投稿者: 藤原昭夫

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釜石の家  トップライト設置

 目下建設中の「 釜石の家 」はFSU工法過去の設計事例はこちら)で杉の木をふんだんに使用した一人暮らしの建て主のための平屋の住宅です。建て主は現在名古屋に住んでおり、リタイヤ後の生活を、自然豊かで生まれ育った故郷に近い街で過ごしたいという考えで結設計と一緒に土地探しからお付き合いさせていただき、この地に計画することになりました。

 建て主さんは住まい方には具体的なイメージを持っており、災害に備えられる強い住宅、自然エネルギーを使って電気代やガス代など維持費を抑えることが希望でしたので、太陽光発電、太陽熱給湯のソーラーパネルを南に向いた切り妻屋根に載せる計画としています。

梅雨の合間の6月に上棟し(←前回ブログ参照)、ガルバリウム鋼板の屋根が葺かれ、開口部にはサッシが入り、だんだんと家の体をなしてきました。

工事中、敷地の南側から見た写真

 ご覧のとおり居室は陽当たりのいい南側に配置されていますが、一部、奥まっていて光が届かない箇所があり、北側の屋根にトップライトを設置しています。雪の多い地域ではトップライトの上部に通称「ジャンプ台」と呼ばれる積雪対策を施工します。あたかもジャンプ台のような急勾配を付けてトップライトの上部や周辺部に降り積もった雪が溜まらないようにするのです。(参考:日本ベルックス 積雪用鋼板横葺き施工参考例) 

施工中のお手製ジャンプ台を頂部から見下ろしたもの

 今回は、施工者の方の経験から両脇に雪が流れるような形状に板金を製作していただきました。岩手の中でも特に雪深い遠野市の施工者ならではの配慮です。雪対策だけでなく頂部から流れてきた雨水もトップライトにかからずに流れやすくなっています。

トップライトを中から見た様子

 トップライト直下はキッチン、水回りスペースに続く通路になります。北側からの光は直射日光のように強烈ではなく明るく安定していますので、日中は照明だけに頼らない明るさをもたらし、省エネにも寄与してくれそうです。

 今回の現場では電気、設備の施工者の方たちとも打ち合わせをしました。FSU工法の配線や配管工事は、同じ木造の在来工法と違って内装が構造材が現しになるこの工法ならでは難しさがあります。それらを計画的にうまく隠す必要があるのですが、そこをよく理解していただけて施工されていました。

 また、設計段階で分電盤の位置などから ここが最適だろう と指定していた電気の引き込み位置では、道路上で電線が横断するため規定の高さが取れず、位置を変更することにしました。(参考:東京電力 引込線地上高および離隔について

 私たちの事務所から「 釜石の家 」までは遠く、現場まで片道6時間かけて工事監理に行きますが、そのたびに得るものや気づきがあります。待ち遠しい完成までは、あと2か月程度です。


太陽光発電 設置相談と基礎蓄冷熱設備との相性 ~十年前の建主さんからのお便り2

前回紹介した「無垢厚板壁の家の熱帯夜での睡眠 ~十年前の建主さんからのお便り1」のブログの続きです。

建て主さんから、最近の高騰する電気代、 太陽光発電 の設置、エコキュート、基礎蓄冷熱設備、建物の蓄熱性、等々、寝室のエアコンや熱帯夜の睡眠に関連して、まさにタイムリーな相談メールを頂き、私からの返信メールで始まるやりとりを紹介させていただきます。 前回のブログはこちら


「 太陽光発電 」相談への返信

A・N 様
大変ご無沙汰しております。返信が遅くなりすみません。返信できずにいたのは、自分の怠惰もありますが、ソーラー発電をどうするかという課題は、ソーラー発電をすべきではあるが、どのメーカーでどう工事をするべきか、蓄電池も設置するか、ゼロ円で設置しますと言うところもあったり、海外メーカーの特に中国メーカーが安いということで設置し、遠い将来廃棄する場合についてはどうするかなど、どこも確かなことを謳っておらず、補助金も各県色々流動的で、結論出せずにいたからでもあります。太陽光発電設備の設置助成事業|東京都 こちら(tokyo.lg.jp)

A・Nさんの家は、南向き切妻屋根、基礎蓄冷熱設備、エコキュート、木の無垢材を使った工法(FSU工法・FM・DEWS工法)と、確かにソーラー発電向きです。
今、売電価格が買電価格の半分以下でもあり、設置するなら、できれば蓄電池も一緒に設置すべきと思います。蓄電池を設置しないなら、照明以外のすべての機器を夜間ではなく、昼間に稼働させたいところです。設置工事は、工事者や設計者に頼まなくても、A・Nさん(の調査と整理能力)なら自分で直に依頼した方が安上がりです。
どの程度のKWのパネルと蓄電池を置けばよいかも(代理店が)アドバイスしてくれるかと思います。

将来のEV自動車についてもどうしたいか、予算はどう考えているか、等も話して、見積もって頂くといいです。代理店を紹介しますので、一度来ていただいて、状況を話して見積もって頂くのがいいかと思います。
屋根の図面や年間の電気使用量と予算含めて書面化してメールし、最初に凡その見積もりを頂いてから会うのもありかと思います。ここ一年分の電気料金の領収書を用意しておくと、どの程度のワットのパネルと蓄電池があればいいかもアドバイスしてくれると思います。
なにか懸念があれば連絡ください。手伝えることはします。最終的に完成したら、経過も含めて教えていただけると、私たちの参考にもなり、ありがたいです。よろしくお願いします。
結設計 藤原

「太陽光発電」EV自動車への蓄電 職場の事例

結設計 藤原様
お世話になっております。ご返信ありがとうございました。アドバイスのとおり、ひとまずご担当者様にメールをしてみました。お話を聞いてプランを詰めていきたいと思います。
電気代はけっこう節約している方だと思うのですが、年間で37万ほどでした。これで深夜電力が1.5倍になるとなかなかのインパクトになりそうです。

蛇足の話ですが、静岡の会社の3階建ての事務所ビルには自家消費用の太陽光パネルを設置して、V2Hの設備を導入しております。
最初は蓄電池として三菱の軽EVを購入したのですが、電池容量が少ないのと、たまに車として使うときに航続距離の短さがネックになりすぐに売ってしまったのですが、この夏再チャレンジということで、日産のリーフ(電池容量:40kwh)中古を150万ほどで購入しました。新車は電池価格が上がっているためどんどん値段が上がっていますが、程度のいい中古EVは電池容量から考えると相当コスパがいいと思っています。事業用だと太陽光パネルは特別償却ができ、中古のEVは単年一括償却ができるので、個人よりも決断が早く進められますので、導入検討が楽でいいです。
日中の太陽光を電気やエネルギーに変えて貯めておく、というのはいいソリューションだと思っているので、家でも会社でも積極的に導入していきたいと思います。また経過報告させていただきます。
S市 A・N

A・N様
色々職場での事例状況等含め、ご教授ありがとうございました。
そうなんです。ソーラーはどうすべきかは、なかなか簡単には判断をしにくいところがあります。
日産リーフ40KWの蓄電池ですか、確かにそれが一番コスパよさそうですね。当然V2Hを設置してパワーコンディショナーもそれに対応したものにしてあるということですね。さすがですね。よろしくお願いします。
結設計 藤原昭夫 

パネルの遮熱効果やリース活用

結設計 藤原様
お世話になっております。藤原さんの仰っていることもよくわかります。
廃棄まで考えたソーラーパネルのライフタイムマネジメントはまだ道半ばとも言えますが、これだけ灼熱の太陽光線が注ぐようになった昨今、太陽光発電でその光を電気に変え、かつ屋根材の一部としての遮熱効果もある太陽光パネルはそれなりに有用なものだと思います。要は見積次第ですが、リースを活用しようと考えています。
これだけ電気代が上がってくると、リースの手数料を考慮してもすぐに入れるべきかな、と思っています。

10年前はFITで稼ぐのだ、という流れがあったので、パネル価格も高く、また技術的にも発展途上でちょっと歪んだ構造でしたが、売電価格が下がり、稼ごうという欲も削がれ、技術的にもこなれ、価格も安価になった今は導入時期としては適しています。
S市 A・N


以上が現在までのメールのやり取りの凡その文章です。他にも見積もりやシミユレーショングラフ等も頂いていますが、いくらか割愛させて頂いています。

蓄電・蓄冷熱と家づくり

東日本大震災での計画停電当時以降、売電利益を期待してソーラー発電を設置する建て主さんが一気に増えました。

昨今では売電利益もそれほど見込めず、電気代の高騰により売電するより自家消費の目的で設置される方が増えている流れになっています。
今回の十年前の建て主さんのメールで仰っているように、発電は昼間に限られるので、以前にお薦めした、(1年前に太陽光発電についてまとめたブログです→)電気の使用効率が約1/3ですむヒートポンプ室外機でつくった冷水・温水を昼間のうちに基礎の中に配管で回してコンクリートを蓄冷熱させ、日暮れからゆっくり放出させて家全体を蓄冷熱する基礎蓄冷熱設備の家が極めて有効な時代になってきたと言えます。

尚、無垢の木材を使用した工法(FSU工法)だとより蓄冷熱が効果的ですが、通常の在来木造工法でも十分効果的であることは数多くの事例で実証済みです。
(在来木造設計事例の建主さん夏の熱帯夜の睡眠にお薦め石神井公園の家  (yui-sekkei.co.jp)

記事に関するご質問は、「お問い合わせページ」から、または「LINE」でどうぞ。

最近のFSU工法の厚壁建て込み中で、これだけの無垢厚壁に蓄冷熱するのでより効果的です。
最近のFSU工法の厚壁建て込み中で、これだけの無垢厚壁に蓄冷熱するのでより効果的です。

無垢厚板壁の家の熱帯夜での睡眠 ~十年前の建主さんからのお便り1

関東都市部に住宅を建てられた建て主さんから、最近の高騰する電気代、太陽光発電の設置、エコキュート、基礎蓄冷熱設備、建物の蓄熱性、等々のご相談から始まり、最近の寝室のエアコンや熱帯夜の睡眠に関連して、まさにタイムリーな相談メールを頂きました。

木の無垢厚板壁(120㎜)で作られたFSU工法の蓄熱性と、基礎蓄冷熱設備との相性は設計者としては抜群と思って設計していますが、10年住まわれた建て主さんからの生の声が届きましたので、私がくどくど説明するより的確な思考をされているので、ここで紹介させていただきます。

(基礎蓄冷熱設備とは、基礎にパイプを配管しておき、夏は冷水、冬は温水を流して基礎に蓄冷熱させる方法です。末尾写真参照)


「結設計様、ご無沙汰しております。S市のA・Nです。

さて、7月より東電の電気代プランが変更となり、とうとう深夜電力が日中の電力とほぼ同じになります。時代が変わったと感慨深く思います。

当家が設計・建設された2011年当時は東日本大震災の直後ということもあり、まだ深夜電力プラン+エコキュートは有効でしたが、10年以上経過し、原発停止・化石燃料高、CO2削減の潮流には逆行した状態となり、化石燃料を使った発電で深夜にお湯を貯めるという行為が、ある意味時代に逆行している事になってしまいました。
(特に冬は一番お湯を使う夕方のお風呂の時間に温度が下がってしまっている)

元々2011年当時でも太陽光発電は話題になっていたので、当時も導入の検討はしましたが、結設計様がブログであげているとおり、太陽光発電パネルの技術革新のスピードや設置手法における屋根へのダメージなどを考えると前向きにはなれないという、藤原さんの話もあり、屋根自体は太陽光発電に最適な形状ですが、実際には載せなかった、というところです。
またエコキュートも12年ほどが経過し、近隣の家でもだいたい15年位でどこか壊れる、というのを見ていると、設備更新の時期とも言えます。

話は長くなりましたが、結設計様でのノウハウも蓄積され、ころあいかなと思いますので、太陽光発電設備増設+エコキュート更新を計画したいです。こちら結設計様に依頼すれば、業者の手配等お願いできるものでしょうか?それとも工務店さんに依頼するものですか?教えて下さい。
当家は基礎の蓄冷熱暖房を建築時に導入しているため、自家消費で電気が惜しげもなくフルに使えるとなると、様々な最適化ができそうな気がしています。急ぎませんので、お時間あるときにアドバイスいただけたらと思います。

話は少しズレますが、暑さが厳しいこの頃ですが、木の無垢材の調湿力には改めて感心しています。
一階は基礎蓄冷熱設備の効果がモロに出ますので、基礎蓄冷熱設備と除湿機を稼働させると、真夏でも非常に快適な状態になりそうです。
というのも、今までは昼間は電気代のことも頭にあり、基礎蓄冷熱設備はタイマー稼働にして昼間は稼働させていませんでしたが、7月からほぼ電気料金の時間差がなくなったこともあり、24時間稼働させたところ、一気に快適になりました。

深夜時間のみ除湿機を稼働させていますが、毎日タンクは満タンになります。
2日ほど除湿機が稼働すると、空間は更に心地よくなった気がします。木の無垢材が貯めていた水分をだいぶ吸い取ってあげて保湿の余力をもたせられたかな?と思っています。
1階はまだエアコンなしでやれていますし、エアコンをつけないで寝られるのはなにより快適です。1階で布団を引いて寝ている次女が、明らかに涼しくなって快適になったとびっくりしていたので、その通りなのでしょう。
S市という、標高が低い土地の家としては、湿度のコントロールによる空間の快適さはなかなか得られないものだと感じています。

奥が子供室で、窓のある外壁が無垢の厚み120㎜の板壁です。

2階は、どうしても屋根材がガルバリウム鋼板で、現しになっていることから、屋根に断熱材をだいぶ入れているとはいえ、夏の日光が当たると2階全体に熱気がこもっていました。
なので2階の子供部屋やリビングはエアコンを稼働せざるを得なかったのですが、これも太陽光パネルが座れば、ガルバリウムを覆う遮熱材としての役割も持ちつつ、電気を生み出し日中の消費電力を気にしないでエアコンを稼働させることができ、さらに1階の基礎蓄冷熱設備&除湿機の連続稼働+エコキュートが太陽光発電で実現できれば、システムとしてはほぼ完璧になるのでは、と思っています。

まだ想像の域ですが、木の無垢材の特徴を最大限発揮できるようなサポート機器が、電力の心配なくフル稼働したらどうなるのか。建築から10年が経ち、また楽しみができています。A・N 」

私共は意匠設計の事務所ですが、デザインがすべてとは考えてなく、居住性能の調湿機能や木の無垢材を使ったFSU工法やFM・DEWS工法(集成材工法)など、構法の躯体の持つ蓄熱性能等まで、フル活用して、住生活をいかに豊かにするかを、建て主さんの希望に触媒的に働きかけながら実現できればと考えており、それにぴったりなメールの内容でしたので紹介させて頂きました。

続く 熱帯夜 にどうぞ快適な睡眠を!

べた基礎底盤の鉄筋に架橋ポリ管を配管し、そこに温(冷)水を通して蓄(冷)熱します。
熱源は手前二台のエアコン室外機と同様のヒートポンプの大きめの室外機から分岐して配管します。(写真は他の家)

次回は、ソーラー発電設置の相談内容について、私の返信を含めたメールのやりとりを紹介したいと思います。


寝室エアコンの風と熱帯夜の睡眠

エアコンの隠し方
ベッドがだめで畳が良いという方の場合のエアコンの隠し方

エアコンの風が苦手と言う方は多いです。暑苦しい夏の夜を、窓を開け放して、風通しで何とか凌ごうとしても、蚊の襲来は網戸で防げても、ガラリ付きの雨戸でもない限り、明け方や街灯の光で寝室が暗くならず、眠りが浅くなる方には、うまくいきません。近年の熱帯夜では、熱中症にならないためにもエアコンの世話にならざるを得ないようです。エアコンが苦手な人には、温度設定も難しく、冷たい風を避けて高めにすると、暑苦しく用をなしません。下げ過ぎても夜中手足が冷えて目覚めてしまい、人によっては偏頭痛に悩まされる方もいます。1時間切タイマーを使っても、やはり途中目覚めます。やっかいなエアコンの活用とその存在の隠し方の例を挙げてみます。

エアコン露出型取付も壁の間だと目立ちにくい
入り口上部にガラリでカバーした例

設計でも、寝室は思うほど簡単ではなく、エアコンの風の向きとそれをどう隠すかもそうですが、部屋の形状と広さでも、壁芯が1間半の間にベッドを縦に置こうとすると、壁との距離が50㎝ほどしか確保できず、もう少し広く欲しくなるとか、ベッドは凹んで寝苦しくなるので畳がいいという方とか、窓の位置も夏の西日の熱が部屋に蓄熱するので避けたい方、夜明けの光で明るくなるのを避け、暗さをコントロールしたい方、等々人によって微妙に違ってくる要素が多くあり、丁寧に検討する必要があります。

廊下へ出入口の上に設置して壁と同じ色の幕板を設けただけの場合

エアコンの風が嫌いと言っても、確かな睡眠をとるためや、熱中症にならないためにも近年の熱帯夜ではエアコンを上手に使うしか手はなさそうです。自分の場合、古い効率の悪いエアコンなので、夕べの対処は、寝る前にヤクルト1000を飲んで、暑苦しくなる温度より1度低く、27度でドライにし、風量は最低で、角度を上向きに固定し、朝までかけ続け、タオルケットで夜中寒くならないよう身を包むことで、朝までよく眠れました。皆さんもよく工夫して、ご自愛ください。

家具の扉と同じ色の幕板を設けてエアコンの存在が気にならなくした隠し方

馬込の家 もうすぐ完成 和室 (茶室)

日本の住まいから「 和室 」が消えつつあります。
結設計でも、和室を設計する機会がだんだん減ってきました。特に本格的な和室は少なくなっています。

かつては、マンションでも一部屋は和室でしたが、今はほとんどが洋室のみとなり、戸建て住宅でも、ハウスメーカー等で和室を作るにはオプションとして追加を出さなければならなくなっていたりします。

和室は不要、それが世の中の大半の人々の要望なのかもしれませんが、中には和室が欲しいと思われる方もまだまだいらっしゃると思います。

馬込の家「 和室 」六帖の寄付きと八帖の広間(襖と紙障子はまだ入っていません
)
手前が六帖の寄付き、奥が八帖の広間(襖と紙障子はまだ入っていません)


そういった世の流れのなか、「馬込の家」では本格的な和室(茶室)として京間で造ることになりました。和室の真、行、草の種類分けでは「草」になります。


六帖と八帖の続き間で、八帖には床の間と脇床があります。茶室として使用するので、炉を切ってあります。裏千家の茶室なので、六帖の寄付きには大炉と(写真では畳の下で見えません)丸窓、壁床があります。
梅をモチーフにしたいという建主様の想いもあり、床柱は梅の木となりました。建主様が銘木店で探したところ、たまたま梅の木が一本あったということで、これを床柱に使ったらどうかということになりました。

床柱 梅
銘木店で見つけた梅の木

この梅の木は、かなり曲がっているので、どう使うか難しいところでした。施主様と大工の棟梁と私共で色々検討して、必要な条件を整理していくと、段々方向性が見えてきました。最後は、棟梁がうまく納めてくれました。
曲がっていることでより梅の木らしさが出たように感じます。

京都の畳屋さんの採寸

写真の採寸している畳屋さんは、京都の嵯峨藤本畳店さんです。畳は、茶室用の畳表で造っていただきました。
襖は、京都の表具工房の静好堂中島さんにお願いしました。

左官屋さんの作業

その後左官屋さんが内部の壁に、下塗りした後、仕上げのわら入り左官材を塗っていきました。丁寧に作業されていましたが、作業が速いです。あっという間に塗っていきます。

天井は、杉板クロスに竿縁。本当は、無垢材の杉板を張りたいところでしたが、建物を準耐火建築物にする必要があることから天井には石膏ボード(15mm)を張ることとなり、金額を抑えることも考え杉柾目の敷き目張り風クロス貼としました。その上に竿縁を取り付けています。

竿縁が杉の無垢材ということもあって、クロスであることに気づかないぐらい違和感がないです。

壁は、柱が見えているので真壁に見えますがこれも準耐火建築物にするために、石膏ボード(15mm)を構造柱を覆い隠すように貼り、大壁にした上に付け柱を取り付けて真壁に見せています。

隔てる欄間の欄間板には、梅の彫刻がある欄間板を施主様が古材店で探してきたものを使いました。そのままでは、枠が大きくてこの空間にそぐわない感じがしたので、枠を左官で塗り込み見えないようにしました。それによって、武骨な印象から繊細な印象に変わりました。

寄付きの壁床

寄り付きには、壁床があります。壁の上の方にある竹釘に掛け軸を掛けます。

大工さんをはじめ多くの職人さんが仕事をしてくれることで、家が出来ていきます。

 炉壇など、続きは次回に。

過去の物件の和室について▷「和室・床の間・飾り棚ギャラリー」としてまとめて紹介していますので、そちらも是非ご覧ください。
(加藤)


伊豆高原 「相模湾の見える家」写真撮影

先日、 伊豆高原 へ「相模湾の見える家」の竣工写真撮影のためお邪魔してきました。
お庭も整ってからの撮影タイミングで、あいにく梅雨時期となってしまいましたが、天気の様子を伺いながらカメラマンさんと共に待機させていただく時間には、デッキで育てているハーブの摘みたてハーブティーを頂いたり、建て主さんともいろいろとお話しすることも出来て良かったです。
静寂で鳥のさえずりが響き、別荘地ということもありますが、家では無いような非日常的な特別な空間のように思えました。
建て主さんは以前は都心に住んでいて、「相模湾の見える家」を新築し移住してきました。引き渡しをしてからおよそ半年が経ちましたが、特に不便な事も無く、とても快適に過ごされているとのお話が聞けてホッと安心しました。

「相模湾の見える家」 伊豆高原,別荘,移住

 

書斎の本棚に、私たちが苦労して作成した模型たちが、建て主さんによって丁寧にクリアケースの中に収蔵されコレクションの一部となっていたのを見て、感激でした。
事務所に置いてあった時よりも数倍カッコ良く見えます。

 

晴れ間にドローンも飛ばせ、無事に撮影を終えることが出来ました。

 

「相模湾の見える家」の前回のブログは▶こちらです。



釜石の家 (地縄検査、配筋検査、上棟)

「 釜石の家 」はFSU工法で木材をふんだんに使用した、切り妻屋根の南面にソーラーパネルを載せた平屋の住宅です。車庫を含めて30坪ほどのコンパクトでシンプルな家の計画になりました。

土地探し(←前回ブログ参照)から約一年、設計、工事契約を経て、ようやく現場が着工したのがいまだ寒さの残る4月の事でした。

4月の地縄検査の様子、敷地の南側から見た写真です。

「地縄」とは、建物の位置を決定するため外周の中心線に張った縄の事で、地縄を張るということは建物の位置を地面に表すことです。建物の位置が図面通りとなっているか確認しました。

5月の配筋検査の様子です。

「配筋」というのはコンクリートの中の骨組みのようなものです。コンクリートはセメントや骨材からなり、いわば石のようなものなので、圧縮の力にはとても強いですが、引張られる力には弱いという特徴があります。反対に鉄は引張の力には強く、圧縮の力には弱いため、コンクリートに鉄筋を入れるとお互いの短所を補い長所を生かした強い構造となるのです。

配筋検査では、使用している鉄筋の径、間隔、型枠迄のかぶり寸法、開口部の補強などが正しく施工されているかどうか、コンクリート打設前に確認しました。

今回は外断熱工法で、通常は型枠を外した後に断熱材を張り付けるのですが、基礎型枠が断熱材を兼ねる製品を使っています。型枠廃材が発生しないこと、断熱材を張り付ける手間が省略されるため採用しました。

鉄筋に結束している白いチューブはコンクリートを蓄熱体にするために温水を通す配管で、後ほどヒートポンプへつなげます。べた基礎の一体に配管しています。

そして6月上棟の様子です。梅雨時期の上棟でしたので、雨が降らないか心配でしたが、何とか天気の持った2日間で、「FSU壁パネル建て込み→梁・桁・母屋・棟木などの横架材設置→垂木掛け→垂木間断熱材設置→野地合板張り→シート養生」まで終えました。

この「 釜石の家 」はFSU工法(過去の設計事例はこちら)での施工です。かつて震災後に何棟もこの工法で施工していただいた大工さんに今回もお願いすることができたので、とてもテンポよく半日でパネルの建て込みが完了しました。

今回、十分に乾燥された杉材を取り寄せ、自社工場でパネルの組み立て、加工を行いました。そのまま内壁の内装になるパネルの表面部分は、サンダー掛けをした上に、節の目止め処理が丁寧にされており、パネルの質がとてもよかったです。

釜石の家 上棟時の様子

シェア別荘・峠の我が家物語5独身らが創る別荘

土肥までの道の山桜


生まれて来た そのわけは 今もまだわからないけど
それでも 生きてゆく その意味は
少しだけ 分かったかも しれない
なくしてきたもの 置き去りにしたもの
いつも近くにいてくれたひと 大切なこと 大切なひと
生きてゆく その意味を 教えてくれた
ひとりではせつなくて 不安な日々に消えて行った夢も
 ・・・・・・・

小田和正の「風は止んだ」の歌詞の出だしです。シェア別荘をつくろうと思ったときのメンバーは殆ど独身でした。当時でも別荘を考える方は、殆ど50代以降の経済的余裕のある方が多かった気がします。そんな余裕などあろうはずもなく、20代独身の自分たちが創ろうとした時の意味合いは、当時とも、今とも違っていました。自立し始めて、まだ自己も確立できていない、自信のない独り身の、漠とした不安がある時期で、それを共有し、紛らわし合う仲間を欲していて、別荘はそのような場としての意味が強かったのかもしれません。それ故シェアは当然で、経済的余裕もないので、ハーフセルフビルド(半自力建設)も必然でした。そのような別荘の意味あいも、その後活用していくなか、状況や年代と共に変化していきますが、それは物語の進展に沿って話したいと思います。

西伊豆の土肥町という、人口6000人程の町に移住して、現場監督の職を得て、小土肥という浜辺の近くの3階建ての二階、40㎡2DKの社宅に、一人住み始めました。最初の仕事は町の中でも人通りの多い交差点に建つ、3階建ての鉄骨造の洋装店ビルの、二階の喫茶店の内装工事でした。手伝ってくれる大工さんと二人で、鉄骨の柱梁とALC版躯体剝き出しの、がらんどうの内部空間に、トランシット計測機器で、間仕切り壁の位置を測り、その線を床に原寸で描く、墨出しという仕事でした。これまでは製図で縮尺1/100か1/50で、虚像を書いていたのを、いきなり床に原寸で書くということは、とてもリアルな行為で、新鮮な感じでした。設計事務所で現場監理をしていた経験もあって、多少の緊張はあっても仕事にはすんなり入っていけました。

2DKのアパートの外階段から見えた菜の花畑

大阪での手伝いは、会う人に気を遣う必要もなく、髭を剃らずにいたので、移住してきた時は、立派な髭面になっていました。土肥町は人口流出傾向であったためか、転入してくる人は歓迎され、仕事柄、現場の職人さんやら、建て主さんやら、人と接する機会が多く、会社の人にも近所の人にも、珍しがられ、「髭さん」と親しみを込めて呼ばれていました。他所の土地で居づらいことがあって、観光地でもあった土肥に、板前などとして、流れ来る人もいたようでした。土地の若い人は殆ど都会に出ていくのに、この人はなんでこんな田舎に移住してきたのか、何か訳でもあるのかな、という好奇心や訝しさもあったでしょうが、そんな素振りは見せず、独り身でもあったせいか、皆さん優しく世話を焼いてくれました。

土肥の町はずれから見える富士

実は、訳というほどでもないのですが、仕事をするということについて、しばらく横道に逸れ、自分が最初の設計事務所に勤め始めていたころの話をします。勤めて三年目頃、自分が設計の仕事に向いているか疑問を感じていました。開口部周りの木枠の見付寸法は、25㎜が貧弱でもなく、野暮ったくもないが、和室の場合は30mmにしないと和風の雰囲気にならないとか、食卓の高さは通常700㎜にし、天板の厚みは30mmぐらいが美しい、などと㎜までこだわる仕事が、本当に向いているのか、という、働き始めの若いころ、誰もが感じるような疑問を覚えていました。

「神は細部に宿る」というディレクトの言葉の意味もよく分からず、外観や間取り等の全体像を考えなくてどうする、という未熟なあせりがあったのでしょう。設計事務所二年目の頃、監理で現場に一人で行かされ、施工会社の監督や職人さんに、ここはこのままだと納まらないけど、どう考えているのか指示してくれ、と監理者の力量を測るかのような質問を幾つもされ、分かっているつもりなのに、説明できるほど奥深くは分かってなく、四苦八苦しながら答えていました。面白さが分かるほど仕事を分ってない段階だったせいか、その時の盆休みの5日間、体調を崩して、アパートでおかゆだけ食べて、寝て過ごしていたこともありました。

そんな状況に、担当物件がちょうど途切れた時、給与はいらないからと、1か月の休暇を頂き、南の沖の永良部島や与論島に一人旅をしてきました。その旅で、ヒッピーと言われていた集団が吐噶喇列島の諏訪之瀬島に集団移住して、自給自足のような生活していて、滞在を希望する者は拒まないということを聞いて、2週間ほど滞在させてもらいました。無料宿泊ですから農作業等を手伝うのですが、もともと体力には自信があり、元気に手伝っていました。

たまたまそこのキッチンを改造し、食卓を作る作業になり、どう作るのか見ていたら、その辺にあった木材の切れ端で箱をつくり、それに砂とセメントを練って擦りつけただけの流しで、食卓もやはりその辺の広めの板を持ってきて、大きな楠の枝の下に、いくつか石を積んで台にし、そこにその板を平らに並べただけの食卓です。25㎜も30mmも関係なく700㎜あろうとなかろうと頓着せず、木洩れ日の射す、気持ちの良い食堂ができていました。

その旅を終えて帰るとき、紅葉のきれいな秋でしたが、足取りはとても重く感じられました。事務所の勤務に戻っても、なぜか体中に蕁麻疹のような症状が現れ、病院通いをしながら働いていました。そしてその年の暮れ、郷里に帰る朝、起きたら、体がとても重く、駅の階段を上るのがやっとで、これではだめだと、その駅から見える病院にいって診てもらいました。「肺炎を起している、即入院しろ」とのことでした。そのまま入院し、その年の正月は病院で過ごしました。

3週間ほど入院したあと、事務所勤務に戻り、半年ほど働きましたが、やはり設計という仕事に感じた疑問は残ったままでした。その時もう少し継続していたら、仕事の面白さが理解でき、違った道があったかもしれません。なぜなら、「弟子は師を選べない」と言うからです。自分が計れる範囲の判断の学びをしている限り、その者に予定調和以上の成長はなく、ブレークスルーは訪れません。成長は、予測できる範囲以上の試練を乗り越えるからできることです。世の中の飛躍した殆どの方が、意図していなかった出会いや試練が、自分を成長させたというようなことを言っています。しかし当時の自分の体は正直で、だますことが出来ませんでした。そのとき、物語3で話した大阪の先輩からコンペを一緒にやらないかと誘いがあり、勤め先の担当の区切りの良いとき、退職させてもらい、自分に合った仕事を求めつつ大阪に行きました。

そんな迷いのあるまま、大阪を経ての土肥移住でしたので、土地の方から見れば、何となく訳ありに思えたとしても不思議ではなかったかもしれません。最近新卒で入社した社員の3割が転職をするという話を聞きます。若い頃、誰もが、自分に何ができるのか、意味あることなのか、こんなことでいいのか、等々、未熟ゆえにあせり、試行錯誤をする時期があります。その過程の一つで、その時の自分の世界だけでは煮詰まってしまい、別の世界を見てみたいという思いが、移住であり、シェア別荘であり、何ができるのか、何がしたいのか、見てみようとする意味もあったのかもしれません。

海から見た土肥町から小土肥につながる海岸線