
杉板各種の雨晒し状態での木の経年変化を看る暴露試験3.5カ月後の報告です。

軒下に設置した杉板の浸し(右)と水かけ無し(左)暴露試験3.5カ月後の報告です。

雨晒し試験体の近景写真です。大分グレーになってきました。

軒下での原則横雨以外、水が掛からない試験体3.5ヵ月後の写真です。水浸し無しの杉板暴露試験体3.5ヵ月後の写真です。

毎日朝晩30分以上、水浸しをしている試験体の3.5ヵ月後の写真です。雨晒しも軒下も各種試験体ともグレー化が進んでいます。きづかい運動 始動 | 木の使い方 木の性能
前回分かった暴露試験で、酸化鉄の溶液を塗った板を毎回水に浸したとき、酸化鉄が水に溶けて、裏板にも塗料が幾分塗った状態になり、それが上の台板に乗せた時、乗った部分は台板と重なっているため空気に触れず酸化せず、台板から跳ねだしている試験体の板部分は空気に触れて酸化し、跳ねだした部分の色が濃く変化することで台座の境界線の跡が生じた、ということでした。それでは水に浸さない板の裏はどうかと幾つか調べてみました。下に列挙します。





軒下の水に浸さない酸化鉄塗装の板裏も浸した板と殆ど同じなのは、最初浸す時間を異なる暴露試験にしていたので、最初の酸化鉄の溶液が溶けだして、塗装したのと同じ効果が生じたためと思われます。雨晒し箇所の酸化鉄塗装の板の裏も同じように台座跡がくっきり出ているのは、雨水が酸化鉄溶液を伴って裏に塗装と同じ効果を生じさせたと思われます。酸化鉄塗装のない板の裏もうっすらとですが、酸化の跡が見受けられます。
懇意の木材加工屋さんから廃業の知らせが来ました。
その加工屋さんは他所とは違って、木材の乾燥後、窯から出してすぐ製材するのではなく、1か月ほど自然環境の屋根の下で、空気中の湿気を吸わせて、自然な伸縮をさせてから製材加工して出荷するので、現場での伸縮や捩れのない材を提供してくれる、数少ない良心的な木材加工屋さんでした。一昨年もそこで加工して頂いた部材で、関東で一棟建てあげました。下の写真の盛岡の家 | (株)結設計|東京・建築家|住宅・建築設計事務所も10年程前、そこに加工して頂きました。そのような材木店が廃業するというのはとてもショックなことでした。

そもそも、私どもがFSU工法を開発したのも、木材を大量に活用することで、地球温暖化に抵抗しようと、林業を活性化して、若木を多く植林することで二酸化炭素の吸収量を数倍に増やし、固定延長も可能なように部材の再使用ができる工法にするためで、環境負荷を増大していた建築行為を、削減する行為に転じようと提案したものです。それには木材事業者や林業従事者が健全に運営できなければ始まりません。その材木店が廃業すると聞き、自分等の無力さを改めて思い知らされ、ショックなことでした。その材木加工屋さんはウッドシヨックでの木材高騰から始まった住宅価格の高騰で、世の中が建て控えを招き、需要が一気に冷え込み、経営が困難になり、今なら他に迷惑をかけずに済むから、と廃業を決めたそうです。林業は安定しない産業のため、従事者が少なく、毎年決まった量の生産しかできず、急激な需要増には対応できず、木材の奪い合いで簡単に高騰や暴落を招いてしまいます。このような需要の浮き沈みは、通常の運営を難しくし、木材産業の従事者の減少を招き、林業を益々衰退させてしまいます。このこともあって、私共もいまさらながら、木材をもっと多くの方に利用されるような活動をしていく必要を思い知らされました。下の写真はその時の設計で、外壁も木材で、と独自に考案登録した小校(こあぜ)板貼りの近接詳細写真です。

実はこれまで、木材はその性能を上手に引き出した活用がされてないと常々感じていました。木材取り扱い事業者は収益を上げようと、木材の弱点を様々な化学処理や、他の建材と合体して、新建材のような機能を付加して、木の特性を無視する使い方で、木材価格を上げ、それで益々利用されなくなっている気がしていました。その傾向を見直し、一般に知られていない木材の特性を活かした賢い活用方法と、大量に利用し易い仕組みを提供することで、木材の活用領域を広げ、一般の方はもちろん、他の設計者や建築関係者等にも利用を呼び掛けていこうと考えています。