月: 2009年8月

鎌倉の家 計画案? 「明るさと開放性」

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敷地が変わって最初の計画案です。

敷地の東側は、建築中の隣家の影で暗くなることは確実でした。(この敷地を確認した頃にちょうど住宅建設の工事がはじまったところでした。)
敷地の西側には細い道路があり、その道路為にセットバック(図面の濃い緑色の部分)が必要で敷地として使える幅が狭くなるのも分かりました。セットバック部分は、将来道路の幅を拡張する為の部分なので、建物が建てられません。
ただ、その西側道路があることによって、西側からの光が期待できそうでした。

そこで、まずはオーソドックスに敷地の北側に建物を寄せ、なるべく南側に開放された空間として庭と駐車スペースを設けた案を考えてみました。
こうしたプランは、「コの字型」プランより引っ込んだ部分や出っ張り部分が少ないので、外壁面積、窓の面積が小さくなり工事費が抑えられるメリットがあります。

1階の東側は、どうしても隣家の影で暗くなりそうですが、ここにはそれ程明るくなくても良いクローゼットやトイレなどを設けました。
浴室は、バスコートを北側に設けて明るさを確保します。浴室は普通は夜使うところなので暗くても良さそうですが、明るい浴室だと昼間にお風呂に入りたくなりますし、脱衣洗面室に洗濯機を置くことが多いので、洗濯をしているときに明るいと気持ち良いですから、なるべく浴室は明るくするようにしています。
前の敷地と同じで、北側の食堂への陽光がお昼過ぎにはデッキ上から階段上の吹き抜けを通して取り込めるように、2階居間の西にデッキを設けました。

と、ここまで考えましたが、明るさは問題無いとしても西側は道路なので、プライバシー上開放性をあまり高くする訳にはいきません。西側の開放性を高めると、道路を歩いている人達から中が覗けてしまいます。

1階の明るさを確保しつつ、開放性も高く、プライバシーも守れる方法が必要です。

そこで、次の案です。
それは次回につづきます。


鎌倉の家 計画案? 「中庭と光と、建物のかたち」

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”鎌倉の家”の最初の敷地における計画案です。
”真間川の家”を基本形としながら、この敷地だから出来るプランになっています。

「”真間川の家”のように中庭がある明るい空間が良いね」という建主さんの言葉をきっかけに、まずは中庭がある案を考え始めました。
しかし、この敷地は、東西とも隣家が迫っていて隣家越しの光は期待できません。 東西側から中庭に差す陽光は期待出来ないので、南側から光を入れるしかありません。
2階を1階と同じように「コの字型」プランにすると、自分の建物の影になってしまいます。中庭を維持しつつ、中庭に陽光が差し込む形態を考えなくてはいけません。

そこで、2階の居間の東西幅を少し狭めて西側にデッキを設け、2階を「L字型」プランにして、デッキ越しに陽光が入るようにしました。
2階も「コの字型」にした場合に比べ、2階が「L字型」の方が中庭の南側の建物が低くなるので、中庭に陽光が入り易くなります。

このように、同じ様なプランであっても、敷地によって建物形状を変える必要があるので、私達「結設計」で今まで数多く設計してきた住宅は、その敷地が全て違うわけですから、同じプラン・形状のものはありません。全てその敷地だからこそ出来る建物です。

次回は、鎌倉の敷地になってからの計画案をご紹介します。


土地の探し直し

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”鎌倉の家”の建主さんが最初購入された土地は、茅ヶ崎の旗状敷地(上の写真)でした。
この土地の購入前に相談があり、建主さんから「この敷地でも”真間川の家”と同じような住宅が建つでしょうか」と、この土地を購入される前に聞かれました。土地の広さや形状・方位等からみて可能であると判断し「出来ます」とお答えしました。
その返事を聞かれてから土地を購入されました。

この土地での計画案は、気にいって頂けたようでした。
しかし提示後、「その案の良し悪しに関係なく敷地を変更したい」という申し出がありました。私たちもびっくりしました。どうも私たちが案を製作している間に建て主さんは、最初の土地の環境が気に入らず、違う土地を物色していたようです。新しい土地が下の写真です。

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最初の土地は、確かに敷地の四方が二階建ての住宅で取り囲まれた感じがしました。私たちもその土地での建築的可能性は助言できても、他の土地の出物の可能性や価格との折り合いまでは助言できません。多分建て主さんのこだわりが最初の土地の環境に抵抗を覚えさせたのではないかと思います。後の敷地は実質に計画できる広さは殆ど同じで、四方が建物に囲まれる可能性も同じでした。

ただ、未だ東隣には住宅が建っていなくて広く感じられたことと、南道路が行き止まりではないことが、違った印象を与えたと思われます。しかし、後の敷地は、西側に細い道路が存在していてその分セットバックして道路に敷地を提供させられるということと、その道路からの高度斜線制限があるという欠点を持っていました。また後で問題になってくる、文化財埋蔵地区でもありました。容易に判断はしにくい要素を持っていました。


参考とした事例

<昨日のつづきです>
建て主さんがモデルとして選んだ事例が2年ほど前に設計して建てた、”真間川の家”でした。

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真間川の家”に何度か一緒にお邪魔し、かなり熱心にそこの建て主さんにお話を聞かれていました。要望はその事例と比較して自分はどうしたいというような話し方をされました。

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-写真は、”鎌倉の家”の参考となった”真間川の家”です-


要望の伝え方、返し方

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設計者との家づくりで難しいのは、建て主の意向の伝え方、特にデザインセンスに関するするような部分の伝え方です。

私どもに依頼される住まいは、建て主さんの具体的意向どおりだけで建てたら満足していただけない可能性があります。だからと言って意向を聞かないとこれまたもっと不満な住まいになります。設計者もできるだけ依頼者の意向を尊重しようと努めます。
意向を強調しすぎると設計者の味も消しかねなく、十分伝えなければ不満の残るものになりかねません。自分なりにイメージのはっきりしておられる方もいれば、こだわらず柔軟に対応していただける方もおられます。意向の伝え方、意向の聞き方ということは奥深いところでは案外難しいことです。
そのようなやり取りで少し特殊かもしれませんが、最近参考になりそうな事例がありましたので、紹介してみます。

“鎌倉の家”の建て主さんは人生経験も豊かで、かなり自分なりの住まいへのデザインイメージのお持ちの方でした。ホームページもよく研究されていて、それゆえ私たちのところに尋ねてこられたようでした。
そうであるだけに、単純な要望の伝え方をしてしまうと、設計者が建て主の既存のイメージに添ったものを作ってしまい、設計者の良さを出してもらえなくなるのではとか、あるいは自分の既存のイメージを超えたものにはならないかもしれない、と言うことを心配されていました。

そこで今回、建て主さんがひとつ、私がひとつ、そのための手をそれぞれ試みていたことになりました。つまり建て主さんはイメージを言葉で伝える危険を事例で表現し、私のほうでは、建て主さんが伝えたい要望がたくさんあるのに、伝え過ぎて設計者のよさを出せなくすることを恐れて遠慮しながら伝えるもどかしさを取り除くために、間に担当者を入れてコミュニケーションすることにしました。。
建て主さんは、私どもの過去の設計事例を徹底的に研究され、自分の意向に近い事例を1件取り上げ、それを自分の意向とイメージの伝達の手段とすることで、間違っても最低限そこまでは保証されるという、滑り止めを設定されたのです。
私の方は、建て主さんが設計者に気兼ねなく話し易いように、基本提案後の細部や嗜好部分の意向のコミュニケーションを事務所在籍10年の、これまでの大体のことは理解しているベテランのスタッフを担当にしてまかせ、そばで見守り、私はそのやり取りに口を出さず、気になった時だけ新たな提案とアドバイスをするというスタンスで徹底してみました。

家を作ることに強いこだわりを持つ建て主さんでしたので、そのこだわりのエピソードのいくつかをブログでご紹介したいと思っています。

<長くなったので明日に続きます>


『膨らんでいく』こと

竣工して半年、『戸神台の家』へ写真撮影に今週末伺います。

ご夫婦は私共の事務所へ設計を依頼される前も、また設計を進めながらも毎回内覧会に参加して下さいました。内覧会でお見せする家は、そのご家族や敷地によって趣も仕様もかなり違います。いろいろ見学するうちにあれもこれもと迷ってしまう方もいらっしゃるのではないかと思いますが、ご夫婦はいつも楽しそうでむしろその違いを愉しんでいらっしゃるようでした。

今振り返ると、家づくりをトコトン愉しもうという気持ちの余裕と、自分達らしいものを創っていきたいという探究心こそが、設計者である私達を鼓舞し続け新たな提案や発想を導きだしてくれたように感じます。そして、当初の提案が、お二人の住まいとしてオリジナリティのあるものにどんどん膨らんでいきました。
最初の提案時の模型と、竣工後の外観は、ほぼ変わらないように見えるのですが、実はいろいろな部分でより豊かに変化していきました。くわしくは撮影後にご紹介したいと思いす。

建主さんと向き合って設計が『膨らんでいく』こと、これは住宅の設計の醍醐味かなあと感じています。

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石巻・気仙研修旅行?

シリーズでお送りしてきましたが、今回がいよいよ最終回です。工場見学の後、厚かましくもお昼をご馳走になり、伐採林を見に行く予定でしたがさらにわがままを言って町営住宅とスレート屋根の昔ながらの住宅も見せて頂くことになりました。

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町営住宅
町営住宅の町並み
住田町の町営住宅の町並みです。瓦屋根に杉の腰壁に漆喰の真壁という、なかなか立派な造りで、しかも平屋という贅沢さ。広さも十分あります。信じられないことに家賃は4万円程度と伺いました。自分が払っている家賃と比べてしまうと、ここに住んで毎月色々な所に遊びに行った方が(就職先と休みがあるかはともかく)はるかに良いかもしれないと考えてしまいました。住田町にはここ以外にも同じように町営住宅が並んでいるところが数箇所あり、町並みへの配慮具合が伺えました。

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屋号のある家
重厚感のあるスレート屋根 外に電話を知らせる装置
続いては古くからあるスレート屋根の家です。現在ではその金額の高さからあまり使われることの無いスレート屋根ですが、さすがに古いものは贅沢な使われ方をしていて重厚感たっぷりでした。棟に書いてある文字は屋号で、「日本桂の○○さん」などというように住所的感覚で使われていたようです。右の写真は畑仕事中に電話を知らせる装置で、見学していた最中にも一度鳴るのを聞くことが出来ました。

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全てはここから
作業する重機
そしていよいよ今回最後にして根源となる山へ。ガードレールも無く、舗装もされていない山道を車に揺られること数分でまさに伐採中の現場に到着しました。作業は3台の重機で行われており、山の下方から見上げた様は食事中の恐竜のようで、ジュラシックパークの1場面を思い起こさせるような景色でした。3台の重機はそれぞれ役割が異なり、切り倒された木を集めるもの、集まった枝を払い、余分な箇所を切り落とすもの、最後にトラックに積みやすくするものとなっています。意外だったのが、重機の各機能を満たすアタッチメント部が日本製ではなく、フィンランドやスロベニアの製品ということでした。林業に関しては日本は先進国ではないのです。写真ではわかりませんが、はるか上の方では一人の職人さんが木を切り倒しています。写真を撮っているところから30分くらいで登ってしまうようですが、早朝からお弁当を持って行って夕方まで一人で作業しています。見ていた時は、木の周りの草を払って、1本切り倒すまでにおよそ5?10分くらいだったように思えます。見難いですが、下の動画では木の枝を払う重機とその木を積み上げていく重機の連携の様子がわかると思います。

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香り立つ生木
倒されたばかりの唐松
上の写真は唐松の原木です。まだ皮の残る表面は、こんがり焼けたローストチキンのようで「おいしそう」という感じでした。
杉の断面 唐松の断面
左は杉で、右が唐松の切断面です。ぱっと見でわかるように、杉の方が赤太と白太がハッキリしています。赤太の部分というのは木の初期に当たる部分で、まだ木として弱い頃のため、虫などが付きにくい成分が入っています。耐候性も強く外部で使用しても腐りにくいのですが、一般的に仕上げ材として好まれるのは白太のようです。

国産材の使用が推奨されるようになってきた昨今ではありますが、現場を見ると木の値段というのは安すぎるというのが実感です。木は50?80年というスパンで育てられ、道とも言えない様な道を大型トラックで入って行き、建設現場と比べても随分と危険な状態での作業を続けてやっと切り出される様子を見ると、「プレカット間違ってるからその梁取り替えて下さい」などとは簡単に言えなくなります。恐らくは、ほとんどの製造業はその発端から見ていくと末端価格は信じられないほど安いというものが多いのでしょう。その過程というのは格差社会によって成り立っている例が多いような気もします。しかしながら日本の林業となると物価が1/10の国での作業とは話が違い、作る側も使う側もそれなりの生活水準を保てなければいけないのだと思います。そこを政治による調整に頼るのか、自ら道を切り開けるかが今後の発展への分かれ道になるのかもしれません。私たち設計者に出来るのは、日本の材を日本で使うことによって価値が上がるという使い道を考えることだと思います。

最後になりますが、今回お世話になりました三陸木材の皆様、気仙地方森林組合の皆様、山大の皆様、そして松田林業の皆様、貴重な経験をさせて頂き、本当にありがとうございました。


石巻・気仙研修旅行?

2日目の朝、幸いにも天気は晴れ、絶好の見学日和となりました。最初に向かうのは三陸木材高次加工協同組合(以下、三陸木材と略させて頂きます)です。今回、とある助成金の申請のため打ち合わせの場を設けて頂き、三陸木材のほか、気仙地方森林組合と株式会社山大からも数名ずつ参加して頂けました。打ち合わせの後、集成材の製作工場の見学をさせて頂きました。

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皮剥き
皮を剥いて長さで仕分ける機械
最初はやはり材木の皮を剥くところから始まります。山大でも同じような機械を見ましたが、背景に山がそびえていると一風違った趣があり、海でウニを採ってきてその場で食べるような、妙に生々しい感じがしました。

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木取り
製材
剥かれた原木は径によって最善の木取りがされます。スピードは非常に速く、まるで刺身を切っているようです。鋸で木を切ったことのある方ならそのスムーズな動きに驚かれることでしょう。集成材用に木取られた材はラミナと呼ばれます。

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乾燥
並べられたラミナ乾燥炉
ラミナは長さごとで揃えられ、仕分けされて乾燥釜に入れられます。ここで数日に渡り蒸気と熱で材が割れないように乾燥されます。ラミナは比較的断面が小さいため乾燥にかかる日数は少なめですが、それでも3.5日ほど釜の中に入っています。

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捨てるところはありません
皮はボイラーへ
最初に剥かれた皮は天日で乾燥され燃料として使われます。ここで生成されたエネルギーはこの加工工場のみならず、近隣のプレカット工場などにも売られます。

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長くするために
フィンガージョイント
集成材は一般的には最長で6m弱となりますが、ラミナ1枚の長さはもっと短いため、継ぐ必要があります。構造用集成材ではしっかりした強度の出るフィンガージョイントという継ぎ方をします。この写真はイソシアネート系の接着剤で外部使用には向きませんが乾くと透明になるため目立ちません。下の動画では、ラミナは並べられ、横に移動する時にギザギザのカットと接着剤の塗布がなされます。今更ですが、オートメーションという言葉がピッタリな動きだと感じました。

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加熱接着
マイクロウェーブで5分加熱出来上がり
構造用集成材の接着は過熱しながらの圧着となります。従来であれば丸1日以上かかるのですが、レゾルシノール系接着剤の場合はマイクロウェーブによる加熱圧着(要は電子レンジ)で何と5分で完成します。写真左は加熱中、右は終了して出てくるところです。下の写真はイソシアネート系の集成材を加熱圧着する機械で、これは従来の時間がかかるタイプです。
接着剤を塗布して積み重ねる積み重ねた状態で炉に入れる

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接着完了
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接着が完了した集成材です。左の黒っぽいのがレゾルシノール系接着剤、右の白っぽいのがイソシアネート系接着剤です。この状態ではまだ表面ががたがたなので、最後に下の写真の機械で表面を削って規定の寸法に仕上げます。
表面を平滑にする

集成材が出来上がる様子が良くわかって頂けたと思います。これだけ手間をかけて作られた集成材パネルですが、DEWS工法で多く使われる巾45cm、厚さ12cm、長さ5mの壁パネル1本当たりの加工前の単価は2万円弱です。工程を見るともう少し高くても良さそうに思えますが、市場で値段が決まってそれに合わせるしかないというのが現状です。価格を上げるには価値を上げるしかなく、価値というのは、どれだけ手間がかかったかということだけではなかなか上がるものではありません。せめて少しでも価値を上げることに貢献できる設計をしなければならないと強く感じた次第でした。

<?へ続く>


石巻・気仙研修旅行?

プレカット
ここからは工事現場での組み立てに必要な木材加工の工程です。
ここでの工程も基本的にはコンピューター制御されており、加工内容を作図入力するコンピューターと加工機械を制御するコンピューターが連動して全体で機能し、加工の難しい三次元の形状にも対応しています。

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プレカットというシステムが無かった頃は、一本一本大工さんが現場で加工していたのですから、住宅建設業界にとっては、コンピューター制御されたプレカットという技術はとてつもない進歩です。
説明してくださった作図入力をしている工場の方は、使っているコンピューターは非常に高性能で高価なもので、高級車を乗り回しているようものです、とおっしゃっていました。現在の日本のスピーディな住宅建設の現場は、そんな高級車を丁寧かつ迅速に乗りこなす方に支えられていると言っても過言ではありません。(ちなみに作図作業は加工機と連動しているためミスは許されません。スタッフの方のデスクにも高級車をミスなく乗りこなすための自戒のメモがいっぱい貼ってあり、緊張感が伝わってきました。)

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ドイツ生まれのフンデガー

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上の写真は作図された図面をもとに加工を行なう加工機です。その名も「フンデガー」。ドイツ製の機械らしいのですが、いかにもドイツっぽい名前です。色も他に機械に比べて独特で、ミッフィーちゃんやモンドリアンが生まれたオランダのデ・ステイルを思い出してしましいました。ゲルマン人はこういう色彩が好みなのでしょうか。

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少し小さくてわかりづらいですが、写真右に見える小屋の中で作業している方は、フンデガーを自在に操る増子さんです。フンデガーという機械そのものが、日本でも数十台しかないという高性能な機械で、つまりは難しい加工を担っていているのですが、わたしどもの事務所の今までの集成材FM工法の加工もそれを操る増子さんの腕によるところがかなり大きいです。

今回は実際にお会いして、どのような加工ができて、どのような加工が難しいかというお話ができ、実感を持って非常に勉強することができました。

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働く木造建築

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やはりというかどうしても、加工工程だけはでなく工場という建物そのものにも目が行ってしまいます。最近では工場建築というと、構造的合理性や施工性から、鉄骨によってつくられる場合が多いのですが、山大さんの工場はいくつかが木造によってつくられていました。

上の写真は、かなり長いスパンを一本の木の梁で支えているためサイズは非常に大きく、棟木にいたっては梁せいが1mほどもあり、見たこともないようなプロポーションをしていました。若干強引にも見えますが、それだけに木造への強いこだわりを感じました。

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二つ目の写真は、一つ目と違い、細い部材を何本も組み合わせて荷重を分散させながら長いスパンを支えています。

鉄骨が高価だった時代の工場によく見られる構造形式で、細い部材の集合でできているので、一つ目に比べて全体に繊細さがあり、見ごたえがあります。鉄骨でも似たようなかたちの構造形式を見かけますが、よく見ると鉄骨造とはだいぶ異なり、木造らしいディテールが面白いです。

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最後は少し余談となってしまいましたが、今回山大さんの工場を見学し、スタッフの方とも直接会ってお話できたことは、いろいろなことを実際に肌で感じることができたという点で得るものが大きく、これからの設計の上で、特に感覚的な部分で勉強になったと感じております。
ご協力頂きました山大の皆様、本当にありがとうございました。

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<?へ続く>


石巻・気仙研修旅行?

今週の火曜日と水曜日、宮城県石巻市と岩手県気仙郡へ事務所全体で研修旅行に行ってきました。
普段、現場では製材された色々な木材を当然のように目にしているのですが、それがつくられる製造の現場をしっかり目にして体で感じたいというのと、事務所で開発を行なってきたカラマツ集成材を使った新しい工法(DEWS工法)に関する打ち合わせというのが今回の目的です。

一泊二日の一日目は、宮城県石巻市にある山大さんにご協力頂いてプレカット工場を見学。東京から車で約4時間半、道がすいていたせいもあり思ったより早く着いたという感じでした。(わたしは全く運転していませんが・・・。運転手の柳本さんお疲れ様でした。)

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ここからはわたしの偏見も交えながら、山大さんのプレカット工場を簡単にレポートしてみたいと思います。

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縁の下の力持ち

今回見学させて頂いたプレカット工場というのは、主に土台、柱、梁などの構造部材について、工事現場に搬入する前に組み立てに必要な加工を行なうところで、街中で見る住宅建設現場であっという間に骨組ができあがってしまうのも、見えないところでプレカット工場が支えているからなのです。

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山大さんでは皮付きの丸太が角材に製材され、その角材が現場に向けて加工されるまでの工程を見学させていただくことができました。

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無駄無く料理

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製材はまず、表面の皮を剥ぐところから始まります。製材のほとんどの作業がオートメーション化されていて、皮剥ぎは鉛筆削りのような機械で行なわれていました。その際出される大量の皮は、木材を人工乾燥させるための高温釜のバイオマス燃料として利用しているとのことでした。その他の製材時に出される木っ端なども全て、合板や紙類の製造へ利用されているとのことです。部位ごとに使い道を考えて一本の丸太を無駄無く使い切るというお話は、マグロの解体で聞いた話のことを連想してしまいました。

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びっしょりの原木

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実は原木の状態で木を生で観るのははじめてで、考えてみれば当たり前と言えど、乾燥された木材ばかり見ていたわたしにとっては、びっしょりと湿った木というのは驚きでした。また、皮が剥がされた状態での白木の表面はとてもおいしそうな肌をしていて、割いてみたときの感じなどはまるで新鮮な鶏肉のようでした。魅力ある有機体というのは、みんな似たような雰囲気を放つものなのだと感じました。

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カット、集塵、移動、整列

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皮が剥がされた原木はそれぞれのサイズにカットされます。ここでも作業はコンピューターによって制御され、ビュンビュンと加工が進められます。出される粉塵や木っ端も、排出されたそばから大きなダクトで大小もろとも吸い上げられ、所定の場所へ送られます。

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原木の臭い
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カットされた木材は、昼夜休まず数日間高温の釜に入れられ、建材として必要な状態まで乾燥されます。釜の付近では、煙突から出てくる水蒸気で、お芋をふかしたときのような臭いをしていたのが印象的でした。

<?へ続く>