月: 2010年2月

木だけでつくった壁のすごさ

今日、今週月曜日から行っていた厚板壁工法の改良型の板壁の60分と30分の耐火試験それぞれ2体ずつを4日間に渡って、住宅木材技術センターで無事問題なく終了しました。
(厚板壁工法の改良型:施工性向上、一部取替えや解体後のリユース可能にする、新しい工法‐DEWS工法‐)

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試験前の試験体

ほっとしました。
60分じっと見ていて、60分過ぎに燃えている試験体を取り外し、消化作業や試験後の試験体の状態確認までしてきたせいか、家に帰ったら衣類や頭髪が煤臭くなっていました。でもこれで準防火地域でも、この新工法で堂々と外部に木の板壁を現して使うことが出来ます。国交省の技術開発助成金も気兼ねなくいただくこともできます。後は認定を取得して他の設計者や建設会社の方にも自由に使用できる手立てをとれます。

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炉で1000度まで加熱します

10年ほど前、最初に厚板壁工法(FM工法)の耐火試験をした際に、板壁の何でもないところに小さな穴が開いていることが分かったということがありました。耐火試験が30分経過したころ、壁の向こうで燃えて露になったのか、そこから小さな煙が出始め、45分過ぎ頃には向こうの火がかすかに見え出してきたのです。その時には、冷や汗がすうっと滴り落ちていく感じがしました。
その経験のせいか、どうしても「物事はそうそうまくいかないぞ」という思いがいつも自分を引き締めさせ、今回も大丈夫なはずだとは思っていても楽観視できませんでした。

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この向こう側では燃えていますが、こちら側は変化無し

今回、板壁一枚の向こう側では1000度で燃えているのに、炎とは反対側の板の表面に60分経過した頃に手を当てても、むしろヒヤッとするほどで、殆ど温度上昇はありませんでした。改めて木の持つ炭化性能(自己消化性能または耐火性能)だけでなく、他の特性?断熱、蓄熱、調湿、強さ、固さ、加工し易さ、粘り強さ(靭性)、自己保護膜形成性能、炭素固定化性能等の特性について考えてしまいました。

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加熱時間が終了して、炉を開けた瞬間

木の性能の素晴らしさは、性能の“ほどよさ”にあります。
どの性能も建築材料で一番ではありません。断熱性能も発泡スチロールより同じ厚さでは劣り、鉄やコンクリートよりは勝ります。固さは逆に鉄やコンクリートより劣り、発泡スチロールより勝ります。どの性質も似たような程度で、トップレベルではないけど、そこそこのレベルにあるということです。

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燃えた側面の様子

ですが、何より総合力がダントツなんです。これだけ色々にそこそこの性能を兼ね備えた材料は他に知りません。これまで内外装なしの壁を、殆ど木だけでつくった住宅を十数棟作ってきて、それがよくわかってきました。ある意味、全動物の中の人間と同じような位置にあるような気がします。象ほど大きくはないが、ねずみよりは大きい。豹より早く走れないが亀ほど遅くはない。熊より強くはないが山羊よりは強い。

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消火中

実はこの木のそこそこ感が人間の居住空間に最も合っているのではないかという気がします。条件次第で腐るとか、変色するとかの弱点を持っていることが素晴らしいことで、人間的な気がします。しかしこれだけ優れた木の性能を、私たちは十分かつ上手に使いこなせていません。性能のそこそこ感が安易な使用許さず、観察眼と熟練を必要としているせいかもしれません。それと現代人の論理的思考に、すぐそれぞれの性能で最も高いものを求める傾向があります。それが木を使いこなせなくしている気がします。

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消火後の表面の様子

木の性能は西洋医学のような論理的思考より東洋医学のような統合的思考に合った材料かも知れません。なんか難しい話になってきたのでそれはまたこの次に。


月刊ハウジング 2010年4月号

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「月刊ハウジング 2010年4月号」に、”相模原の家”の記事が掲載されました。(P11?13)
表紙の写真にも使われています。

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リクルートから2月20日に発売ですので、現在発売中です。
比較的小さな本屋さんにも置いてあると思いますので、是非ご覧下さい。


MY HOME 100選 vol.6

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住まいの設計編集部から、「MY HOME 100選vol.6 ウチとソトが気持ちいい家」の見本誌が送られてきました。今回も300ページ以上あって、ボリュームがあります。

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空庭舎”の事例記事が8ページにわたって掲載されています。(P132?139)
空中庭園の中庭の写真が、ページ見開きで載っています。
この中庭は、2階なんですよ!このビオトープ池の下は駐車スペースです。

扶桑社から2月25日に発売とのことですので、明日発売ですね。
書店で見かけたら是非手にとってご覧ください。


自治会館 今週の現場

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屋根の折板を固定するためのタイトフレームが付きました。屋根材は、鋼板折板で結露防止に裏に薄い断熱材を貼ったものを予定。屋根が吹き終われば、建物らしくなるでしょう。

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増築部分の床下地になる土間コンクリート工事が完了。来週には壁の下地を組む工事が始まります。
打合せでは、壁紙や床、キッチン設備機器等の色を相談。来週頭には決定予定。


暮らしの様子

一ヶ月点検でお邪魔してきました。
建主さんの要望には、小さなものから大きなものまで、ご家族独特のものがあります。
要望に対して試行錯誤しながら解答を見つけていくのですが、
その積み重ねで、いつの間にか徐々に徐々にその家の個性のようなものが育っていきます。

竣工後、お邪魔してダイニングテーブルにご家族と一緒に座ったとき、
「オープンキッチンにしてこんな会話をしたかったのだな」とか
「ハンモックで遊んだり子供達が走り回るならこのスペースは必要だったな」とか
「こんな家具のインテリアを愉しみたかったのだな」とか
建主さんが思い描かれていたことを実際に拝見させて頂いて、なるほどと妙に納得するのです。
素敵な暮らし方を教えて頂くことが度々で、次の設計の糧としています。

ご近所に住むお母様が良くお花をもって遊びに来てくださるとのことでした。
「花が活きる家」とのこと、大変嬉しいお言葉を頂きました。

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外壁工事完了

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外回りは、デッキ・バルコニー等が残っていますが、外壁の板金工事と左官工事は完了。道路側の漆喰の白い壁が綺麗に仕上がりました。足場が外れて全体が見えるのが楽しみです。

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漆喰壁の白は、なかなか他の方法だと出せない色と質感だと思います。実際に目で見ると、なんとなく上品な感じがする色と質感なんですよね。写真ではなかなか伝わらないのが残念です。

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板金の壁も工事完了。軒樋は、隠し樋になっていて、外からは見えません。樋が見えないので、スッキリと収まっています。


フランスの建築 6 Palais Garnier

チケット売り場を過ぎたあたりはまだ地味

メインの階段

アヴァンホワイエはこの写真の3倍くらい豪華な印象

恥ずかしながら私は今回の訪問までこのPalais Garnierという名を知りませんでしたが、所謂オペラ座です。この建物はオペラの公演用としてCharles Garnierの設計により1874年に竣工しました。設計者はコンペで決まったようですが、実は1等案が無く、佳作6点から選ばれたとのことで、それにも関わらず設計者名が建物の名前になるというのは完成度が想像以上に高かったからでしょうか。今ではオペラよりバレエがメインで公演されているようです。よくわかってないのですが、以前はオペラもバレエもあまり区別されていなかったようです。

内装はまさに絢爛豪華で、特にアヴァンホワイエと呼ばれる部屋の煌びやかさを見てしまうと先に紹介しましたヴェルサイユ宮殿が比較的質素に思えたほどでした。メインの階段なども、上るのが躊躇われるような威圧感があり、現地で少し話をしたコネチカットから来たというバックパッカーの馴染まなさにはマグリットの絵のようなシュールさすら感じました。残念ながらシャガールの天井画が飾られる観覧席はリハーサル中のため見れなかったのですが、あの大空間は鉄骨により実現されており、当時としては画期的だったようです。

訪れたのは昼下がりで比較的観光客も少なく、今回の訪問先としてはかなりゆったり鑑賞できたのでその分印象が強いのかもしれませんが、パリ市内の建築物としてはエッフェル塔に次いで良かったです。今度機会があったらバレエも観たいものです。

お土産コーナーの照明


自治会館 耐震補強・改修・増築工事 鉄骨建方完了

自治会館今日の現場。

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増築部分の鉄骨の建方が終わったので、その確認です。来週には、床の土間コンクリート打設予定。
ホール部分は色々な用途に使えるように広い空間が必要なので、柱間を大きく取れる鉄骨造にしています。

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完成すると、ホール部分が1.5倍くらい広くなります。
ホール以外の部分は、木造で増築します。

既存建物の耐震補強工事は、耐震診断の結果ほとんど必要無かったのですが、鉄骨の溶接技術が30年前と現在では違うということで、一部鉄骨の溶接部分を補強しました。
その他の既存鉄骨は、防錆塗装の再塗装のみです。
今回の耐震診断をして頂いた方によると、大抵の建物は耐震診断をすると、ほぼ100%の確率でかなり補強が必要という診断がでるそうです。
今回ほとんど補強工事が必要なかったのは、30年前の設計(手前味噌ですみません)と施工、そして自治会の皆さんのメンテナンスのそれぞれがうまくいった結果ですね。


築30年の建物の耐震補強・改修・増築工事

所長の藤原が、約30年前に設計監理した自治会館の耐震補強・改修・増築工事の現場打合せ。

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既存建物の鉄骨材の防錆塗装工事や、増築部分の基礎工事が着々と進行中。
既存屋根の鉄骨材に防錆塗装するのは、高い所で上を向いての作業になるので大変です。
塗装屋さんご苦労様です!


くつろぎの水廻り

戸神台の家では、2階に浴室、トイレと一体の洗面脱衣室、洗濯機置場の水廻りをまとめて設けています。脱衣室で洗濯物をまとめて、洗濯して、南側バルコニーで物干するまでが最短距離という便利な導線です。
通常、洗面脱衣室は必要な収納や鏡を設置すると明るさに十分な大きな窓がなかなか確保しにくいので、浴室に大きな窓を設け、洗面室と浴室をガラスでつなぎ、広がりと採光を同時に確保するようにしています。

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建主さんのくつろげるお風呂への特別なご要望もあって、浴室は十和田石とヒノキ貼としました。ヒノキ貼の天井は洗面室側にもつなげ、照明器具は天井につけずに、白い壁を照らす間接照明としています。

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収納も天井にあわせて木の素材としました。洗面室の床は足ざわりの気持ちの良い籐タイルを敷いています。建主さんが吟味を重ねて決定された洗面カウンターの黒がとてもよいアクセントとなっています。

遠くの木々を眺められる浴室の大きな窓は、外側に日中は内部が見えないフィルムを貼っています。竣工時に外から見えないことを確認して、奥様も入浴を楽しみにされていたのですが、ブラインドを開け放しての入浴はまだ未体験・・・とのことでした。