高低差のある土地の計画 鎌倉編②


鎌倉市にある敷地は、区画内に段差があり、その高低差は2mを超える部分もあります。この敷地で建物を計画するポイント、▶『高低差のある土地の計画 鎌倉編①』に続き、今回は擁壁についてのポイントです。

ポイントその2の前に

そもそもよく登場する2mとは、どこから出てきている基準なのでしょうか。

ひとつは、第1条に『この法律は、宅地造成に伴う崖崩れ又は土砂の流出による災害の防止のため必要な規制を行うことにより、国民の生命及び財産の保護を図り、もって公共の福祉に寄与することを目的とする。』と示されている宅地造成等規制法によるものです。つまり、宅地造成による崖崩れや土砂の流出による災害を防止するための規制を行う法律です。

↑ 宅地造成等の規制がかかる区画形質の変更
/神奈川県HPより

今回の土地は、この法律がかかる宅地造成工事規制区域内にあることから、宅地造成等規制法施行令第3条にある

『切土であって、当該切土をした土地の部分に高さが2mを超える崖を生ずることとなるもの』

『盛土であって、当該盛土をした土地の部分に高さが1mを超える崖を生ずることとなるもの』

『切土と盛土とを同時にする場合における盛土であって、当該盛土をした土地の部分に高さが1m以下の崖を生じ、かつ、当該切土及び盛土をした土地の部分に高さが2mを超える崖を生ずることとなるもの』

 

等の土地の形質変更への規制対象となり、この中の切土をした土地の高さが2mを超える崖となる”2m”です。これらの地表面が水平面に対して30度を超える角度をなす崖に対する切土・盛土に対する行為を行う場合は、法第8条により、工事の着手前に都道府県知事の許可を受けなければならず、申請を要します。

 

ふたつめは、建築基準法による高さ2mを超える擁壁です。建築基準法第88条工作物への準用により、施行令第138条に記される工作物は法第6条の確認申請を要します。この中の、施行令第138条に高さ”2m”を超える擁壁が含まれています。

当然のことながら2m以下でも安全なものを計画しなくてはなりませんが、”2m”を超えた場合は諸手続きによる時間を要し工程に影響がでてきます。

これらを踏まえて・・・

高低差のある土地 の計画 ポイント その2・・・「 擁壁 」 
宅造許可申請必要?不要?

今回の対象地は、鎌倉山地区自主まちづくり計画の区域内のため、本計画書内で『建築物の壁面から敷地の境界線までの距離は、神奈川県風致地区条例に規定されているとおり、道路に接道する部分で1.5m以上確保しましょう』と記されています。
この壁面後退は、境界線から建物の外壁面を後退させる必要があることを意味しており、階段手摺はセットバック後の新たな道路境界線から1.5m以内にあるため、こちらは擁壁にせざるを得ません。
解体前の建物は、前面の道路と敷地の地盤が2mを超える箇所を有するアプローチ階段だったことから、同様の計画の場合は前述の許可申請が必要となっていました。しかしながら、今回は前面の道路が最も高い位置でアプローチ階段の曲がり部を設定したことにより、2mを超える箇所は発生させることのない計画となりました。

さらにアプローチ階段としては幅員に余裕があったことから、道路際に植栽を植える花壇を設置しました。また、ここに散水栓を設けたことで車庫部分までわざわざ水栓設置のための配管することなく洗車等に利用できる水も確保することができました。建て主との、この花壇の計画により道路と敷地地盤面の高低差も緩和されています。

今回2mを超える擁壁とはなっていないため、擁壁のための申請は不要となっていますが、申請が必要になった場合は、擁壁の構造計算書の添付が必要となります。または神奈川県内の八市で構成されている開発許可研究協議会における鉄筋コンクリート造擁壁の取扱基準に準じ、その型式をそのまま採用した場合は構造計算書が不要となります。
こちらは2m以上に限らず擁壁の標準構造図が設定されており、型式や高さ、土質を選ぶことにより擁壁の仕様を決定することができ、かなり安全な構成になっています。

 

高低差のある土地は、計画方法により建物の新築に必要な確認申請とは別に、場合によっては確認申請前に数か月かかる申請が必要となる場合があるため、着工までの申請スケジュールには余裕をもっておくことをお薦めします。

竣工後の様子は設計事例でご確認ください。『鎌倉借景の家』

土地高低差+2階リビングによる借景リビング

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ポイント その1:▶高低差のある土地の計画 鎌倉編①
 

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