。

確かに以前は床面積を確保したいだけの家が多く建てられ、そこには私たち設計者の出番はありませんでした。今、そのような家は余ったら空き家にしかなりようがなく、新しく建てるなら、住み続けたくなるよう家にすべきと気付いてきた方が多くなってきたのではないかと感じられます。

自分の家の可能性の想像が困難で、普通、自分の状況でどんな家が建つかを知りたく、簡単に間取り提示してくれるところに依頼して可能性を探ろうとするようです。その場合提示されるのは法的許容範囲の自社商品の中から、希望に沿ったものが提示されます。決して想像力を働かせて、状況の可能性を探ることなく、優先順位の検討もなく、通り一遍のたたき台としての案の提示になります。それをもとに修正をして自分の家が作られていくようです。

私たちが家づくりに関わる意味は、そこでの初期の諸条件や要望の吟味にあります。単なる法や技術あるいは予算の検討だけではなく、通常では、見落とされがちな状況の可能性や要望の洗い直し作業の中、経験と感性ゆえに見出せる微かな可能性の発見と、それを磨くことでできる提案にあり、そこに決定的差が生まれます。だから私たちは安易な提案はできず、最初に設計契約をしていただき、腰を据えて初期段階を考えることを大事にしたいのです。

条件の検討作業は、作る方の満足のためだけでなく、建物をどこにでもある物から、自分の大事なものにする-カスタマイズ-行為にもなります。そして一緒に検討するが故にその価値が、独りよがりから客観性を獲得し、普遍的価値に転化し、建物が自分にとっての役割を終えて、転売されても、第三者にその良さが伝わり、継続して使われるものになります。(戸神台に家、棚楼居、他)

建てるからには、大事にしたくなり、独りよがりでなく、普遍的で美しくありたいと望む方のお手伝いに、私たちは意味を見出しています。それは、広さだけでも、天井が高いからでもなく、はたまた収納があるからとか、高価な機材を使用しているからでもありません。環境を上手に活かし、誇りを持てる気に入った空間であり、それでいて、環境負荷が少なく省エネで融通性があって堅固な建築です。その空間を味わえるのは、他人の価値観に流されず、これでよしとする見識と覚悟のある住み手の余裕ゆえと理解しています。

⇒これまでの取り組みから派生した建築手法はこちら

地球温暖化に抗い、環境負荷の少ない家づくり(FSU工法開発に協力)

異常気象や自然災害を招いている地球温暖化や、廃プラ等の環境悪化への対策は待ったなしです。しかし多くの方は自分一人ではどうしようもないと考えています。しかし私たち自ら口にはしませんが、環境に関心があり、建築で何かできないかと感じている方に、選択肢として提案していることがあります。

「あなたの造る木造建築がFSU工法なら、通常の3倍以上の木材を使用し、30坪の床面積で、1haの森林整備を促し、8.8tの二酸化炭素を吸収固定させることになります」と個人でもできる可能性を提示しています。

私たちは1997年の京都議定書が定められる前から環境負荷の少ない建築の仕組みを探し続けてきました。その結果、環境負荷の少ない建築としてFSU工法を提案しています。

FSU工法は木造建築の柱・間柱・筋交い・壁下地・仕上げという、煩雑な現場作業を必要とする現状の建築の仕組みから、部材を規格化し、殆どを工場加工して、現場に搬入し、組み建て・取り付けるだけでの仕組みにしたものです。

横架材間に挟み込み、パイプ等の金物でピン固定して耐力壁にする建築の工法です。屋根もパネル化し、他の部位も可能な限り工場加工して搬入し、数日で木造スケルトン(周壁構造躯体)が出来上がります。簡易宿泊も可能なスケルトンのため、設備や内装のDIYも可能です。

このような環境負荷削減のための建築は一事務所だけでやっていても意味なく、多くの方が参加しないと実質効果が上がらないので、多くの方が参加できる体制づくりにも協力しています。

一つは、FSU工法の防火構造壁や準耐火構造壁は本来一般の軸組構造の壁に採用できる構造になっています。住宅はもちろんのこと、通常の非住宅や公共建築で、防火構造もしくは準耐火構造にする必要のある外壁等に部分的にでも採用可能です。通常の木造壁では、内外下地に石膏ボードを貼ることで防火構造もしくは準耐火構造にせざるを得ず、木造躯体を表しにすることができません。この工法の壁(FSUウォール)の防火構造壁や準耐火構造壁なら、木造躯体を表しにすることで国交省の認定を取得しているので、それが可能になります。

しかも簡単な木工機械があればだれでも製作可能な壁ですので、大きな資本投下の必要がなく製作が可能です。このようなFSUウォールを製作販売していただける工場が各地に増えていくように、(一社)FSU工法普及協会を通じて協力しています。

また、この工法が多くの方に知られていませんので、通常業務のなかでも、興味を覚え賛同していただける方に、この工法ゆえに可能な建築を提案して普及に協力しています。当然ながら他の設計事務所の方のFSUウォールの採用の際の設計にも情報提供等の協力もしています。さらにこの工法を活用した規格型建築の販売をしようとする企業にも、技術提案等で協力をしています。(参考例:(有)グルーラムウォールのベリュース・ベースシリーズ)

⇒ FSU工法について詳しく見る(外部サイト:(一社)FSU工法普及協会にリンクします)

建て替えかリフォームか

空き家が増えていく状況に、何とか壊さず満足出来るものにしようとリフォームがブームになってきています。私たちもそのリフォームのお手伝いをしています。しかしリフォームは建て替え以上に難しいところがあます。リフォームでも水回りだけ改修したいというような場合は私たちの出番はありません。

地震に耐えつつ全体的に満足いくものしたい、というように多様な判断と思考を必要とする場合なら、お手伝いする意味が生じてきます。その場合、リフォームでどこまで満足いく空間が可能か、そのための費用負担の見極めと耐震性の判断、建築基準法上の問題、と建て替え以上に考えなければならないことが多くあります。まさに設計者の判断と提案の必要なところです。

リフォームで見誤るのは費用負担との見極めです。リフォームは建て主にも施工者にもやってみないと分からないところが多く、見積もりが難しいところがあります。建て主の方はリフォームだからこんなもんだろうと甘く見る傾向があり、施工者も壊して中を見てみないと分からないからと、最初から保険をかけた見積もりにして提示する傾向があります。それでも追加はやはり追加で請求はされますから、予想以上にかかった、という建て主の声をよく聞きます。これだったら新築にした方が良かったと言われる方の多いゆえんです。

設計者はここまで先を読んで、最初に述べた問題を一つ一つ検討しながら判断し、提案をしなければなりません。そこに難しさがあります。リフォームは現場を見ない限り最終的には判断はできませんので、事務所で相談受けても、最終的には現場を見て提案するようにしています。

固有性を求めて、普遍的価値を生み出す

設計者の社会的役割

何時、どのような時代にあっても、建築(住宅)にしか提示できない、社会を豊かにする独自の社会的役割があるはずと考えています。その中で私たち設計者のなすべきは、個々人と社会を豊かにする固有の空間価値(の可能性)を、建築設計という視点からひとつでも多く見つけ(創り)出し、提示することであると思っています。私たち設計者にしかできないことはまだ沢山あると感じています。

多様な固有性のもたらすもの

個々の業務での役割は、依頼された建物の個別的条件に応えて、最善の有り様を提案することにあります。結果提案されるものは個別的条件に忠実になればなるほど固有な回答になります。何時の時代でも自然界や社会では多様な固有性が豊かさを生み出し、あらゆるものを相互に生き生きとさせます。多様性によって個々も輝き、生活も充実し、望ましい文明や文化を作り上げていきます。生産効率を求める現代の経済社会にあっては、その固有性は必ずしも求められてはいません。そのような社会にあっても私たちは敢えて、個々の固有性を大事にした建築をつくりたいと思っています。

豊かさをもたらす固有性とは

真に固有な建築は、決して住む人や設計者の恣意性によるものではなく、そこでの状況に即したある必然性が備わっていてこそ、社会を豊かにする力が発揮されると思われます。その必然性も、そこに住む人と場所性だけではなく、それを創ることに関わった施工者とそれらを調整統合する設計者にまで、すべてにとって必然と感じさせるものでなければ力強いものにはなりません。そしてその必然性を丹念に手繰って行こうとすると、どうしても一般社会が抱える構造的な問題に行き当たります。その社会性までをも考えられた固有な建築とそこに創られた空間は、その社会と時代を写し取り、普遍的価値を生むものと信じて励んでおります。このような一人一人、異なる人が、異なる場所に住まう、固有な住宅は、他所の個別的で多様な生活を許容し、お互い刺激しあい、より多様化した価値を生み出し、そこに住む人や社会をより豊かにしていくと確信しています。

設計作法

設計者には本来、依頼者に要求されなくても、その設計者なりに“建築(住宅)はこのような場合はこう考え、こう処置すべき”という自分を縛っているものがあります。それは法的拘束の範囲外のことなので設計者によってかなり異なっています。その違い、もしくは軽重のかけ方の差が設計者の個性というか味の違いであり、設計者を決める際の重要なファクターになろうかと思います。ここでは、私たちが設計作法として自己に課している事項の中の、計画概要に関連した事項の一部を、当たり前のことも含め、無作為に挙げてみます。選択の参考にして下さい。

コミュニケーションでは

  • 設計の依頼では言葉で表現しきれない要望や切実性が潜んでいることが多く、その意を汲み取り損なわないように努めなければならない。そのためにも各自の意向は出来るだけ家族の誰かを通してではなく、本人から直接伺うようにする。
  • 私たちの提案には一つ一つ理由があり、機能性・美しさ・構造・性能・融通性・費用対効果・作業性・空間の豊さ・防犯・コスト等、微妙なバランスの上に成り立っていることを自覚する。建築主からの変更や追加要望も、その奥にある本質を正しく把握し、その実現でも、小さな満足のためにバランスに歪みが生じないようにする。

全体構成では

  • 外観は当然だが、むしろ内部空間が美しく豊かであることに気を配る。
  • 構造の性能はあらゆるものに優先するが、生活があっての住まいなので、そのために生活をかなり損なうおそれがある場合は、構造、間取りともに内容を再検討し調整をはかる。
  • 提案は敷地、予算、環境、時代等の条件に不利と思われることがあっても、それらを見据え、不利を長所に転化し、最も価値あるものとなるように努める。設計者にとって永続的に責任と関心を持ち続けていくだけ価値あることを確認の上提案する。
  • 建築的何かがあるから良いと言われるより、何も無くても美しく、豊かさを感じさせ、その建主らしい個性が映える空間となるようにする。
  • 眺望等条件に潜んでいる良い特性は貴重な環境資源と考え、必ず住まいの中に織り込む。
  • 住まいの所々に、花や歳時記の飾り物ができるような余裕の空間を設ける。
  • 天井は、内部にしろ軒裏にしろ、機能性に拘束されにくい、デザインが可能な箇所として極めて重要であると考える。
  • 同じ目的の実現のためなら、予算は少なく、構法を単純にし、施工で余計な手間をかけさせない実現の仕方を考える。

間取り計画では

  • 居間及び食堂は住まいのメイン空間と考え、天井もできれば高く、しかも2階の場合は勾配をとり、変化と落ち着きのあるものにする。
  • 居間食堂を二階に設けたら、それに連続して、外部に家族で食事ができるだけのまとまったバルコニースペース(デッキ)を設ける。そこは外部の部屋と考え、ある程度プライバシーを確保した空間となるようにする。
  • 内部空間は、遠くまで抜けるように連続した空間とし、視線が飛ぶ距離をできるだけ長くとり、様々な状況に対応できる融通性のある間取りとする。
  • 床は原則としてバリアフリーとする。但し、玄関の上がり框や和室の床は、格調も考え、必要な段差をしっかりとるべきか吟味する。
  • キッチンは最低限、冷蔵庫、食器戸棚、配膳台、及び建て主が必要とする器機の収納スペースは必ず取る。できれば食品庫も設ける。
  • キッチン以外の部屋でも、洗濯機、洗面台と下着類収納、ベッド、食卓、ソファー、テレビ、ピアノ、パソコン、下足入、洋服入、机等は最初から置く位置を考慮する。
  • テレビ置場は動線や空間に与える影響が大きいので慎重に決める。
  • 階段は緩やかで、暗くなく、廻り階段は90度に3段はつくらない。
  • ドアホン、インターホン、門扉、玄関ドア、表札、ポスト等の取付位置は、防犯や外来の客、新聞配達、セールスのお断り等に矛盾のないようにする。

外溝、植栽計画では

  • 敷地全体の配置では、駐車スペース、自転車置場、アプローチ庭、物干場、バスコート、ごみ置き場用サービスコート等を考え、その上で、庭をできるだけ分散させないでまとめてとるようにする。
  • 植栽、塀、舗装等の外構計画も住まいの重要なデザインの要素として考え、敷地条件や予算が許せば、プライベートな庭、家の住人も通りすがりの人も楽しめる庭、生け垣等についても考慮する。
  • 居間食堂等と連続している半屋外的な部分には、中庭、コの字状コート(デッキ)等を設け、内部空間のように感じられる仕掛けを考え、内外共に豊かにする。
  • 屋外の水栓は、必要な所に必ず設ける。

窓の計画では

  • 居間食堂の壁は、一日を通して、光の色合いの変化が表情に出る採光を考える。
  • 部屋は、陽光を取り入れるようにできるだけ南に大きな窓をとり、それ以外にも小窓を設け風が抜けるようにし、かつ、霧除けや夏の陽差し除けの配慮を忘れない。
  • 壁を広くとった部屋は落ち着きを得られるので、窓の設け方は慎重にし、それでいて明るさを損なわないメリハリのある空間とする。
  • 窓には原則として網戸をつけ、内側には透明ガラスの場合障子又はブラインドあるいはカーテン等の取り付けを検討する。(格子等は防犯の項参照)
  • ガラスは原則として二重とし、断熱性を考える。
  • 浴室でも可能なら大きい窓を設け、緑が見えるなど気持ちよい空間とする。

太陽対策や温熱環境の計画では

  • 夏の太陽の屋根や窓への射熱は想像以上に大きいので、その対策は冬の断熱や壁などの通常の断熱とは別に考える。
  • 冬はできる限り室内へ陽がさすようにし、夏場は庇等で入りにくくする。
  • 広い部屋や吹抜け等天井の高い空間を持つ家は、輻射熱暖房あるいは床暖房、または深夜電力活用可能なヒートポンプ給湯の蓄熱暖房等で家中に蓄熱させる全体暖房を考慮する。
  • 断熱性能が施工精度の差で損なわれることが生じないように、建物躯体を断熱材で確実に包み込む外断熱もしくはそれに準じた断熱の仕様とし、住まいの中の温度差や時間による変化が少ない住まいとする。
  • 冬の太陽による熱は室内の空気を循環させて家中に蓄熱させ、十分に活用し、夏は通風窓を設け冷房への依存度を減らすなど、省エネを旨とする。
  • 床下換気口は、冬場に大幅な室温低下を招き、夏場には結露をおこしかねないので設けない。但し床下木部の腐食防止のための対策を施す。

細部の計画では

  • 家具の把手はできるだけ手掛けとし、金物等の出っ張りは避ける。
  • 建物には、外観デザインからも外壁の耐候性からも、できるだけ庇を設ける。
  • 揮発性化学物質の出る材料は原則として使用を控え、自然素材を使用する。
  • 照明スイッチは必要な位置にわかりやすくまとめ、可能なら集中させ、点灯しているか判らない灯のスイッチは消し忘れ防止の為にパイロット付スイッチとする。
  • 雰囲気の大事な空間は間接照明で処理し、なるべく光源は目に入れないようにする。
  • 設備機器はあまり目立たないところにさりげなく取り付ける。その上、メインの空間ではエアコン等の吹出口はガラリ等で目立たないようにし、かつ風が顔に直接当たらない位置に設ける。

防犯計画では

  • 防犯の方法は、依頼者の意向を汲んでかつ地域の状況に適した対策を考える。全体に矛盾がなく、かつ弱いところが生じないようにする。防犯機器も侵入者が家の中に入ってから機能するものより家に入らせないための対策を重視して考える。
  • 1階の開口部は鍵のかかるものとし、シャッターか雨戸もしくは格子を付ける。あるいは防犯ガラスもしくはフィルム貼りガラスとし、敷地内に他人が入り込んでも家の中に侵入しにくい配慮を施す。
  • 地域性を考慮して必要なら敷地内にも他人が入りにくい処置を考慮する。

この他技術的な縛りもありますが、ここでは一般的初期計画段階だけのものにとどめておきます。