投稿者: 藤原昭夫

保存される建築物

愛知県の犬山市に 建築物の移設、保存、展示を行っている「博物館明治村」という施設があります。広大な敷地には明治時代の建築物を中心に、大正、昭和の建築等も含めた多数が保存されており、その中の10件は国の重要文化財に指定されています。

明治村に移設・復元展示されている有名な建築物の一つに、登録有形文化財に指定されている、建築家フランク・ロイド・ライト設計の帝国ホテル旧本館(ライト館)中央玄関があります。玄関部分のみの移築ですが、ホテルの玄関ですのでそれなりの大きさです。
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この帝国ホテルの竣工記念披露宴の準備中に関東大震災が発生(1923年9月1日)したそうですが、建物にほとんど被害はなかったそうです。
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細工の施された大谷石と煉瓦積により内外のデザインがまとめられており、とても美しいです。エントランスは3層の吹き抜けとなっており、大谷石とレンガのラインがとても印象的です。空間的に少し低い印象を受けましたが、それが落ち着いた印象を与えているようにも感じました。
また、どの部分を取ってみても一切の妥協がないと言えるほど、細部にまでこだわって設計していることが見て取れます。
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ホテルという大規模な建築で、ここまでの詳細をもつこの建築に非常に良い刺激を受けたのとともに、どんな客室があったのかと興味をかきたてられました。


大宮の家 屋根通気層

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大宮の家は木工事を進め、設備関係の配線、配管を進めているところです。
写真は屋根の通気層のところが見えているところで、シルバーに見えるところはアルミ箔が付いている断熱材です。
まず屋根の剛性を保つための垂木を架けて、合板、断熱材と打ち付け敷き込んでいき、さらにその上に通気層を設けるために通気垂木を架けます。
断熱材の外側に通気層があることによって、外気の温度差の伝わり方が緩和され、特に夏の強い日差しを浴びている屋根材から伝わる熱は相当大きく、空気層で通気をすることによる断熱効果は大きいです。
垂木を2重に架けていることになりますので大工さんの手間はその分かかってしまいますが、大きな役目をしています。
熱せられた空気が上昇して排出するために、入口と出口を設けその間が塞がれないようにちゃんとルートが確保されていることが重要です。
寄棟の部分も、出口となる棟の部分もちゃんと隙間が空いていて空気が通れるようになっていますね。

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中落合の家 最近の現場

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外回りは、外断熱材張りがほぼ終わりました。
この家は、傾斜地をうまく利用して、地下を設けました。地上2階建てなのですが、敷地で一番低いところからは、3階建てに見えます。
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屋根では、ちょうど屋根材葺き工事をしているところでした。


優柔不断な設計と合意形成そして知性

 たまに、家づくりをして体を壊したという話を聞くことがあります。自分の経験ではありませんが、それはやってみて、思っていた以上に大変なことが分かって来て、くたびれ果てて病気になるのだろうと思われます。大変なことは、予算が少ないとか、敷地が狭い、あるいは引っ越し作業等が大変というようなことより、多分、家づくりは複雑に絡み合ったいろんなことを、改めて決めて行く作業であることからくる、“決める”ということの心労ではないかと思われます。
 一見、設計と関係ないことですが,今、北アフリカ、中東、東アジア、ブラジル、ウクライナ等、世界の至る所で内部紛争が生じているようです。世界中が予想以上に多様性に富むようになり、しかもその情報が瞬時に、誰にでも容易に手に入れられ、自分等と周辺の差異が目に見えます。如何していくべきかを決めようとすると、そこに相互の得失も想像でき、まして宗教や民族どうしの欲が絡み合っていれば、より複雑になり,合意に至ることがますます困難になって来ているからだと思います。今日、最も困難で、心血を注いで発達させなければならない技術は、ものの生産性を上げるような工業技術等より、多様な民族と価値観の中での合意形成の仕組みなり、ルールづくりの技術や学問ではないかという気にさせられます。
 このように多様性に混乱させられる状況は、実は住宅の設計でも、設計者はもちろんのこと、依頼主にも、どのような住まいにするかを考える時、同じ様相を呈して迫ってきます。大まかな有り様から始まり、細部に至るまで何段階にも渡って、考えれば考える程、沢山の情報がいやでも入って来て,選択肢が多様に存在することが分かってきます。又その気になれば技術的には、殆どのことが可能であり,好き嫌いや自分の判断だけで決められそうでいながら、いろんな要素がからみ合い、決めたと思ってもすぐに考え直さないといけない要因がすぐ出てきて、決めきれないことも分かってきます。
 情報が多く錯綜するなかで、決定を迫られながら進めて行くのが住宅の設計です。自分の価値基準がその都度問われ、考えても見なかった問題の表出の連続になります。その都度毎あまり考えず、決めてしまい、楽になりたくなります。むしろ情報を遮って、決定し易くしたくなります。だからなのか、メーカー等の規格型の住宅に走る人が多くなるのかもしれません。自分で誠実に決めようとすると、色んな場合の切実性や希望、あるいは価値観等で、自分の中の合意形成すら難しい時代になって来ています。
 いつまでも決めきれない事項を抱えているのは、気持ち悪く、苦痛でもあります。だから病気にもなります。でも住宅の設計は、ある段階で、ある事項の決定に、未だ分かってない要素の影響が後々に作用することがあり、決め切れないまま多くのことを留保しながら、物事を暫定的に次々判断して行く作業でもあります。
 フランスの現代思想を専門とする内田樹氏が、知性とは留保し続けられる能力である、と言っています。自分はちっとも知性的ではないのですが、極めて優柔不断な人間で、これが最適か、といつも迷い、手探りばかりしています。でもそんな優柔不断な自分の欠点が、知性,と捉えることができるとなると、どっか慰めになります。決めきれない建て主さんにもお勧めです。
 通常、経験が多くなってくると、確かに迷わなく決められるところも増えてきます。しかし,今度は経験の量と共に、見えてくる可能性が、新たな材料機器や手法と共に増えて、選択肢も増々多くなります。そうすると、より最適な回答が他にありそうに思え、欲が出て,また決めきれなくなってきます。いつまでたっても優柔不断は変わりません。
 結局住宅設計で決まるのは、全ての事項を暫定的に決めた図面が、とりあえず整い、工事者の見積もりも出て,できそうなことと可能な予算の配分が明らかになったとき、全てのジグソーパズルの最後のピースが嵌って全てがいっぺんに決まる、と言えそうです。
 せっかくの家づくりですから、病気等にならず、楽しく進めていただきたいと思います。誠実で優秀な建て主さん程、自分で決められるはずだという自信もあり、見える量も多いため、決めなければと思い、細部に渡って過剰なまでに悩まれることも多くなるようです。このように30年の経験を積んで来ても容易に決められないのが住宅設計です。少なくても建て主さんの特殊事情でない限り、通常悩まれることは,経験者にはもう回答が出ているものが殆どです。特殊事情や趣向以外までも全て自分で納得できるまでコントロールしようとして苦労するより、大まかなところや程度加減は、設計者の考え方に共感できるようでしたら、その経験や判断基準に委ね,気になったところのみを一緒に吟味された方が、体を壊すようなことにならず、楽に進められるのではないかと思われます。
 


南米ペルーボリビア ウロス島の家

去年は1年を通して忙しい日々が続いていましたが、その合間をくぐって、海外旅行に行けました。
写真は、南米のペルーとボリビアに行った時のものです。

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写真はペルーとボリビアにまたがるチチカカ湖という湖で、その湖に「浮かぶ」ウロス島です。ペルー側のチチカカ湖畔にあるプーノという街から船で行きました。プーノはアンデス山脈のほぼ中央に位置していて標高3,850m、チチカカ湖は標高3,810mほどあり、富士山より高いということになります。

ウロス島はトトラ(フトイに似た植物)と呼ばれる葦でできていて、作り方は、湖面に顔を出すようにして生えているトトラを刈り取り、刈り取ったトトラの根をブロックのように縄でまとめて土台を作り、その上にトトラの葉を厚さ3mほどに積み重ね、敷き詰めて出来上がりです。メンテナンスは、水に浸かっている下の方のトトラが腐ってくるので、また上から新しいトトラを補充して敷き詰めていきます。家もトトラで作られていました。

島には大小様々あり、学校や病院など島民向けの施設のほか、レストランや商店、宿泊施設など観光客向けの施設まで一通り揃っています。
島には畑もあり牛など家畜も放牧されていて、餌は敷き詰めてあるトトラです。
人が食べることも出来て、島の子供たちはおやつ代わりによくトトラをかじっているそうです。

トトラとは、新たな土地にもなり、建築材料にもなり、餌にもなり、食料にもなってしまうというわけです。
島に降り立った感触は、フワフワ、ムギュムギュした感じで、場所によっては足がズボっといきそうでした。

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風で流されないようにアンカーで繋いでいるようですが、激しい暴風雨の時は遠くへ流されてしまうこともあるそうです。
浮いているので、もちろん上下水道は完備されていませんし、電線も通っていません。よく見ると、島には小さな太陽光パネルのポールが立っていました。これはフジモリ大統領による援助政策の一環だそうで、ウロス島では貴重な電気をもたらしているようでした。ラジオや夜の照明くらいは使えるそうです。

ウロス島の生活は、なんでも整っている日本の暮らしから考えると不便かもしれませんが、考えようによっては自由に「土地」を取得でき、アンカーを外せば好きな場所へ「引っ越し」も簡単、家族が増えれば「増築」し放題、子供が独立する時は切り分けて「分譲」も可能と、日本ではなかなか難しいことが簡単に出来てしまい実はとても便利なのかもしれません。


那須の家 木工事

那須の家の昨日の現場。木工事を進めています。
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那須の家は、離れの天井のサツマヨシべニア張りが終了。畳寄せも終了しました。
まだ紙を貼っていない障子と襖が入っていました。
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母屋も天井の下地のボード張りが終了。
写真は、居間から北の庭をみるコーナー窓。背の高い窓です。
上部に夏の暖気抜きのための窓も設置しました。
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下見板の外壁の塗装や板金の外壁の工事も終了。
先日の大雪がまだ残っていました。まだひざくらいまであるので、雪の部分は歩けないですね。
いつもの年だと、那須でもこんなには雪は積もらないそうです。


茅野の家 1ヵ月点検

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茅野の家は、昨年末に1ヵ月点検を行いました。
12月だったのでその時は雪は積もっていませんでしたが、今頃は広い敷地が雪一面になっているかもしれません。
予算の関係で計画していた基礎蓄熱式の床暖房は中止にしたのですが、工事契約した直後に復活し、まだこれから基礎工事という段階でしたので基礎蓄熱式の床暖房工事も間に合う事が出来ました。1ヵ月点検の時には床暖房のスイッチを入れていましたので、外がとても寒かったこともあり、建物の中に入ると暖かさを身に染みて実感しました。
床暖房、あの時に復活して良かったと思いました。

茅野の家には薪ストーブを設置しています。
以前のブログにも書きましたが、薪ストーブの後ろの壁は蓄熱効果を高めるためにコンクリートブロック造にしていて、仕上げは石貼りです。
薪ストーブは1階に置いてあるので、暖められた空気は上昇して2階へ上っていきます。その2階天井に溜まった暖かい空気は、一番高い天井付近と1階廊下にガラリを設けてダクトでつなぎ、ファンを回すと1階廊下に送風され、暖められた空気が家全体を巡回する仕組みになっています。
このストーブはMETOSで販売されているベルギー製のドブレ薪ストーブ、ドブレ640CBJという薪ストーブです。
薪ストーブを設置する際に気を付けることは、外断熱で気密が高いためなるべく外気から直接給気出来るようにすることで、このドブレ640CBJ薪ストーブは外気を直接取り入れることが出来るタイプになっています。
また、煙突が付いている位置が奥の方なのでトッププレートが広く鍋などが置けます。
建て主さんも、薪ストーブを使うのをとても楽しみにされていました。

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作業コーナー

リビングダイニングキッチンの一角に、作業スペースを設けました。
階段下も収納にして、小さなスペースも活用しています。


建築家の本棚

先日、乃木坂にあるギャラリー・間にて開催されている展覧会に行ってきました。

TOTOは水廻りの製品で有名ですが、ショールームに併設されたこのギャラリーにて国内外の建築家にスポットを当てた展覧会を定期的に開催しています。

今回の展覧会の一角では、某建築家のオフィスの一部が再現されていました。
実際に使われている家具や蔵書なども持ち込まれていて、建築関連の本が好きな私にとっては興味深い展示でした。

本棚に置かれていた本の中には槙文彦氏の著書『見えがくれする都市』がありました。
初版されたのは1980年と古い本ですが、日本特有の建築・都市の成り立ちを欧米との対比を交えたりしつつ分析しています。
私にとっても、日本の街並みや風景を考える上で大きな示唆を与えてくれた本です。

建築家には本を書く人がたくさんいます。
建築作品の裏側には、図面だけでは表しきれないその建築家に特有の考え方があるからです。
結設計では「私たちの考え方」をHPに掲載しています。
結設計の設計事例に興味をもっていただけましたら、是非ご一読ください。


豊川の家

現在豊川市で建設中の住宅も、着々と現場が進行中です。
この住宅は、建て主さんのこだわりで外断熱と充填断熱を複合で使用しています。充填断熱材には現場発泡タイプのウレタンフォームを使用し、経年劣化による木の痩せ等に少しでも追随していく製品を使用しています。
現場発泡の断熱材を使用する場合、断熱材処理をする壁面に取り付けるコンセントやスイッチ、スリーブやその他の位置は、現場発泡以外の充填断熱材を使用する場合に比べ早めに正確に定めておく必要があります。
施工後にも多少の追加や変更はできますが、あまり大きく後から手を加えることは断熱材の隙間を増やすこととなり、折角の断熱性を落とすことにつながりかねまねません。
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開口部にも断熱性能の高いサッシやドアを使用し、外壁面全体の断熱性能のアップを図っています。
基礎には蓄熱式の暖冷房を採用していますので、家の断熱性能や気密性能を高めることで、冷暖房にかかるランニングコストを抑える働きを期待できるのではないかと思います。


5年点検その2

5年経って興味があったのは、風雨にダイレクトに曝された木部の状態です。
特に雨がかりのデッキの床です。最近は20年ぐらい持つと言われている、セランガンバツやイペ材等、固くて重い南洋材を使用しています。
確かに持ちはよさそうですが、大工さんの加工が大変で鋸刃を1、2枚だめにすると言われ,価格が少し高めであることが難点です。
今回の家は、デッキに加工のし易い米杉を使ってあったため、どの程度傷んでいるか見てみたいと思いました。実際見せて頂いた状態が下の写真です。
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思っていたより痛んでいませんでした。話を伺ったところ毎年ご主人が塗装をし続けているとのことでした。
通常デッキが痛むのは、木部の油分が薄くなって、毛羽立ってきて、傷んで行きます。そこをオイル等を補充してあげると木はかなり長く持つようです。
それを実証して頂いていました。下の写真は同じ材でつくったゴミ置きボックスです。間取り上、道路側にキッチンを持ってこざるを得ず、道路からゴミ置き場が見えてしまうので、それを目立たなくしようとしてつくりました。
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ついでに、キッチンの勝手口も目立たなくしようとして、ドアも制作して、外壁と同じ仕上げにしました。
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