きづかい運動 始動

上の写真は何か分かりますか?並んでいる各板は全部杉板です。

上の写真も同じ目的で始めた、木材の外壁仕上げに使う杉の板を、外気中で太陽と雨に晒して、どう色や肌が変化していくかを見る、暴露試験中の写真です。試験体の晒す(露出)パターンは、一番上の最初の写真が全くの雨ざらしで一切手を掛けないパターン、その次の二組並んでいる写真の右が庇下で、朝晩に20分以上水に漬けてから晒すパターン、左が同じ庇下で、10分以下しか水に漬けないパターンの3タイプです。

丸太の周辺を鋸で引いて取った板材(板目板)には、上のように年輪があり、板に製材した場合、年輪の外側が木表、中心側が木裏、と呼びます。大工さんは裏表を意識して使用しています。フローリングなど日本では仕上げ面を毛羽立たないために木表を仕上面としますが、欧州ではあまり意識しないようです。それと丸太の周辺材を白太材、中心寄りを赤身材と言います。写真は両面鋸で引いたままの肌です。

上の写真を見るとよく分かるように、丸太の中央付近を鋸で引いた柾目板の端切れで、右端が丸太の樹皮で、白っぽい部分が白太(辺材)、茶色い部分が赤身です。

上の写真は、2012年に建築知識という専門雑誌で、建築や家具で使用する81種類の木材の板を自分が集めて監修させて頂き、エクスナレッジが発行した板見本集です。

上の写真の左が吉野杉の板目の白太材で、見える手前が木表、左が雲杉(中国産材で正確には日本の杉と種類は異なるようです)の右端に赤身が混じった目が詰まっている柾目板です。どちらもプレーナー掛けした肌に処理されています。

上の庇下の試験体の写真の手前の板から、①白太材の鋸肌で木表を晒し、②白太材の鋸肌で木裏を晒し、③白太材プレーナー肌の木表を、④白太材のプレーナー肌の木裏を、⑤赤身鋸肌の木表を、⑥赤身プレーナー肌の木表を、⑦白太鋸肌の木表にウッドロングエコ塗料(鉄粉入り)を塗った板を、⑧白太材の木表プレーナー肌の上部にキシラデコールの透明のやすらぎ、下部に柿渋を塗り、⑨赤身プレーナ―肌に上部にやすらぎ、下部に柿渋塗り、⑩赤身鋸肌に上部やすらぎ、下部に柿渋を塗って、①~⑩まで並べた庇下の暴露試験体2セットです。全て杉の板目板で、ビスはステンレスです。

こちらは全く屋根無しの雨曝しの試験体で、①から⑧までは庇下と同じで表面仕上げで、この雨曝しのみ、その両サイドに左脇に⑨として軒下とは異なる赤身木表の鋸肌板の上部から化学薬品のノンロットのライトグレーとブルーグレー、下部にキシラデコールのシルバーグレー塗装、⑩として軒下とは異なる赤身木裏の鋸肌板の上部にライトグレーとブルーグレー、下にキシラデコールシルバーグレー塗装をした試験体です。3セット共①~⑥までは白太材と赤身材の木表と木裏及び鋸肌とプレーナー掛け肌の自然のままの変化をみるため、⑦は酸化を早めるために自然界にある鉄分を水に溶いた塗料、軒下の⑧、⑨、⑩は赤身、白太、木表、木裏によく使われて化学薬品塗料と自然界で採集した柿渋塗料がどう経年変化するか、雨曝しのセットは化学薬品塗料との比較をを見るための試験体です。

上の写真は遠野駅の駅前広場に合ったベンチの表面です。どうも塗装してないようで、自然発色で生じたグレーの色のようです。そこで雨曝しの試験体のみ⑨⑩に化学薬品の効果を見るため、鋸肌を⑨、プレーナー掛けを⑩として、耐候性が高いと言われる化学薬品で、自分も使ってみたグレー色を二社の塗料で、自然界のものとどう違ってくるかを見る暴露試験です。

軒下で全く水がかからない木材は乾燥も変色速度も遅いと言われていたので、時々水を掛けてあげる必要があります。10枚の試験体に均一しかも一様に掛けることは難しいので、上のゴミバケツに水を貯めてパターン毎の板を、朝晩バケツの水に漬けることにしました。庇下の試験体の左は水を10分程度、右は20分以上、朝晩一回づつ、水に漬けます。ただ⑦の鉄分で木材の酸化を早める塗料を塗った試験体は他の板と一緒に漬けると、塗料が水に溶け、他の板に影響を与えそうなので、⑦だけは別の容器に単独に漬けています。露天の試験体は何も手をかけず、お天気任せです。

戸建ての二世帯家族の家とは言え、敷地内で日がよく当たり、朝晩水に漬けるために板を取り外したり、取り付けたりでき、しかも普段ろくに家事をしない、居候的立場の自分としては、他の家族の生活の邪魔にならない設置場所を確保しなければなりません。色々考えた挙句、ベランダの手すりの上に、板を風雨に晒すための試験体置き場の仕掛けを作るしかなく、試行錯誤の上、できたのが上の写真の試験体置き場装置です。

なぜこんな馬鹿々々しいようなことをやってみたくなったかの理由は色々あり、追い追い次回からの投稿で紹介していきます。一つは、ある製材所に行ったとき、敷地の端に打ち捨てられた廃棄前の上の写真の板切れを見たことにあります。三枚とも同じ木で、遠目と近くから見た写真です。打ち捨てて約半年ほど経って変色したものです。この底光するグレーの色に魅了されたからです。遠野駅のベンチで見た色とよく似ています。設計で木材の板を外壁に使うときはグレー色をよく使います。その際は自然塗料を多く使うのですが、それなりの費用を要し、北側の外壁の場合は青かびや藻を発生させることもあり、化学薬品の塗料にすることもあります。製材所で見かけたこんな色が自然に発色できるならそれを活用する選択肢にできるようにしたいと思ったからです。それには材をどう晒し、どれだけの日数を必要とするか知りたかったためです。

これから毎週、いや時には10日たまには2週間おきぐらいに、上の三枚の写真の暴露試験体の変化写真を替えて掲載続けてみるつもりです。上が庇下で水を10分程度以下浸した試験体、真ん中が庇下20分以上浸した試験体、一番下が全くの露天で何ら手を掛けない、お天気任せの試験体の変化写真です。空からでないと試験体正面の写真は撮影できないので、自撮り棒まで買って撮りましたが、うまくいかず、こんな写真しか取れません。笑って一緒に変化を楽しんで下さい。来週からは、なぜこんな暴露試験までして、きづかい運動を始めることにしたか、今木材を取り巻く設計や建築の状況がどうなのか、だからどう考えてやってみるべきとしたか、また実行し始めていることを、綴っていきます。乾燥の試験体写真を見て、感想を寄せて頂き、さぼらないように応援メールを頂けると励みになります。ずる休み防止のために次からのテーマを予告(順不同かも)しておきます。

1、きづかい運動のきづかいは、木使い?気遣い?その訳は

2、住宅で木の多用は高くつく?

3、頼りにしてた木材屋さんから廃業の手紙が

4、木を多く使いたくなる工夫をした外壁仕上板の紹介と活用の仕方

5、普通の木材板壁も在来軸組構造の防火構造外壁仕上として使える術を紹介

6、建築費高騰と職人不足に対抗して3割削減にする連携の仕組み紹介

7、おしゃれな別荘が投資対象に?

8、シェア別荘「峠の我が家物語」

9、スラム化したタワーマンションの解体費用は自治体負担?

10、文明は人類を衰退に導くように発達する?

11、戸建て木造住宅の復権と子供のレジリエンス能力