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子供の勉強場所

子供の勉強をどこでさせるか,というテーマは家を建てる時の設計の重大関心事です。何度か試みて、子供が小学低学年の頃は親の目の届くところで出来るようにしてあげるのは一つの回答のようです。以前安孫子の家などでは二階の階段室に設けた例もありました。

先日一年点検で伺った家では、小さな吹き抜けに面して、子供室に行く二階廊下に設けたところ、とてもいい雰囲気で活用されていて、思わず、お願いしてブログ用に写真を撮らせていただきました。

脇には本棚、その奥には洗濯機置き場と物干し場、それをたたむ家事机を配しています。

その手前には、パソコンコーナーもあります。

そこの机からは、小さな吹き抜けを通して一階の居間食堂も見えます。

最近はパソコンコーナーは必須で、それに付随して子供の勉強スペースを設ける例が多くなってきています。階段室はよく活用させていただいています。相模原の家でも階段室の途中にパソコンスペースを設けています。

尚、その「相模原の家」の屋根などが、今月発行されたエクスナレッジ出版の「最もくわしい屋根・小屋組図鑑」という専門家向けの技術書の中で、他のたくさんの設計者たちの事例の中に、私共設計した4件も一緒に取り上げられています。

リノベーション事例、ご自分でも考え、現地比較してみませんか

 

今回は、ビフォアアフター風に、楽しい内覧会を企画いたしました。

リノベーションは住まいの溢れかえる“もの”を何とかしたい、と考え始めることが多いものです。今回の計画も大量の本と暗くすみにくい家を何とかしたいというところに、防衛省の防音工事助成金等を上手に活用すると1000万円近く出そうだということで、40年前に建てた住宅の内部も、もう1000万円足して生まれ変わったように新しくしたい、ということで始まった計画です。生まれ変わったようにするには、何に着目してどう計画したかを推量していただけるよう、敢えて片づけを放棄した段階での古い写真を、建て主さん了解のもと、使用させていただきました。
まずは居間に溢れ変える本と本箱、でもこれはほんの一部でした。尋常な手段だけでは収まりません、何か特殊な手を打たないと行けません。

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下の写真はテレビのある居間ですが、北側の窓からは多少の光と冷気が入ってきて、南には窓がなく日中全く日が差さず、暗くて閉鎖的です。これも根本的なところからかえないといけません。当然耐震改修も考えなければならないようです。

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同じような状況のキッチンです。7.5畳と広さは十分ですが、食卓を置くには狭く、このままでは使いにくく、閉じ込められた空間で何とかしたいところです。

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同じ洗面所と洗濯機置き場です。窓側に洗面台を置くと鏡で窓が塞がれ、鬱陶しい洗面所になるということで、脇の壁際に置いていますが、やはり使いにくく物で溢れかえっています。何とかしたいです。

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同じくリフォーム前の浴室で、40年前にはよくあった内焚き釜ころのままのです。たぶん土台もだいぶ腐っていると思われます。まさに一新したい浴室です。できれば朝風呂もできるよう明るく、窓から樹木でも眺められたら最高です。

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ベランダを後付で足した以外殆ど変えていない外観写真です。後付けのためベランダを瓦の上に置いたため、二階の部屋からは50センチ程段を上らないと出れません。そのため殆ど使っていません。樋も外れて雨が溢れ出ます。屋根の形もすっきりせず、何度か外壁の塗り替えだけはしたものの、一階窓上の染みなど、気になるところが多々あります。

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他に玄関も狭く使いにくく、二階トイレには手洗いも欲しく、寝室もすっきりさせたいです。一階トイレの和風便所も何とかしたいところです。とにかく冬は床下から底冷えする程寒く、ファンヒーターを焚きっぱなしで、空気も汚れ、光熱費も馬鹿になりません。予算は無尽蔵にあるわけでなし、何から何まで直していたらきりがありません。子供達の部屋はもう大人だし、二人の娘は外に出て暮らしているので、帰って来た時に泊まれるようになっていれば良いと考えているとのことでした。

このような住宅はどのように変えられるものか見てみませんか。正直新築よりリフォームの方が難しいと言われていますが、全くその通りです。設計者によっても内容や雰囲気に大きく違いが出ます。ためしに皆さんも自分ならどうリフォームするかを考えてみませんか?7月30日に予定しているリフォーム後の内覧会前に、皆さんも下のリフォーム前の平面図でリフォーム計画をして見て下さい。その方が内覧会を楽しめること受け合いです。下の平面図を自分なりにリフォーム計画し、その平面図(スケッチ)を私どもに送っていただければ、当日講評アドバイスいたします。あるいはご自宅の平面図のリフォーム計画も周辺や内部写真と一緒に送っていただければ、私どもなりにそれにもアドバイスもいたします。

市川邸ブログ用図面

こちらより計画用の平面図を印刷し、計画してみて下さい。

内覧会では、防音工事助成金は活用次第で、使用できる金額が大きく違ってくることや、防音工事関係者達は独特の村社会を形成していて、慣れない設計者や工事屋さんは極めて入りにくく、戸惑い失敗させられることが多いこと、大量の本の収納の方法、既存住宅の断熱化の難しさ、リフォームでの抜本的暖房工事など、リフォームだけではない盛りだくさんの話も予定しています。

内覧会情報                                                                                                            日程:2016年7月30日(土)                                                           場所:小田急線 南林間駅 徒歩5分                                                      場所・時間等の詳しい情報はお申込み頂いた方にメールでご連絡させて頂きます。                                     こちらの事例案内申し込みフォームよりお申し込み下さい。

周辺の視線を避ける平屋建ての住まい

最近ブログや事例紹介がご無沙汰していて、親しい方に心配されました。紹介したい事例や、書きたいことはなくはないのですが、私どもの設計は要領が悪く時間がかかり、ブログどころではなく、待たれている方の業務を上げなければと思っているうちに、時は待ってくれずご無沙汰している次第です。事例紹介も、そんなことで撮影の機会を逃してしまい、今年の初夏にいくつか予定していて、でき次第アップいたします。ご容赦を。
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そんななか、上の写真が一か月点検が半年点検になってしまった住宅です。その外回りをちょっと紹介します。設計では、日照確保や断熱性能と同じぐらい、周囲からの視線をどう避けるかをかなり重要と考えています。この住宅のコンセプトはまさに、「周辺の視線を避けた平屋建て住宅」です。玄関の右隣の格子壁が自転車置き場、左隣奥の格子壁が布団干し場です。154
上の写真の左の格子壁も風の通る仕掛けの洗濯物干場の囲いです。
5月頃撮影を予定していて、済み次第事例紹介させていただきます。

防音改修工事

結設計に住宅を依頼されるお客様がよく希望されるのが居間などの空間によく使っている小幅板天井。この小幅板天井は事務所のホームページの研究開発業務にも記載してありますが、連続する美しさだけでなく様々な音が反響しあう家の中の音を吸収する役割を持っています。それによって余計な音が吸収され、より会話などがクリアに聞こえるのです。

そんな日常生活空間の音にもこだわる(?)結設計の事務所では、最近新しいコンポを買い、スピーカーを変えての聞き比べ大会が開催されています。001

コンポもスピーカーも高価なものではないですし、私自身そんなに耳が良いわけでもないのですが、やはり意外と違うものです。オーケストラなのかピアノなのか歌なのか、クラシックなのかジャズなのかジャンルによっても違いがハッキリでたりでなかったり。そして意外と空間によっても違いがでるものです。ラジオしか流れていなかった結設計の事務所にオーケストラが流れる新鮮な日々です。

そんなお昼のランチ時間は音響環境で話題が持ちきりの中、最近計画が始まったのが防衛相の補助金を使った防音工事を含む戸建住宅の改築計画です。指定された区域の防音改修工事の費用が100%(上限あり)補助されるこの補助金を利用し、同時に耐震改修工事とリフォームを行う計画です。何度かお宅へ伺っている際に実際に飛行訓練のタイミングに遭遇したのですが、地響きがして会話が止まってしまう程の音でした。この音をどこまでシャットアウトできるのか。

もう少しで計画が固まりそうです。

設計者が違うと同じ住戸もこんなに変わる!−間取り編−

最近リフォーム等の相談が多くなり、世間のリフォームの実態が明らかになってきました。不動産会社や家電メーカー等、非建築領域の職種が進出し、よく考えてない提案が平気でされているようです。多くの商品から選ばせる物販の仕方を住戸のリフォームでもしているようです。

リフォームは物販と違って、依頼者の住戸は一つしかなく、提案されたものしか選択肢はありません。リフォームを依頼する方も、他にもっといい提案があるように思いながら、知識も情報も少なく、よく想像できないまま、今よりましになるならいいかと、提案された案で妥協されているようです。設計を生業としている者からすると、最善でないとわかるような提案をする設計者は許されない、と思ってしまいます。ここでは依頼される方もしっかりした目を持っていただきたく、設計者が違うとこうも住戸が違ってしまうと言う事例を取り上げます。許せないという感情が多少入ってしまいますがご容赦ください。

家づくりを考える際、一般的には、専門の設計者にまで頼むまでもない、そんな格好いいものでなくていいから、あるいはどこが良いかも分からないから、工務店付属の担当設計者でいいと考える方が殆どです。私たち設計者からすると、病院に来ているのに、専門の医者でなくて、看護士さんの処置でいいです、と言っているようなものです。特にマンション住戸等の改装では外壁が決まっているため、誰がやっても同じだろう、自分の考える通りにやってくれればそれでいい、と考えがちです。 そこで、設計者がプラスアルファーを提示してくれる職業と考え、自分にはそこまで必要ないと言う方に、それだけではなく、むしろ気付かないマイナスをリカバリーしてくれる職業でもあることを示してみようと思います。

あるマンション住戸の改築を例に、あまりに当たり前のことなので、強調する程のことではない、と普段口にしていなかった設計内容の意図を、敢えて例示しながら、そのことを紹介してみます。美醜や好み等、人によって判断が分かれるデザイン的な要素は一切取り上げず、誰もが必要で当然と思える機能のことだけに限定して比較します。 下の図面は賃貸住宅の401号室と402号室の間取り図です。401号室にオーナーのご子息家族(夫婦と2歳の男の子と一歳に満たない女の子の4人家族)が住んでいます。4人で住むには手狭になり、402号室と壁の一部を刳り抜いて繋げられないかと相談され、構造計算上余裕があるので可能ですと答えました。 floor_plan_a それで、奥さんがある大手の電気店のリフォーム部門の設計者に書いていただいたのが下の間取り図です。 floor_plan_b 気なったところを挙げていきます。

1、子供が男の子と女の子の二人なのに一部屋で過ごさせようとしています。たぶん二部屋必要になったら、リビングを子供室にするか、親の寝室にしようということなのでしょう。そうなるとクローゼットが遠くなります。テレビの置き場はどうなるのでしょうか。

2、間取り図に食卓やテレビ等各家具が、どの程度の大きさのものをどこに置くのか明示されてないので、数年後が気になります。あるいはその時は新しいマンションに引っ越せということなのでしょうか。それはずっと賃貸住宅を転々とする住居の考え方で、それはそれで一つの考え方です。しかし内装をこれだけ全面改装するのですから、それなりに工事費もかかり、出ていくときの復旧費も必要になります。改装に投資するなら長期間使用続けられるように、よく考えないと費用の無駄使いになります。

3、ベランダのある側が南ですが、提示された設計は、日中いない子供室と寝室に長時間陽射しを入れて、滞在時間の長いダイニングには朝の短時間しか陽が入りません。リビングが寝室か子供室になったら、その度合いはさらに増します。その場合さらに狭いダイニングのみになり、キッチンも北側の小窓しかありません。最近、年頃になった子供が自分の部屋に閉じこもってばかりいる、とよく問題にされます。なのに、このように子供室は広く陽当たりの良い部屋で籠りたくなる部屋にし、家族皆が居てほしいダイニングは、狭く居心地良いとは思えない空間でいいのか気になります。

4、キッチンの幅も狭く、子供が年頃になり食欲旺盛な年代になっても、厨房関係の配膳台、食器戸棚、食器乾燥機(棚)電子レンジ、炊飯器、ポット、トースター、ミキサー、等々の置き場は十分確保されてあるのか不安です。 5、当面、親と子供たちは布団を並べて寝ているというのに、大きいクローゼットはあっても押入れはクローゼットの奥にしか置きようがありません。 6、キッチンの幅や洗面化粧台の幅は狭い割には、これから工事しようというのに、その脇に中途半端な埃溜まりスペースが余ったようにあります。下足入れの長さの少なさも子供が大きくなった時を考えると、靴の収納量は足りるのでしょうか。玄関から見えるトイレの入り口で、大きくもできず不安になります。

しかし、確かに他の人が作った計画はいかようにも批評できます。それで対案として考えられるのが下の間取り図です。 floor_plan_c 上の案で気になったところは殆ど何とか解決しています。 1、子供室は一人4.5条と多少小さくなりましたが、将来クローゼット等で仕切り、独立した二室にできます。子供が小さく一緒に寝ている間は子供室二部屋分を寝室にして、予定の寝室は子供の遊び場や泊まり客の寝室にもできます。そのためウオークインクローゼットはどちらからも使えるように廊下が入り口になっています。子供室の押し入れは奥行きを少し深くして夏冬入れ替えられるように、二列のクローゼットにもできるようにしています。寝室用の押入れは居間との境の廊下に面してあり、どこの部屋にも運べるようにしています。 2、リビングとダイニングはもっとも長い時間、陽射しが入る位置に、広くはありませんが、食卓、ソファー、テレビ等それぞれ必要なスペースを確保してあります。 3、その上で、キッチンは最も規格品の種類の多い幅が250㎝のタイプの対面式で、しかも奥行き30㎝、高さ1.15㎝のカウンターを設け、その下30㎝分流し台の奥行を広くしてあり、見せたくない洗剤等をカウンターで隠して置けます。その下は食堂側から使用できる食器棚になっています。食卓も6人がけがゆったりおくことができます。テレビも十分距離をとったソファーからだけでなく、キッチン仕事しながら一緒に観ることができます。キッチン後ろに、高さが70㎝のが配膳台収納、上が食器用の吊戸棚で、間の50㎝の空間に電子レンジ等、様々な機器類を置けるようにしてあります。流しの排水は、西側の壁際の床を必要な分だけ持ち上げ、浴室下を通してパイプスペースの縦管に繋げます。レンジフードからの排気も同様に既存のダクトに繋げます。 4、洗面台も少し広めのものにし、洗濯機との間に仕切り板を腰高に設けることで、洗濯機が気にならなくなり、後ろにはタオルや下着等の洗面所専用の収納も設けてあります。玄関からの廊下に本棚や予備の収納を置くスペースを設けてあります。場合によってはその収納を上下だけにし、その間をパソコンを置くスペースにすることもできます。

これらは、依頼者に要求されなくても、考慮に入れるべき設計作法の一部です。 好みなど、主観の入らない間取りだけでもこれだけの違いがあります。費用増もせいぜい401号室と402号室を繋ぐ開口部が一つ多くなった分ぐらいかと思われます。キッチン周りを充実させてある分も多少増になるかもしれませんが、不要であればやらないでも済ますこともできます。むしろ食卓の西側の壁際に奥行30センチほどの引き戸付きの棚を食卓の高さに合わせて置くと、若干の費用増にはなりますが、より充実し余裕も生まれ、パソコンコーナーにもなります。

設計者と一緒に計画するということは、その他にも現状で結露の有無によっては断熱性能の向上、照明の内容やスイッチの位置、設備機器の機能内容やデザイン、部屋の色や素材構成、空間デザイン、様々な選択肢を提案してもらい、検討しながら進められるということです。たとえば空間デザインの要素になりますが、提案したリビングダイニングの東西の壁は、何もおかずに広く大きな壁にしてあります。それによってその空間に落ち着きとゆったり感を生み出すはずです。でもこのようなことは、殆どの方は気が付かないと思われます。大手のリフォーム部門で提案された間取りで暮らした人だけが、その違いに気が付くのかもしれません。設計者としては寂しいことです。 さらに、気が付かないかもしれませんが、提案した間取りですと、工事期間中、401号室にそのまま住み続けながら、402号室の工事ができ、402号室の工事が終わったら、そちらに引っ越して、401号室を工事し、工事期間中、他に部屋を借りる必要がありません。その費用分を設計料にあててもお釣りがきます。設計を生業する者なら誰もがそこまで考えることです。

中古物件の評価

住宅は完成した時がすべてではない、とよく言われます。
通常は長く住み続けられることを大事に考えないといけない、という意味で使われる言葉なのですが、全く考えていなかった方向から、その真価が問われることがありました。先日私どものところに相談に見えられた方に、どこで私どもを知りました?とお尋ねしたら、中古物件を探していたら、気に入った住宅があって、すぐに申し込んだら、すでに買い手がついていたということで、取扱っていた不動産屋さんに、その物件を手がけた設計事務所はどこ?と聞いて私どもを知ったということでした。
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その住宅は6年ほど前に設計監理をさせていただいたもので、事前に建て主さんから、事情ができて関西に引っ越すことになり、売却せざるを得なくなった、と伺っておりました。建て主さん曰く、とても愛着があって、時間かかってもいいから、とかなり強気の価格を設定したとおっしゃっていただきました。しかしひと月もしないうちに売れたということでした。
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まさかその住宅を購入しようとして私ども知っていただくことがあろうとは、思いもよりませんでした。
そういえば、十年程前のことですが横浜と内房の方で、当時からさらに17年ほど前に、私どもが設計監理した住宅を、土地価格は近隣の相場価格で、横浜の方が当時1600万円の工事費で建てた家を1000万円で、内房の方は1800万円で建てた家を2000万円で売ることができたとおっしゃっていたことがありました。これからの時代はますます流動化し、住宅も売却されることが多くなることを考えると、その時にまさに住宅の真価が問われることになることを、肝に銘じなければいけないかもしれません。

マンションや戸建て住居の改装・段階ごとアドバイスの用意

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最近なぜか身内に近い関係者から、改装アドバイスを求められることが多くなりました。ここ1年で4件です。身内はともかく改装相談は簡単なようで案外難しいです。何が難しいかと言ったら、こちら設計者側の対応ではなく、改装しようする側の方の状況や意向の的確な把握です。状況が的確に分かれば、技術的には殆ど何とかやりようがあり、判断もできます。ところが、改装しようとする方の条件の出し方が分かってなかったり、意向の全内容とその中の優先順位、それと条件等の抜けがあったりして、状況把握が難しいのです。特に改装は部分的で簡単に考えている方が多く、自分の状況をよく整理しておらず、説明も不十分で、言いたいことが多い割には、抜けも多く、それが心配なのです。本人が気づかない、あるいは大したことでないと思っている事柄も、そのことが設計を考えていく上で、結果を変えてしまう大事な場合もあります。新築と違ってその方の改装へのスタンスの置き方が軽いため、しっかり設計依頼してつくるつもりもなく、状況整理や説明が疎かになりやすいのです。そのせいか、継ぎ足し継ぎ足しの増築を繰り返している方が時々見受けられます。
それと自分の関わりの度合いを決めることが難しいです。これまで間取り程度やアドバイスだけでいいということで工事を始め、完成後呼ばれて見せて頂き、あそこをなぜこうしなかったのか、とか、ここをもう少しこうしておけば良くなっていたのにとか、と残念に思うことが少なくないからです。なぜ最初に教えてくれなかったのかと責められそうですが、それを事前に察知して手を打つには、実施設計まで自分がしない限り無理なことです。設計の価値はその方がその設計者の価値のバランス感覚や嗜好をどの程度に理解しているかで決まります。それを理解していない方には、その価値を言っても押し売りになるだけで、難しくなることも見え、気が進みません。そのため、アドバイス以上に踏み込めなくなります。
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一般的に殆どの方は、改装に限らず設計はマイナスにしないためには大切とは思っても、設計であらゆるところに散りばめられ、一言で言いきれないプラスの良さの体験がない場合、設計の重要さと難しさへの認識がありません。誰が設計しても同じだろうと思っています。釜石で再建住宅のお手伝いをしていて、予算も厳しく、やむなく建てざるを得ない方が殆どのせいか、それが嫌というほどよくわかります。設計は工事屋さんのサービス程度の認識です。設計者にしてみれば、工事費とは別に、額の多寡に関係なく、予算を設計にも割り振る意識を最初に提示して相談すれば、誠実な設計者なら喜んで協力してくれます。
しかし、殆どの方は予算がが少ないからと、設計料分は工事費に回したいと考えます。そして設計は自分が指示した間取りを工事屋さんが作図してくれれば十分で、プロの設計者は予算に余裕のある人が頼むもの、という認識です。いざとなったらどんな家でも住めるという住宅観が、提示された工事屋さんの間取りが、よく吟味されてあるかどうかも、また人によって吟味する内容が違うことも気にしません。設計者の必要性を感じないまま、それでいて工事屋さんの設計者にさえ、プロなんだからちゃんと考えてくれるだろうと、自分の吟味への怠惰に都合よく解釈して対応されます。自分はできてみないと分からないのだからと、想像力を働かせようとせず、提示されたものによほどの不具合でも見えなければ良しとしてしまいます。ですから設計の良し悪しは、他と比較して見るまで分かりません。分からない以上要望も口にだせず、できてみて後悔します。それでよく、「家は、三回建ててみないと、いい家は出来ない」と言われます。
工事屋さんがする設計は、設計費用が工事費に含んで支払う以上、設計者が気にする、使いにくさや出来上がりの雑然さなどは、言わない限り気にする必要ないよ、それより工事費の少ない方法を考えなさい、と依頼者が許容しているのだという自覚がありません。上の写真は27年前のマンションを昨年かなりの低予算(400万円程)で全面改装した住戸です。
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つい最近アドバイスした方も、設計が重要という意識がなく、工事屋さんに依頼したようでした。しかしできた2戸を広い一戸にする間取り図を見せてもらい、改装する者の条件はだいたい読め、既存の状況の良さを引き出せてないまま、要望も十分満たしておらず、依頼者も予算がないからと仕方なくすべて我慢しようとしているのが見て取れました。また改装する本人が見えてない問題や先々の展開も読めてないところも多く、身内関係者でもなければ私もスルーするところです。見た以上知らんふりもできなく、仕方なくアドバイスせざるを得なく、あまり意向を汲むことも、説得することもなく、確認だけしながら、予算も変わらず、殆どの要望を満たし、工事中も引っ越しせずにすむ、全く異なる間取りで、既存の状況から引き出せる最善と思える変更スケッチをアドバイスするだけで済ませてもらいました。それを見て、こんな間取りもできるのか、ということが分かったようで、それで進めるようです。本当はその後のことも重要なんですが、決まっている工事屋さんへの礼儀もあり、その辺でとどめることにしました。
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正直、身内関係者からの依頼は気のりしません。なぜなら、関係性だけできた相談は、その方なりの設計者のイメージがあり、私の考える設計を良しとして来ていることが少なく、関係者なんだから言うことを聞いてくれるのが当然、という方が多いからです。それはそれでちゃんと依頼されれば構わないのですが、設計の持つ多様な可能性に対する認識がなく、親しい分、要望の出し方そのものが設計の可能性を封殺するかのようになっていることがあります。かと言って住宅の単なる不具合程度なら容易に説明できても、その先の良さや価値観のようなものまでは、事前には説明しにくいところがあります。できればホームページの事例等から嗜好や価値観を読み取って、関係者だからこそざっくばらんに条件提示をして、相談していただいた方が良い結果を得られるのです。私どもの設計事例を見て殆どの方は予算があるものばかりだと思うようですが、個々の実際の建築費用を示すと、建築に詳しい方ほど、その安さに驚かれることも少なくありません。専門家としての長年の経験から提示する案は、いろいろな配慮や忖度をして提示するもので、言葉にできない部分も多くあり、それを納得させようとすると、関係性から押し付けるようで、抵抗あるのです。設計の仕事は大悪人からの依頼だろうと、予算が少なかろうと、与えられた状況で、最善の在り様を考えることなのです。設計がうまくいくかどうかは設計者にもよりますが、本当は依頼する側の見識と条件提示や状況説明の的確さ、それと設計者の価値観への共感や信頼の有無で決まることが多いのです。
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古いマンションが多くなり、借り手や買い手がつかず困っている方や、新築マンションが高いので、安い中古を購入して自分なりに改修したいと考える方が、今後ますます多くなると予測されます。私どものところは新築が多いせいか躊躇して、来られるタイミングが遅すぎる方が多くおられます。むしろ気遣いせず、割り切れるように段階ごとに料金設定をして、初期段階から気軽に相談でき、計画のステップに応じて協力してあげる仕組みを用意したいと思います。まずは自分でもセルフチェックできるチェックリストを公開し、その上で相談したいと思える方に、カウンセルのメニュウで対応させていただこうと思います。
リフォーム・リノベーションの詳細はこちらをご覧ください。
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優柔不断な設計と合意形成そして知性

 たまに、家づくりをして体を壊したという話を聞くことがあります。自分の経験ではありませんが、それはやってみて、思っていた以上に大変なことが分かって来て、くたびれ果てて病気になるのだろうと思われます。大変なことは、予算が少ないとか、敷地が狭い、あるいは引っ越し作業等が大変というようなことより、多分、家づくりは複雑に絡み合ったいろんなことを、改めて決めて行く作業であることからくる、“決める”ということの心労ではないかと思われます。
 一見、設計と関係ないことですが,今、北アフリカ、中東、東アジア、ブラジル、ウクライナ等、世界の至る所で内部紛争が生じているようです。世界中が予想以上に多様性に富むようになり、しかもその情報が瞬時に、誰にでも容易に手に入れられ、自分等と周辺の差異が目に見えます。如何していくべきかを決めようとすると、そこに相互の得失も想像でき、まして宗教や民族どうしの欲が絡み合っていれば、より複雑になり,合意に至ることがますます困難になって来ているからだと思います。今日、最も困難で、心血を注いで発達させなければならない技術は、ものの生産性を上げるような工業技術等より、多様な民族と価値観の中での合意形成の仕組みなり、ルールづくりの技術や学問ではないかという気にさせられます。
 このように多様性に混乱させられる状況は、実は住宅の設計でも、設計者はもちろんのこと、依頼主にも、どのような住まいにするかを考える時、同じ様相を呈して迫ってきます。大まかな有り様から始まり、細部に至るまで何段階にも渡って、考えれば考える程、沢山の情報がいやでも入って来て,選択肢が多様に存在することが分かってきます。又その気になれば技術的には、殆どのことが可能であり,好き嫌いや自分の判断だけで決められそうでいながら、いろんな要素がからみ合い、決めたと思ってもすぐに考え直さないといけない要因がすぐ出てきて、決めきれないことも分かってきます。
 情報が多く錯綜するなかで、決定を迫られながら進めて行くのが住宅の設計です。自分の価値基準がその都度問われ、考えても見なかった問題の表出の連続になります。その都度毎あまり考えず、決めてしまい、楽になりたくなります。むしろ情報を遮って、決定し易くしたくなります。だからなのか、メーカー等の規格型の住宅に走る人が多くなるのかもしれません。自分で誠実に決めようとすると、色んな場合の切実性や希望、あるいは価値観等で、自分の中の合意形成すら難しい時代になって来ています。
 いつまでも決めきれない事項を抱えているのは、気持ち悪く、苦痛でもあります。だから病気にもなります。でも住宅の設計は、ある段階で、ある事項の決定に、未だ分かってない要素の影響が後々に作用することがあり、決め切れないまま多くのことを留保しながら、物事を暫定的に次々判断して行く作業でもあります。
 フランスの現代思想を専門とする内田樹氏が、知性とは留保し続けられる能力である、と言っています。自分はちっとも知性的ではないのですが、極めて優柔不断な人間で、これが最適か、といつも迷い、手探りばかりしています。でもそんな優柔不断な自分の欠点が、知性,と捉えることができるとなると、どっか慰めになります。決めきれない建て主さんにもお勧めです。
 通常、経験が多くなってくると、確かに迷わなく決められるところも増えてきます。しかし,今度は経験の量と共に、見えてくる可能性が、新たな材料機器や手法と共に増えて、選択肢も増々多くなります。そうすると、より最適な回答が他にありそうに思え、欲が出て,また決めきれなくなってきます。いつまでたっても優柔不断は変わりません。
 結局住宅設計で決まるのは、全ての事項を暫定的に決めた図面が、とりあえず整い、工事者の見積もりも出て,できそうなことと可能な予算の配分が明らかになったとき、全てのジグソーパズルの最後のピースが嵌って全てがいっぺんに決まる、と言えそうです。
 せっかくの家づくりですから、病気等にならず、楽しく進めていただきたいと思います。誠実で優秀な建て主さん程、自分で決められるはずだという自信もあり、見える量も多いため、決めなければと思い、細部に渡って過剰なまでに悩まれることも多くなるようです。このように30年の経験を積んで来ても容易に決められないのが住宅設計です。少なくても建て主さんの特殊事情でない限り、通常悩まれることは,経験者にはもう回答が出ているものが殆どです。特殊事情や趣向以外までも全て自分で納得できるまでコントロールしようとして苦労するより、大まかなところや程度加減は、設計者の考え方に共感できるようでしたら、その経験や判断基準に委ね,気になったところのみを一緒に吟味された方が、体を壊すようなことにならず、楽に進められるのではないかと思われます。
 

植栽計画


アオダモ:落葉樹                          イロハモミジ:落葉樹

ヤマボウシ1モクレン6
シマトネリコ:常緑樹          ヤマボウシ:落葉樹         モクレン:落葉樹

先日建て主さんといっしょに、庭に計画している植物を見に造園屋さんに行きました。
計画している植物がたくさん種類があった事もあり、あちこちにある畑を車で移動しながら半日かけて見学しました。
庭のシンボルツリーとなる木、低木、下草などバランスを考えながら、落葉樹か常緑樹か、成長が遅い木、お花の咲く季節、香りがする木、虫がつきにくいか、などなど、選ぶ条件はいろいろとあってなかなか植栽計画は難しいです。


ソヨゴ:常緑樹              カツラ:落葉樹            カラタネオガタマ:常緑樹

ソヨゴは常緑樹で成長も遅く、日当たりはそれほど良くない場所でも育つので、植栽計画に選ばれやすいです。
カツラは、葉っぱがハートの形をしていて、ほんのり甘い香りがします。
カラタネオガタマの花は5月~6月頃咲き、バナナのような強い甘い香りがします。成長も遅く、庭木に適しています。


トキワマンサク:常緑樹        カナメモチ:常緑樹          ウバメガシ:常緑樹

目隠しにしたり、生垣によく使われる植物です。
トキワマンサクやカナメモチは洋風的な印象がありますが、ウバメガシや、マサキを使った生垣はなんとなく和風な雰囲気になる気がします。

住まいでの生活音響


先日、ある建て主さんに誘われて、音に関して面白い体験をしました。日東紡の第2音響研究所の視聴室で、二個の音響調整器具を置くだけで、音がよりクリアになる体験です。写真のスピーカー脇に置いてある器具がそれです。スピーカーから出た音が、器具の個々の棒に乱反射し合って、音が拡散して音がクリアになるらしいのです。森の中の木々に乱反射して澄んだ音になることを目指して開発したとのことでした。


私どもが設計でよく使用する、小幅板天井も似たような原理もあり、私たちも住宅の中の音が反響し合って不快になりがちな状況を改善したくて、天井仕上げに目を付け、開発で試行錯誤してきました。開発研究者との話はすぐ共感できる素地があって、大変盛り上がりました。

一般的に、音に関して、オーデオマニアでもない限り、防音や遮音には気を配ることはあっても、快適な音を求めるようなことは少ない気がしていました。それでも十年以上前から小幅板天井でデザインと音をなんとか快適なものにしようとしてきたことが、検証できたようでうれしい気持ちになりました。これからも住宅は色形だけでなく、音の及ぼす効果にも気を使って行きたいと改めて思いました。