
暴露試験を始めて4か月後の雨晒しタイプの試験体写真です。

どれも少しずつ経年変化をしてきていますが遠景撮影だとあまり違いが見えにくいです。でもきづかい運動始動1の試験体と比較すると色の変化は歴然と違います。きづかい運動 始動 | (株)結設計|東京・建築家|住宅・建築設計事務所 | きづかい運動 木の使い方 木の性能

雨晒しタイプの近接撮影でようやく一枚一枚の差が分かります。木表、木裏、鋸目肌、プレーナー掛け肌では、だからと言うような差が見えません。

軒下の朝晩水浸しのタイプも木表、木裏、鋸目、プレーナー掛けは取り立てて差がない感じがします。

軒下の水浸しをしないタイプも同様ですが、どれもやはり塗装による違いが大きいようです。3タイプのうち強いて差を言うとしたら、雨晒しタイプの表面が、雨で洗い流され、厳しい環境で磨かれるのか、汚れがなく艶が出てきている感じです。軒下の水浸しタイプは、朝晩浸す水を、時々自分が怠けて毎日取り替えなかったりしたことがあったせいか、不純物があるのか若干付着している感じがします。軒下で水浸しをしないタイプは最も初期の木の感じに近いかもしれません。



朝晩水浸しは余計なことをしているのかもしれません。未だ確かなことは言えませんが、雨晒しタイプの表面には、若干のひび割れが他のタイプより幾分多く出てきている気がします。



各タイプに赤身材の鋸目とプレーナー掛けの二枚を、ひと月遅れで追加していますが、やはり単価が若干高いだけあり、白太材より木の表情のままですが、やはり雨晒しと水浸しタイプが早めにグレーになりかかっている感じがします。写真の撮り方が、軒下は、今は夏のため、試験体全体に陽が当たるときがないので、被写体の日向と日影の違いの方が大きな差に見え、報告がフェアでない気がします。晩秋まで待って頂くか、撮影方法を工夫する必要がありそうです。

地面が傾斜しているので被っていた土が流されて地中の根が露わに出てきています。一本の木の根が地中にこれだけ張り巡らされ、木全体が風に吹かれると、倒そうとする力が働き、それに踏ん張るために多数の根が張り、根元には曲げモーメントが働くので、いくつかの瘤ができたのでしょうか。なんか自然の摂理とはいえ健気な感じがして、思わず「頑張っているんだね」と声を掛けたくなります。
空き家が増えて問題となる時代に新築提案は罪か
空き家の増加ニュースを聞くたび、戸建ての新築設計が多かった自分の生業に、戸惑いを覚えることがあります。お盆休みで近所を歩いていても空き家が目につきます。でもこれは衣食住の「住」が「衣」や「食」と同じレベルになった、と言えることでもあるのではないかという気がします。
クローゼットにたくさんの洋服が在っても新しい服を買って楽しもうとする「衣」や、冷蔵庫にたくさんの残り物があっても、また新たな冷凍食品を購入し、さらに時々うまいものを求めて外食をする「食」と同じレベルになり、住宅の絶対数が不足して、そこに住まざるをえなかった時代から、誰もが自分の「住」も状況や好みに合わせて自由に求められる時代になったからだということなのではないでしょうか。

言い訳するわけではありませんが、建て替えかリフォームかの相談を受けた時、古い既存家屋全体を今日の時代に合わせた性能と好みにしようとすると、殆どの場合、断熱性能等が不足していて現代生活にそぐわないことが多いです。電気代を捨てるようにエアコンを使わないと住めそうにない家とか、雨漏りや土台の耐力に不安がある家なども多く、それらを補おうとすると、外壁か内壁或いは屋根か天井を剥がす必要が出て、既存部分で使えるのは基礎と柱梁の構造軸組だけで、新築の7~8割程かかってしまうことが多いのです。リフォームでの見積もりは基本現場に合わせた手作りになり、施工費のアップ要因が多く、活用する既存部分も補修が必要で、剥がさないと分からないことに備えた保険も含まれ、新築より工事単価が高くなり、予想以上の高額になります。それでいて既存家屋の配置や間取りには、今の状況に合わせられる自由度がなく、費用対効果から、新築にした方がよいか、となる傾向があります。

だから新築の設計で空き家が増えるのははしかたがない、と言うつもりはなく、予算が限られるような場合は全部を直そうとするのではなく、直す部分を限定して、そこだけのリフォームと割り切るように勧めています。その上で、もし新築とするからには、好みに合わせて機能や性能が十分であればいい、とするだけではなく、これだけ空き家が増えてきたら、建築の部材の生産や解体材の廃棄も含め、環境に負荷を与える以上、新築する意味を見直す必要があるのではないかと思われます。空き家となる家は、建てる時、個人的要望を満たすことで精一杯で、次の使用者のことまで考えてなく、次世代が残したいと思えない場合が多いからかと思われます。私どもの過去の設計事例にも事情があって売却を考える方いらっしゃるので、その時はできるだけ建築時の工事費近くで売却できるための注意点をアドバイスをしています。建築ヴィンテージ化支援ー流通の背景構造の理解にー | 家を大事にヴィンテージ化します
これだけ空き家が多くなってくると、新たに建てるからには、用済みなった場合の解体再使用を考えるとか、或いは単なる時代の必要機能や個人的好みを越えて、将来の要求にも応えられる普遍性を持っているか、もしくはその土地の環境や風土に意味や存在価値を感じさせ、次の使用者がそれなりの費用をかけてでも残したいと思わせる建築でないと、空き家にならず使い続けて行く家にはならないのではないかと思われます。
