高低差のある土地の計画 鎌倉編①

鎌倉山の家 屋根からの景色

上の写真は、現在鎌倉で建築中の物件の屋根の上からの風景です。

この土地を建て主が購入する前は、築数十年経過したうえに、かなり長期間におよび住人不在で朽ち果ててしまった住居が佇んでいました。

その土地で、既存建物の解体から工事が始まり約半年。ようやく足場が外れ,その姿を現しました。

鎌倉山の家

今回の土地は以前ご紹介した「国立の家」同様、高低差のある土地です。国立の土地よりも高低差があり、法規制のかかる2mを超える箇所がある土地であるため、計画にはいくつかのポイントがありました。

 

ポイント その1・・・擁壁?建物?

建物が建つ基礎部分は当然のことながら深基礎となり、建物の一部となります。一方、駐車場に対して庭の土を支えるRC壁は、擁壁なのか?建物の一部なのか?

2mを超える擁壁は建築基準法88条により、擁壁を築造するための確認申請が必要になります。同時に、鎌倉市建築基準条例第5条もかかるため、確認申請前に市役所への相談が必要となります。

さて、ここで庭の土を支えるRC壁を擁壁にすべきか、建物の一部とすべきか。これを慎重に検討する必要がありました。面積・構造・平均地盤面の算出・工事手順および工事期間・工事費用・・・そして各種申請手続き。

様々な面から検討し、今回は建物の一部としています。そうすることで、『建築物の建築自体と不可分な一体の工事』とみなされ、都市計画法第4条第11項および政令第1条の特定工作物による開発行為に該当せず、開発許可制度に含まれる宅地造成工事の許可申請が不要となります。本来は宅地造成工事の許可が必要になる行為にある『2mを超える切土の行為』に該当することとなりますが、建築物の一部の場合は、これらの扱いから外れることとなります。これにより、宅地造成工事の許可申請と、擁壁築造のための確認申請が不要となり、建物としての申請することで、開発申請にかかる約2か月を短縮することができました。

一方、このRC壁は庭の土圧がかかるため、構造的にはどうでしょうか。建物から延長した基礎に横から土が壁を押す力が生まれます。そのため、このままでは建物を支える以外の力も建物下にある深基礎が負担しなければならなります。これは鉄筋量やコンクリートの厚みに直結することから、構造上は縁を切り、建物を支える深基礎部と、庭の土圧を支える深基礎延長部分に力を分け、工事費用をできる限りおさえることとしました。

また駐車場横深基礎部分には、RC壁で囲われた倉庫を設けることで、アウトドア用品はここにたっぷり収納できるようにしました。高低差がある土地であるほど、道路・駐車場レベルに設ける収納スペースは、物の搬入出の利便性を向上させる効果が絶大です。この倉庫を地階とし、地上2階地下1階の3層の建物となっています。

深基礎・擁壁

↑ 建物一体としたRC擁壁と資材で見え隠れしている右側の倉庫壁

高低差のある土地は、不動産上はマイナス評価として割安で売買されている場合が多いようですが、土地の高低差に対して建物を計画するには、どうしても土留めの壁面か深基礎が必要になります。これをどのようにプランのなかに配置して法規と工事費用を検討するかが高低差のある土地を計画する際の大きなポイントとなります。

ポイント その2:▶高低差のある土地の計画 鎌倉編②