きづかい運動始動6・環境に負荷を与えない建築を探す

雨晒し暴露試験6・2025年8月15日

杉板材の雨晒し暴露試験の約5カ月後写真報告です。

軒下暴露試験6右水浸しあり・左水浸し無し

同じく杉板材の軒下暴露試験の右が朝晩水浸しあり、左が水浸し無しです。

雨晒し近接写真

雨晒し暴露試験の近接写真です。左から5,6番目の材の下に何度も苦労して撮影している自撮りカメラの影が映っています。

軒下暴露6水浸しあり近接写真

軒下暴露試験の朝晩水浸ししているタイプの近接写真です。こっちには自撮りしている時の自分のTシャツの裾が4番目の材の上に被ってしまっています。

軒下暴露試験6水浸し無し近接写真

軒下暴露試験の朝晩水浸し無しのタイプの近接写真です。こっちにもTシャツが。

雨晒し暴露試験タイプのより近接写真で、左端から化学塗装・鋸目の木表材・木裏材・木表プレーナー肌

雨晒しタイプの試験材の接写です。無塗装板は暴露試験を始めたきっかけとなった板と似てきました。

雨晒しタイプのより近接写真中央酸化鉄の最も濃いグレーを目印に他材を初期の説明を参考に推定下さい

同様に雨晒しタイプの中央部分の接写です。

雨晒しタイプのより近接写真で右端が赤身材

同様に雨晒しタイプの赤身材側の接写です。下の影は自撮り時の指です。

軒下水浸しタイプのより近接写真左端が赤身材

軒下暴露試験の朝晩水浸ししているタイプの赤身材側の接写です。

軒下水浸しタイプより近接写真で右端が鋸目柿渋とやすらぎ塗装

軒下暴露試験の朝晩水浸ししているタイプの柿渋塗装材側の接写です。

軒下水浸し無しタイプのより近接写真左端が鋸目木表白太

軒下暴露試験の水浸し無しタイプの白太材側の接写です。

軒下水浸し無しタイプ暴露試験のより近接写真で右端が赤身材

水浸し無しタイプの赤身材側の接写です。
以上同じような写真報告を何枚もすみません。実態はそれなりの差があるのでそれを表現できないかと思ってなるべく、軒下でも太陽が少しながら当たる時を狙って撮ってみたのですが、その差が出ていますでしょうか。よく分からないですね。

軒下水浸しタイプの鋸目プレーナー掛け木表木裏表面に糸状の繊維が表出してきた特性写真

今回の暴露試験体観察で気づいたこと。朝の水浸しをしようと、材を取り外そうとした時に、白太材の表面に、横から朝陽が当たり、木材の繊維らしきものが付着していることが浮き出て見えました。これが水にふやけて木材の水分が表面張力で引き出される時に、一緒に繊維も引き出されてきて、4か月ほどの間、毎日少しずつ溜まっていたのだとと思われます。前出の雨晒しタイプや水浸しをしないタイプには殆どそれらしきものはみえません。

 

環境に負荷を与えない美しい建築は可能か往来を見る

事務所近くの賃貸ビルファサードビル3軒の競い合い

近くの賃貸ビルが賃借人獲得に建物ファサードを競い合っていて、その中に木の格子をデザインポイントにしているビルがあり、最も受けがいいだろうなと感じていました。その木は塗装が施されて4~5年は古びた感じにはなりませんでした。

風雨に直接さらされる面の格子と下の少し奥まった軒下にある格子

最近、雨が直接かかるところが少し汚れた感じが出て来ました。でも軒下にある木格子はきれいなままでです。木をどう使うかに良い参考になります。

北国分の駅で見かけたフラワーボックスです。擬木の箱に塗装したようです。

上の写真は北国分駅のフラワーボックスです。セメント系の擬木は腐らないし長持ちしそうですが、プラスチック系はその上に塗装するとそれが剥げると見苦しくなるところがあります。もっと気になるのが最終的廃棄です。塗装も化学塗装のようで、陶器のように地中汚染をしない保証はなく、大量になったら、海中のプラスチックのように地球環境の問題とならないといいのですが。
そんなことを考えている時、下の写真のような建物を見つけました。RC造の外部仕上げに敢えて杉板を貼った表情の建物を見つけました。

RC造か鉄骨造かと思われる二階建てフラットルーフの建物です。

夕方で暗めの写真で分かりにくいですが、鉄骨造の可能性もありますが、二階の水平な床スラブの感じからRC造と思われます。その外壁に敢えて耐候性に劣ると思える杉板の板目材を貼っています。

木製板の壁の右端部の処理に鋼板らしき素材が塗装されて貼られてますが、その塗装が剥がれかかっているのが気がかりです。

外壁の上には雨よけの庇などがありません。でも壁上のパラペットの上の埃が垂れ落ちて汚れた様子はありません。そのために水切り笠木が目立たないように回しています。多分その笠木の勾配は内側に流れるように設置されているのか、笠木上の埃が外壁に流れ落ちている症状は見えませんでした。板面は経年変化で生じたと思われる理想的グレーの表情をしていました。

壁際の泥跳ね防止の処理

何もせず杉板をただ貼ったままではなく、足元を見たら、地面からの泥が跳ね返らないように砂利を敷いていました。塗装の壁面の下の地面も芝生が植えられています。しっかりと気遣いされていました。杉板は浸透性の透明の塗装がされているかもしれませんが、もし何の塗装もなく、木の表面被膜形成性能だけだとしたら、理想的経年変化処理だと思われます。外壁からの開口部廻りの漏水と木材の対候性を考え、自分の場合通常庇を設けようとします。でも、雨で汚れが流れ落ちる自然な処理に任せる、このような手法もあるというのは勉強になります。環境に負荷のかからない建築を求めて、循環型素材の木材を多く使って環境負荷の少ない建築にし、二酸化炭素の吸収に貢献して、廃棄処分も容易にと、欲張りな外壁を考え、入手し易い杉で創ろうと、その板の暴露試験の報告をしています。その私も、風雨を避ける庇だけでなく、こんな「自然をもって、自然を制する」東洋的考え方の視点は大いに参考になります。

きづかい運動始動3の最後に紹介した上の写真は、「建築界のノーベル賞」と言われるプリツカー賞を受賞したアフリカブキナファソ出身の建築家のフランシス・ケレ氏が設計したガンド小学校です。 冷房がなくても快適 「泥」でつくられたブルキナファソの小学校 | ELEMINIST(エレミニスト)  
これも環境負荷の少ない建築として、学ぶべき視点は多くありそうです。日本にもきづかい運動始動3で紹介した、30年前に建てられた大阪アリーナも地中に埋め込まれた建築のため、冷房や暖房負荷が少なく、ドライエリアで負圧にして通風用の風を生じさせる作用のある建築で、今後の猛暑には参考にすべき建築です。きづかい運動始動3ー「木」か「気」か万博で考える | (株)結設計|東京・建築家|住宅・建築設計事務所 また他にも下の写真のように、すでに45年前に似たような趣で、機械冷房を無くし、通風を主とした建築コンセプトで、風土に合わせたデザインで作られた著名な建築があります。

名護市市庁舎(建築散歩)

1981年にコンペを通してつくられた沖縄県名護市市庁舎で、その土地の風土活かした建築と言えます。名護市庁舎を見る – 東京建築散歩

気象庁がパリ協定の産業革命以前の温度を1.6度以内に抑えるどころか、今年の日本の夏の平均気温上昇は2.36度だったと言われています。環境に負荷をかけない建築は、もう待ったなしどころか手遅れの段階になってきています。もうエネルギー消費と環境負荷を増大させる近代文明の延長線上の思考からでは、その答えはなさそうです。土と風と雨など、自然風土の持つ力を見直して、如何に活用できるか考える東洋やアフリカ的思考が新たな示唆を与えてくれそうな気がしてきました。