「過去に設計した建築の改修相談席は被告席-2」


この建物も15年ほど前に大塚駅近くに設計した、最上階に自宅を設けた賃貸マンションです。外壁のシールが切れて漏水している可能性があるので、全面改修も考えたいとのことでした。

確かに、外壁シールは15年経過し、傷んでいました。そのせいである日、4階、3階、2階、1階と、同じ洗面所の天井に漏水が生じたのではないかとのことでした。その意見を言ったのが設備やさんとかで、その方が手配し、50万円で高所作業車を使って目地シールを、明日やり替えるとのことです。作業車を使わないで梯子の届くところまでとしても、8万円程かかるとのことでした。それで急遽、見てみましょうということで見に行きました。しかし話を聞いているうち、漏水があった後、これまでの2か月ほどは症状はないとのことでした。
この外壁のシールはタイルを貼る際に、壁の伸縮で生じるひび割れを吸収するための寸法調整用の目地シールです。シールの向こうには、厚さ20cmのコンクリートの躯体があります。さらにその奥はパイプスペースという空洞になっています。そこを超えてその向こうの洗面所の天井にだけ、漏水を引き起こすわけがない、ということを説明して、とりあえずシールのやり替え作業を思いとどめ、8万円かかるという作業も中止することにしました。
考えられることは、パイプスペース際の配管廻りか、上の方の洗濯機などから排水を溢れさせ、下の階に漏水させたのではないか、と思われることを説明し、もう一度同じ症状が出た時に確認しましょうとなりました。
全面改修では、よくマンションの管理会社などは、建物の症状に関係なく10年ぐらい毎にやりたがります。私は、症状を観察し、大丈夫そうであれば、できるだけ間隔をあけてましょうと助言しています。正直、早めの改修は事故を未然に防ぐ、または軽減するからということで、誰も反対しにくく、マンションではその意見が大勢を占めてしまいがちです。しかし改修の回数が多くなることは、そ分費用が発生し、負担を多くします。私の関わったマンションでは最長20年間改修をさせずに済んだものもあります。
この建物の場合は、今度漏水の症状が出た時に原因を突き止め、その原因によっては、改修も考えるけど、ざっと観察した結果、未だ5年程は様子を見ましょう、となりました。
帰りに、昼飯でも食べようと、近くで設計した建物が近くにもう一軒(下の写真)あったので、それを見がてら、そのそばの定食屋さんの、マグロどんぶりを、8万円の昼食ですね、と、ごちそうしていただきました。