月: 2012年12月

森の貯金箱事業

今、釜石森林組合と岩手県森林組合連合会及び、遠野市のリンデンバウムという工事屋さんと、森の貯金箱事業を展開しています。
そのいきさつは、昨年の東北大震災の被災者用応急仮設住宅の建設以降、そこで提案した工法(その後FSB工法と命名)が、岩手県森林組合連合会の方の目に留まり、盛岡市が寄贈する被災地の仮設団地の小さな集会所の建設工法として推薦され、山田町、大槌町、陸前高田市の集会所の建設に、設計者として協力したことから始まりました。

最初の仮設住宅の内部写真と下の内部写真を比較していただくと分かるように、同じ杉角材の内部表しの表情も、この集会場のように、必要なら節の少ない材を集めた仕上げにすることもできます。一軒の住宅のうちで、節があってもいい部屋と、きれいな表情にしたい部屋とを、上手に使い分けると、全体的にあまり価格アップにしないで、満足のいく仕上がりの家にすることも可能です。

このような集会場を作っているときに、さらに、釜石地方森林組合の方にも、この工法が森林整備を促す可能性があるということで、組合の事務所の建設に際しても、この工法が推薦され、設計者として協力することになりました。
というのは、釜石の森林組合の4割の組合員の方が被災され、その再建住宅をこの工法で格安に作ってあげられないかとのことでした。その試験的意味もあって、まず組合の事務所を一階に、モデル住宅を二階に作りました。
それにはわけがあって、今、岩手県の森林整備を行おうとすると、丸太の1.5割がA材(建築用材)、7割がB材(合板用材)、1.5割がチップ材として産出されます。それが、今回の震災で岩手県にあった二つしかない合板工場が被災し、一社の合板工場は廃業し、宮古の工場は3割操業に追いやられてしまいました。それで今、B材の行き場がなく森林整備が滞っています。そのために釜石の森林組合はそのB材を、石川県や静岡県の合板工場まで運んでいる状況です。
それで、通常の木造より3から4倍の木材を使用するこの工法で、格安に住宅ができれば、今後必要とされる再建住宅に採用され、行き場のなくなったB材の活用の道を開くことになります。それで森林組合の事務所の二階を展示場にして仮設住宅で暮らしている皆に、見ていただこうと言うことです。

この工法での住宅の建築は、通常の在来工法で木材を約13立米使用する所を、約45立米使用することになり、それは1ヘクタールの森林整備をすると、産出する木材製品の全てに相当する量とのことです。森林整備をしない森と、した森とでは、その後約十倍の二酸化炭素の吸収固定量が違ってくるそうです。さらにその使用した木材を建築部材として、二度三度と使っていける工法にすることで、木材の生長期間以上に、二酸化炭素を固定し続けることになります。それによって始めて、木造での建築行為が環境の負荷削減に貢献できることになります。

この工法をFSB(forest stock in building)工法と名付け、この工法を活用する活動を、森の貯金箱事業として岩手県の森林組合連合会を中心に、釜石地方森林組合、工事施工を遠野のリンデンバウム、設計を結設計で、進めていこうとなりました。その延長でFSB工法の規格型住宅をいくつか考え、価格を決め、パンフレットも用意しました。それで、月一程度、釜石に定期的に通い、仮設住宅から見にこられた方々に説明をしてきました。11月頃、殆どの方に説明が終わり、一段落しました。今後、私は必要な時のみ行くことになります。これまで3棟程注文があり、来年工事が始まります。

森林組合の事務所の建設途中、この工法の壁パネルを活用して、遠野市や盛岡市のイベントで使用する子供用の滑り台を製作することになり、それもFSB工法で設計しました。イベントはさほど盛り上がらなかったのですが、滑り台の方は子供たちに大人気でした。この滑り台は、その様子を見ていたイベント関連の方から、新たな注文を年内だけで、二台も頂いたそうです。

暮れには、KDDIの社会還元事業で、釜石のバス停留所の屋根つきベンチを数
箇所寄贈するもので、FSB工法のパネルでつくりました。AU携帯電話器のマニュアル本を回収し、それを再生紙にすることで得られた利益を社会還元する事業ということで、KDDIの広報誌に小さくその写真が載っていました。

釜石に通い、仮設住宅に入られている方と色々話をさせていただきました。殆どの方は、自分の持っている土地は流された場所で、建築出来ない土地になっています。そのため自治体が交換地として供給する、山を切り崩した、高台造成地が出来るまで建てられないでいます。その造成計画も中央官庁が中央のコンサルと進めている状態とかで、遅れていて、「早く出たい!」という仮設住宅の住人の切実な声には、身につまされます。しかも、今、被災地では建設費はどんどん上昇していて、バブルの様子を呈しています。いざ建てられるときには、現在の何割増しになっているか計り知れません。理不尽の極みです。だからといって嘆いていてもしょうがないので、被災地だけでなく、関東いや全国どこでも、一般の建て主さんはもちろん、建築やさんにも、FSB工法で建てたいという方がいたら協力して、下のキャッチフレーズの元、広めていきたいと思っています。
「貴方が作る一軒の住宅が、1haの森林整備を促し、環境負荷を削減します。」
参考までに、35坪程の住宅一軒を、FSB工法で建てていただけると、35~45m3の木材製品を使用することになり、1ヘクタールの森林整備を促し、40年で約30から40トンのCO2の吸収固定を増進させることになります。それで建築だけでなく、様々なものにも提案し、実践していく、「森の貯金箱事業」を森林組合の方々と一緒にやっています。藤原昭夫/結設計


配筋等検査

先日、事務所の配筋検査を行いました。
鉄筋の種類や間隔、かぶり厚さなど諸々の事項が図面通りに施工されているかをチェックしていきます。

今回の住宅には、基礎蓄熱暖冷房を採用しています。
写真に写っている白い管は蓄熱暖冷房用の配管で、この管に温水(冷水)を流して基礎のコンクリートに蓄熱させ、輻射熱により暖冷房効果を得るという仕組みです。
この配管も図面通りに施工されていました。
加熱面に直接触れないので床暖房のような直接的な暖かさとは違う感覚になります。
また、輻射熱により空間が全体的に暖まるため、部屋と廊下、トイレなどの温度差が少なく快適に過ごすことができます。


FSBパネル構造試験

先週、結設計で開発しているFSB工法用の壁パネルの構造試験をしました。
以前のパネルから、より強く、より安くを目指して改良したパネルです。
パネル上部に横から、押して引いてと繰り返し加重していきます。
FSB工法のパネルは、これまで何回か構造試験をしながら改良してきたので、DEWS工法の時ほどはハラハラしないで見ていられました。
試験結果も予想していたより数字が良いので、ほっとしました。(詳しくはデータの解析待ちです。)

ちなみに今回の構造試験は、以前にもDEWS工法の構造試験をした場所と同じ場所でした。


木工事突入

Fマンションは先月の初旬に躯体工事を終え、今度は大工さんの出番となりました。
躯体工事は天気に左右されるところが大きかったので、工程の調整が難航しました。
今後は屋根がかかり、主に内部の作業になるので天気の心配はそれほど無くなり、現場監督さんは要領よく各業者さんの工程を組んでいき、大工さんにも頑張ってもらい巻き返しを図ります。

Fマンションは各住戸全て賃貸形式で、建て主さんといっしょにプランを考えてきました。
最上階の3階は法規の北側斜線により、どうしても斜めになってしまう部分があります。
最初は、よりデッドスペースを少なくと収納にしていましたが、建て主さんから「法規により削り取られてしまう欠点を魅力にして、借りたくなるような部屋にしたい」というお話からLDKにしてキッチンを配置するプランに変わり、魅力的な部屋にするべく挑戦しています。
斜めなので、通常の既製品のレンジフードが必要な場所に取り付けることが出来なく、手元から煙や湯気を吸い込み壁の下部から排気する換気扇で計画していました。設備屋さんと詳細を検討していくと、メンテナンスを考慮すると複雑な構造になってしまい、躯体も補強筋が多く入っている場所である等から断念し、躯体の形に合わせたレンジフードを製作して上部に取り付けることになりました。

上部にレンジフードが付く→トップライトの躯体形状変更→梁が干渉→逆梁に変更→鉄筋屋さん納まり検討OK→トップライトを既製品から製作にして寸法の融通がきくように→より強度のあるガラスに変更→ガラス屋さん耐風性など強度検討OK→金物屋さん開口廻り金物の形状検討→防水面検討OK などなど、現場監督さんはじめ各業者さんと打ち合わせを重ねていきました。
最終的に開口部は最初の計画よりかなり大きくなって、天井からスパッとそのままトップライトにさせることにより、とても開放的で見晴らしの良い部屋になりそうです。