無垢厚板壁の家の熱帯夜での睡眠 ~十年前の建主さんからのお便り1

関東都市部に住宅を建てられた建て主さんから、最近の高騰する電気代、太陽光発電の設置、エコキュート、基礎蓄冷熱設備、建物の蓄熱性、等々のご相談から始まり、最近の寝室のエアコンや熱帯夜の睡眠に関連して、まさにタイムリーな相談メールを頂きました。

木の無垢厚板壁(120㎜)で作られたFSU工法の蓄熱性と、基礎蓄冷熱設備との相性は設計者としては抜群と思って設計していますが、10年住まわれた建て主さんからの生の声が届きましたので、私がくどくど説明するより的確な思考をされているので、ここで紹介させていただきます。

(基礎蓄冷熱設備とは、基礎にパイプを配管しておき、夏は冷水、冬は温水を流して基礎に蓄冷熱させる方法です。末尾写真参照)


「結設計様、ご無沙汰しております。S市のA・Nです。

さて、7月より東電の電気代プランが変更となり、とうとう深夜電力が日中の電力とほぼ同じになります。時代が変わったと感慨深く思います。

当家が設計・建設された2011年当時は東日本大震災の直後ということもあり、まだ深夜電力プラン+エコキュートは有効でしたが、10年以上経過し、原発停止・化石燃料高、CO2削減の潮流には逆行した状態となり、化石燃料を使った発電で深夜にお湯を貯めるという行為が、ある意味時代に逆行している事になってしまいました。
(特に冬は一番お湯を使う夕方のお風呂の時間に温度が下がってしまっている)

元々2011年当時でも太陽光発電は話題になっていたので、当時も導入の検討はしましたが、結設計様がブログであげているとおり、太陽光発電パネルの技術革新のスピードや設置手法における屋根へのダメージなどを考えると前向きにはなれないという、藤原さんの話もあり、屋根自体は太陽光発電に最適な形状ですが、実際には載せなかった、というところです。
またエコキュートも12年ほどが経過し、近隣の家でもだいたい15年位でどこか壊れる、というのを見ていると、設備更新の時期とも言えます。

話は長くなりましたが、結設計様でのノウハウも蓄積され、ころあいかなと思いますので、太陽光発電設備増設+エコキュート更新を計画したいです。こちら結設計様に依頼すれば、業者の手配等お願いできるものでしょうか?それとも工務店さんに依頼するものですか?教えて下さい。
当家は基礎の蓄冷熱暖房を建築時に導入しているため、自家消費で電気が惜しげもなくフルに使えるとなると、様々な最適化ができそうな気がしています。急ぎませんので、お時間あるときにアドバイスいただけたらと思います。

話は少しズレますが、暑さが厳しいこの頃ですが、木の無垢材の調湿力には改めて感心しています。
一階は基礎蓄冷熱設備の効果がモロに出ますので、基礎蓄冷熱設備と除湿機を稼働させると、真夏でも非常に快適な状態になりそうです。
というのも、今までは昼間は電気代のことも頭にあり、基礎蓄冷熱設備はタイマー稼働にして昼間は稼働させていませんでしたが、7月からほぼ電気料金の時間差がなくなったこともあり、24時間稼働させたところ、一気に快適になりました。

深夜時間のみ除湿機を稼働させていますが、毎日タンクは満タンになります。
2日ほど除湿機が稼働すると、空間は更に心地よくなった気がします。木の無垢材が貯めていた水分をだいぶ吸い取ってあげて保湿の余力をもたせられたかな?と思っています。
1階はまだエアコンなしでやれていますし、エアコンをつけないで寝られるのはなにより快適です。1階で布団を引いて寝ている次女が、明らかに涼しくなって快適になったとびっくりしていたので、その通りなのでしょう。
S市という、標高が低い土地の家としては、湿度のコントロールによる空間の快適さはなかなか得られないものだと感じています。

奥が子供室で、窓のある外壁が無垢の厚み120㎜の板壁です。

2階は、どうしても屋根材がガルバリウム鋼板で、現しになっていることから、屋根に断熱材をだいぶ入れているとはいえ、夏の日光が当たると2階全体に熱気がこもっていました。
なので2階の子供部屋やリビングはエアコンを稼働せざるを得なかったのですが、これも太陽光パネルが座れば、ガルバリウムを覆う遮熱材としての役割も持ちつつ、電気を生み出し日中の消費電力を気にしないでエアコンを稼働させることができ、さらに1階の基礎蓄冷熱設備&除湿機の連続稼働+エコキュートが太陽光発電で実現できれば、システムとしてはほぼ完璧になるのでは、と思っています。

まだ想像の域ですが、木の無垢材の特徴を最大限発揮できるようなサポート機器が、電力の心配なくフル稼働したらどうなるのか。建築から10年が経ち、また楽しみができています。A・N 」

私共は意匠設計の事務所ですが、デザインがすべてとは考えてなく、居住性能の調湿機能や木の無垢材を使ったFSU工法やFM・DEWS工法(集成材工法)など、構法の躯体の持つ蓄熱性能等まで、フル活用して、住生活をいかに豊かにするかを、建て主さんの希望に触媒的に働きかけながら実現できればと考えており、それにぴったりなメールの内容でしたので紹介させて頂きました。

続く 熱帯夜 にどうぞ快適な睡眠を!

べた基礎底盤の鉄筋に架橋ポリ管を配管し、そこに温(冷)水を通して蓄(冷)熱します。
熱源は手前二台のエアコン室外機と同様のヒートポンプの大きめの室外機から分岐して配管します。(写真は他の家)

次回は、ソーラー発電設置の相談内容について、私の返信を含めたメールのやりとりを紹介したいと思います。