投稿者別: 藤原

「間取り再考」ワークショップ開催

先日武道館で合気道大会が開かれていました。設計も武道と同じで、要望と、敷地などの建築条件との間に大きな乖離や矛盾が少なからずあるものです。その矛盾を矛盾のまま行って、矛盾なく満足できる結果を導き出そうとすることが建築設計です。日頃の鍛錬がものを言います。

間取り再考ワークショップ開催
本来「間取り」を決めるということはどういうことか理解していただくためにチェックシートを用意し、前回のブログで公開しました。間取りをチェックしてみて、気になるところが露わになり、自分だけでは修正が難しいという方が、一緒に集まって互いに検討し合う「間取り」再考ワークショップを開催します。新築だけでなく、リフォームを考える方の現状の間取りについても、どう変えられそうか、一緒に考えてみたいと思います。それら持ち込まれた具体的間取りを遡上に、どんな不満を覚えているかを伺います。又その間取りで気になることや、それに対応する建築手法などを、当事務所の「設計作法」や著作本「美しい住まいのデザインルール」等も引き合いにしながら解説し、ご自分の間取り修正の参考にしていただきます。そしてその後に検討が必要な事項についてもアドバイスします。多くの方に参考になりそうな間取りは、匿名で公開することを条件に、ホームページで発信し、家づくりで後悔する方を少しでも少なくする活動にしていきたいと思います。しかしあくまで社会への還元活動であって、通常業務の妨げにならない範囲内で秘かに行うもので、自分で修正しようとする方への支援(補佐)でしかなく、決して代わって修正してあげるものではないことをご了承ください。また、実際に悩まれている方と切実感を共にできる方たちで一緒に考えたいので、勉強等だけの方は遠慮ください。資料コピーや茶菓代として有料といたします。

「間取り再考」ワークショップ開催のもう一つの理由

昨今、AIが職を奪う、と言われ、住宅設計もそうか、ということが設計者仲間でよく話題になります。規格型の住宅設計では当然AIになるでしょうが、価値観の違いが大きい個人の注文建築ではどうか、特に各個人の特殊性に合わせる設計はどうなのか、検証してみたいと思っています。たぶんその特殊性の捉え方、合わせる内容への各個人の意向や状況の読み取り方、その意向への答え方や空間化の技量で、設計の価値が露わになると思っています。AIとの違いがでるとすればそこになると考えています。間取りワークショップはそれらを研究する意味で貴重なケーススタディーになると考えたことが、もう一つの理由です。

参加希望の方は「間取り再考」ワークショップの開催要領をよく読んで、必要資料を事前に送付の上お申込み下さい。

穏やかな生活が何よりです。


間取りセルフチェックシートの提供

信州上田城の外堀跡です。関ヶ原の戦いに行く途中、徳川家忠が数万の兵を引き連れ、数千の真田軍を簡単に落城させて参戦するはずが、よく練られた真田軍の防備にてこずり、結局落とせず、数日足止めされて参戦し、家康にこっぴどく叱られた、という逸話をもつ外堀です。何事も事前の検討と対策が威力を発揮するという見本です。

前回のブログで述べたように、間取りに悩まれている方に少しでも軽減していただくためと、部屋の仕切りが決まった程度の間取り図で、検討すべきことが済んだかのように思われている方が多くいる状況に、私どもなりにそれを再考していただくため一石を投じてみることといたしました。

間取りから次に進む際、建築主として間取りに関連して全てを検討した、という確信もつため、当事務所のクエスチョン式間取りセルフチェックシートを提供いたします(無料)。当ホームページからご自由にダウンロードして活用ください。

これは、決して悩みの解決案や間取りを考える際に参考となる建築手法を述べたものではなく、あくまで検討すべき項目を列挙したものでしかないことをご承知の上活用ください。 >「間取り」の次に進むということは、そこに含まれる全てを自分が了解したことを意味します。例えチェックが素人には難しいと思っても、建主がいいと言わない限り家づくりは前に進めない建前になっています。不安であれば自分が納得できる間取りや計画内容になるまで設計者と話し合うしかありません。そのためのチェックシートです。建築屋さんがいい人だから、いい工務店だから、というのは、他人である以上自分にとって適切なものになるという保証にはなりまません。

間取りセルフチェックシートは

生活のあらゆる行為を想定して、動線や各諸室のスペース(広さ)、方位や道路、敷地境界と開口部、時代に即した設備機器の配置、収納や装備との関係、その上で構造的バランスや断熱等の性能、広さと予算と仕様のグレード、駐車場などの屋外の扱い等々を考えます。その上で、工事での作業性や費用対効果、将来の生活変化への対応、気に入った魅力ある内部と外観等々を吟味しながら自分に適切なものか考える上で、項目に漏れがないかチェックできるツールです。これらは敷地や人それぞれで事情が異なり、優先順位も違ってきます。しかしこのチェック項目でで考えるべきことはすべて考えた、という実感が不安を解消してくれるはずです。

間取りセルフチェックシートの提供にあたり

 最初にお断りしておきますが、間取りのセルフチェックは簡単にできるものではありません。建築の専門の方と一緒でないとチェックしきれない部分がいくつか含まれています。またチェック項目も、適切か、とか、自分なりに納得や吟味したか、という質問が少なくありません。建築は敷地条件や使用する人が違えばチェックの判断基準や重要度も違ってくるため、使用する建て主が判断すべきものだからです。もし判断しきれないところがあったら、その間取りの提案者に相談して見て下さい。説明に納得いかなかったらセカンドオピニオン等に求めるしかありません。参考までに当ホームページの設計作法は、クエスチョン式のチェック項目に対する、私共ならこう設計しています、という、一つのアンサーにもなっています。

チェックシートは間取りを決定する前に、不明のまま進めるのでなく、検討すべきことの、気づきを促し、漏れを少なくするためのものです。又、不明なところの検討記録であり、設計者(または建築施工者)との打ち合わせ資料でもあります。

セルフチェックしても不満が残る場合

 さらに、全てをチェックして納得して不安は消えても、不満が残る方も少なくないはずです。その場合はその計画が自分の状況や価値観に合ってないからです。建築の計画は95%論理的に考えられ、論理だけでは誰が考えても、多くの場合似たものになりがちです。チェックだけでは論理以上にはなりません。その段階を超えた満足を得るのは、残りの5%部分で、個人的感性や価値観、あるいは発想や構想力に負うところが大きく、誰がどう計画したかで違ってきます。

不満を残さない計画にするには、言葉で表現できない要望と建築条件の間にある矛盾をブレークスルーする必要があります。その仕方は設計者によって異なります。全てチェックして論理的に納得しても、不満が消えない場合は、自分の感性に合った設計者を探し出し、その設計者の提案に賭けるしかありません。

チェックシートの提供は、設計があらゆることを検討する行為であり、その重要性を理解していただくためのものです。さらに真に満足いく建築とするには論理を超えた段階まで行く必要があり、それには、誰でも同じではなく、私共である必要はありませんが、住宅設計を専門とする、感性の合う設計者に委ねる必要があることも、理解いただきたくての提供です。

上田に住む方が、すべて再使用材を使用して、茅も自分で刈ってきて、自分で作った茅葺の庵です。自分が納得できればどんな家も都です。


大都会のビルの狭間に木造住宅が

都会の変貌は激しい。中高層ビルがまた解体されている、と思って毎日その解体現場前を通勤で歩いていたら、ある日突然、解体されたビルの裏側に、解体されたビルと両隣のビルに囲まれて、数十年間に渡って、陽も射さずにあったであろう二階建て木造住宅が、高層ビルの狭間に、突如朝日を燦々と浴びて気持ちよさそうに、しかし肩身狭そうにひっそりと建っていた。

 


西伊豆の平屋建て

西伊豆の土肥に、平屋建ての家ができました。

ブログも、去年暮れからこれまで忙しく、更新されていませんでした。途中経過の掲載もサボっていたわけではなく、なぜか他の実務に振り回されて、引き渡しの今になってしまいました。植栽も家具も未だですが、ちゃんとした写真での事例紹介の前に少しだけ紹介します。

土肥には、30年ほど前に設計した家があり、それはカーグラフィックという雑誌の編集者が表紙用の風景を探していて、それに取り上げられた家で、3年ほど前にリフォームをし、建て主さんがそれを見てこのような間取りがいいということで決まった家です。西風の強く吹く地域で、玄関は煽られないように、既製の引き戸でということでしたので、そのまま使っては味気ないので、わずかに周囲に木の縁を付けることで、手作り感を出しました。

敷地は自分の家の敷地と隣の100年前に建てられた家を購入した敷地と合算したので、平屋建てにしても十分全室南向きにできました。ただし、接道する北側の道路レベルと南の庭側の敷地レベルに1m程差があり、南側バルコニーには木製手すりを付け、4段ほど降りて庭にでます。内部の壁は紙クロスですが、壁面の角をそれなりの下地処理をすることで

左官壁のように見せています。居間食堂は恒例の小幅板天井ですが、

ロールブラインドもその中に納める仕掛けは健在です。

建て主さんは生け花とお茶を長年やってきたので、網代天井の床の間には、床柱や落とし掛け、掛け軸用の無双四分一だけでなく、花蛭釘、中釘、花釘も付いています。畳床には炉も切ってあります。

早く引っ越されて、生け花を活けた空間で、お茶をたてていただくのが楽しみです。


新しい年になりました。今年もよろしくお願いします。

写真は拡大すると端の山の上の雲間にかすかに富士山が小さく見えます。めでたさも遠さも見えにくさも、今年の当事務所としてはこの程度かなと思います。

昨年までの数年は、東日本の被災地で開発提案した(FSU)工法の手前、定着するまではということで、個々の住宅や事務所等の復興のお手伝いの出稼ぎ(出張)が多くありました。それで忘れられたのか見放されたのか、関東方面の本来の在来工法の仕事が少なくなってきていました。それもいよいよ昨年暮れ、そのFSU工法で作るということになった、19年ラクビーワールドカップ釜石スタジアムのドーピング室等の木造諸室の設計がほぼ終わり、今年半ばに工事が完成すれば、お払い箱となるかと思われます。

これまで新しい工法に力を注いできて、いくつかわかってきたことがあります。職業柄、被災地で何らかの役に立ちたいという意識から始まりましたが、過酷な状況と地域特性からくる要請に答えようとしているうちに、設計者としての中途半端な我は見直し、建築を作るということの意味を改めて考えさせられました。例えば、当たり前のことながら建物そのものがすぐにも欲しい方には、いたずらに時間や費用をかける設計やデザインは、殆ど重きをなさず、工事を早く安くしてあげることの方が大事な場合が多いということです。それと林業や流通事情が建築工事の仕方や価格だけでなく、設計デザインにも大きく影響を与えうる可能性を秘めている、というようなことです。それゆえ設計者が関わるからには、それなりの意味と価値のあるものが何かも、わかってきました。

葉っぱの裏にも表にもめしべのような芽があるのが分かります?

さらにこの工法は、今後の木造建築の職人不足や工事費の高騰にいずれ対応する有効な手法になりうるということもみえてきました。

被災地での(建築)事情は人口減少を含め、日本の数年先を具現化しています。今、関東でのリフォームは人口減少で生じた空き家のせいか、リフォームブームになっていて、解体してみないと中がわからないからと、見積もりを高く出しても通る、美味しい仕事に思われ、各産業から多くのリフォーム屋さんが参入してきています。職人不足とオリンピックということで、工事費はうなぎ上りに高騰し始めています。新築よりも高いのでは、という話をよく聞きます。当然新築にもその余波は来て、今後オリンピックや消費税アップで職人不足がさらに進み、工事費のコストコントロールは益々難しくなりそうです。

その時、岩手で試みて色々わかった中で、新しい工法は現場職人をあまり必要とせず、殆どを工場で加工して持ち込んで作る木造建築の手法の核になりうる可能性を秘めています。現場での職人の数が少なくて済み、2日ほどで建込、屋根下地までいき、屋根を葺き、サッシ等を取り付け、設備を備えれば、それだけでも住めなくもない木造スケルトン(躯体)ができあがります。自分で仕上げたい(DIY)方や店舗あるいは別荘等にはうってつけです。またそれなりのレベルの住宅を望む方には、その後じっくり丁寧に仕上げて引き渡すこともできます。

岩手県では、施工を一緒にやっていただいていた工務店さんは、もう自分らだけで設計施工ができるようになり、依頼も多く、待っていただいている状況です。躯体建て込みだけの依頼もあり、その方が収益も高いとのことです。

関東では殆ど知られておらず、リフォーム等、他に収益のある依頼があるため、新たな工法はやりたがらず、この工法で見積もりをお願いしても、通常と同じようなものしか出してもらえません。それでしばらくは、店舗や別荘等で、岩手県と同じように多少遠方でも、忙しくない工務店さんを説得し、この工法で施工できるところを増やし、市中で高止まりしている工事費に、見直しを迫る手段にできないかと考えています。


家づくりストーリー「棚楼居(ホウロウキョ)」2

エピソード2:姉葉事件の確認審査機関

建築のほうは、江戸っ子ではない自分等のせいか、順調にぱっぱとは行かないこともありました。少しでも早く完成させたいということで、建築確認申請も当時は早く見てくれるという民間の審査機関に申請し、早く下すことは出来、着工もすぐ出来ました。しかしその審査機関はイーホームズという、当時構造偽装の姉葉事件で、スケープゴートとして、本業の建築審査業務ではなく単なる機関の設立手続き違反として廃業させられたところでした。そんなことは未だ誰も知らず、中間検査にも問題なく通ったのですが、その直後に廃業させられたため、完成検査は台東区役所にお願いに行ったら、廃業させられた審査機関の竣工検査は、そもそも建築確認申請が確かかどうか確証出来ないので、最初の建築確認から見直すと言われました。そうすると数ヶ月住むことが遅くなります。余命幾ばくも無いご主人をその間待たせることになります。そこでご家族に相談して、早く住まわせて上げたいということで、完成検査は受けませんでした。気を揉みつつも、なんとか建物はたいした問題もなく住めるようになり、ご主人にもその住まいに数年程住んで頂けたことは救いでした。


外部に晒された木部のメンテナンス


先日、10年程前に建てた上記の住宅に一部増築したその後の様子を見に行って、驚かされたことがありました。

この住宅の後ろに目立たないように自転車置き場と物置を増築しました。

増築はする前とした後とにさ程違和感はなく安心しました。
驚いたのは、軒裏の小幅いた天井でした。下が完成当時の天井です。

私どもがよく使用する小幅板天井を軒裏まで貼った場合、場所によって差がありますが、どうしても5、6年程で紫外線や排気ガス、あるいは苔等の付着で変色してしまいます。耐候性はさほど変わりませんが、完成時の色を知っている者としては気になってしまうものです。
ところがその変色を、メンテナンスで再塗装をされて下の写真のように、殆ど完成時の頃の色を維持しているのを見せて頂き嬉しくなりました。

メンテナンスの重要性を改めて意識させられました。小幅板の天井は米松の無垢の板なので、変色がひどい場合は、再塗装の際一度サンダーで表面の色を落として塗装をすると、元の木の色を取り戻すことが出来ます。


味が出てきた佇まい

先日、10年近く経ったので、気になる不具合を相談したいということで「鎌倉の家」に行って来ました。住まいは住む方の人柄を表すと言われます。その家の前に立った時、緑も増え、手摺の木の色が渋いグレーに程よく経年変化していて、これまで大事にして来た跡が伺え、新築の時より味わい深くなっていました。

中に入っても人柄そのままに、新築時の奇麗さを損なわず美しいままでした。心配されていた洗面所の天井の漏水は、換気扇の外部のウエザーカバーがら強烈な台風時の横なぐりの雨で入り込んだのではないかとなり、さらにカバーを重ねることにしました。その他のメンテナンスのことも納得されて、自分でやれそうなところは自分でやるようなことをおっしゃっていました。ただ二階居間の屋根の軒の、隠し樋のFRP防水の表層の仕上げ部分が禿げかかっていたので、保証期間も過ぎており、プロに防水を再度塗り直した方が良いということになりました。ついでに軒先の鼻隠しも直すこととしました。

上が竣工時の外観です。


紅葉もいいけど黄葉もいい

事務所近くの通りの銀杏の木です。

陽射しを透かして見せる黄葉がとてもきれいだったので思わずシャッターを押してしまいました。そこへ木枯らし一番が吹いてきました。

風に揺れる銀杏の葉から木漏れ陽も、自分の気持ちも一緒に揺れていました。


木部の外壁

木製の外部階段が傷み、取り替えたいということで、その処置の相談で、「草加の家」に行って来ました。
その時、外壁の色が8年程前の完成当時と変わらないでいることに驚きました。

思わず塗装し直しましたかと尋ねたら、いや、一度も再塗装はしてない、とのことでした。
外部の木部は変色がつきもので、つい最初から変色しても目立たない色にすることが多く、グレーか木の濃い色にすることが多いのです。
このように木地現しの薄い白の塗装は多くはありません。案外この白は木の変色方向に合っていたのかもしれません。