投稿者: 藤原昭夫

炉壇 炉と大炉

前回「 馬込の家 」のブログ記事「馬込の家 もうすぐ完成 和室(茶室)」の掲載後に馬込の家は無事完成し、引き渡しとなりました。引き渡し時にはまだ残っていた襖や障子、炉壇等も少しして入り、茶室も完成です。今回は、茶室にある「 炉壇 」のお話しです。

「 馬込の家 」では、茶室としての八帖の広間と六帖の寄付が続き間となっています。畳は京間畳なので、関東間よりかなり広く感じます。
茶室として使われるので、炉が切られています。

「馬込の家」の茶室(広間)
奥が広間、手前が寄付。襖・障子が入り、腰張りの白紙貼も完成しました。

炉壇 と 本炉壇 と 炉壇師

広間に炉。寄付には大炉があります。どちらも土でつくった炉壇で、最近では「本炉壇」といわれるものです

炉壇 本炉壇
広間の炉(炉縁がまだ入っていない状態です)

「本炉壇」と呼ぶのは、土製の塗り直しが必要な炉壇のことです。
現在は、金属製の炉壇が多くなっていて(少なくても関東ではほとんど金属製になっているようです)、その金属製と区別するために「炉壇」とだけ呼ばれていた土製のものを「本炉壇」と呼ぶようになったようです。

美しい京都の稲荷山黄土仕上

この本炉壇は、土を塗っていますので、使っていくなかで炉壇の壁面が炭の熱で焼けて色が変わってきます。(茶席ではその色の変化の風情を楽しむそうです)
そして、その色が変化した炉壇の壁面の塗り替えを毎年行うそうです。
炉を塞いだ5月~10月までの夏、風炉を使う時期に塗り替えて、11月には塗り替えが終わった状態で炉開きをします。

土の炉壇は、焼けて色が変化すること以外でも、釜などがぶつかって欠ける場合もあり、使用すれば汚れても来るので、どうしても塗り直しが必要になります。
その点、金属製のものは丈夫で、手入れもそれほど必要としない、安価でもあるので、金属製が多くなったのもうなずけます。石製の炉壇も昔からあったようですが、大きな石をくりぬいて炉壇の形にするのでつくるのも大変ということであまり見ないようです。
また、現在ではビルの中に茶室があることも多く、消防法等の規制で炭を使う炉壇を入れることが大変難しいということも聞きます。

そういったメンテナンスの手間や消防法等の規制で、東京など京都以外の地域では金属製の炉壇が主流になっていて、土の炉壇「本炉壇」すでにあまり見ないものになっているそうです。
結設計でも茶室として使える和室を今までも設計してきていますが、ほとんどが金属製の炉壇で炉を切ったか、風炉や置炉のみで炉を切らない、という形でした。

本炉壇を、左官でつくっているのは知っていたので、左官屋さんがつくっているという認識しかありませんでした。左官屋の中でも、特に炉壇の製作や塗り替えをされる職人を炉壇師というのですが、恥ずかしながら馬込の家の施主様の先生の京都にある御茶室で炉壇の塗り替えの様子を見学させていただくまで、炉壇師という言葉は知りませんでした。
その炉壇の塗り替えをしていた方が、炉壇師の片田儀斎さんでした。今回馬込の家では、施主様の京都の先生から炉壇製作の話を通していただいたことで、片田さんに炉壇と大炉を製作していただきました。

大炉

裏千家ということで、寄付きの六帖間には大炉が入りました。(写真は、まだ炉縁はない状態です)
大炉は、裏千家11代お家元玄々斎(げんげんさい)が北国の囲炉裏から考えられたもので、裏千家独特のものです。
囲炉裏を模してつくられ、寒い時期の暖房器具の役割も考えてつくられた炉ということです。
そのため、大炉は寒い2月にしか使われません。

本炉壇 大炉 は、ねずみ色(ほんのり青みがかっています)
大炉はねずみ色(ほんのり青みがかっています)
大炉 美しい仕上がり
美しい仕上りの大炉

寄付の大炉の大きさは、一尺八寸角。広間の普通の炉が一尺四寸角ですから、たてよこ四寸ずつ大きく、その分暖かい。

馬込の家の玄関

炉壇や畳、襖などの製作だけでなく、その後のメンテナンスが長い歴史のなかで続いていることが文化になって、その文化がその技をもつ職人を必要とする仕事を残している。そうやって技術面としてのバックボーンがあることで建築という行為が維持していけるのだと、今回の馬込の家を設計監理していく中で改めて感じさせられました。
(加藤)


家づくり個別相談

家づくりに悩んだら ご相談ください。

家づくりは、ほとんどの方がはじめてのことで、何から始めたら良いのか、設計事務所に依頼すると何が違うのかなど、わからないことが多いのではないでしょうか。

まだ依頼をする段階では無いけど…」とこんな方でも些細な質問や疑問を相談できるように結設計のスタッフによる「 家づくり個別相談 」(無料)を予約制で設けています。

相談したからといって、依頼をしなければいけないと言う事ではありませんので、お気軽にお申し込みください。
新築だけでなく、増築やリノベーション・リフォームなどのご相談もお受けしています。

(※日時が合わないなどは、適宜対応致します。特に土日祝や、平日夕方以降、スタッフの指名等々・・お問合せください。)

こんな人におすすめです

・家づくりに漠然とした「 不安 」をお持ちの方
・「 何から手を付けてよいか 」悩んでいる方
・「 自分の考え・要望 」を整理したい方
・「 基礎知識やノウハウ 」が知りたい方
・工務店・ハウスメーカーの提案が「 しっくり来ない 」方
・「 二世帯住宅 」について悩んでいる方
・「 土地・敷地 」について悩んでいる方
・敷地の「 変形地・がけ地・傾斜地・高低差 」で悩んでいる方
・「 建て替えか、リフォームか 」悩んでいる方
・プロからの「 アドバイス 」が欲しい方
etc…

参加方法

家づくり個別相談への参加は、相談者様の状況やご都合に合わせて、「対面相談」と、「オンライン相談」の2種類がお選びいただけます。

対面相談
・じっくりと話をしたい人
・図面などの資料を見ながら話をしたい人

オンライン相談
・事務所に来るのが難しい人
・遠方にお住まいの人

※日程・スタッフによっては、オンライン相談のみになる場合もあります。
※オンライン相談は、「Zoom」を使用しますが、他の方法をご希望の場合はご相談ください。

■9月の予定

※まだ決定していない日程もありますので、順次決まり次第掲載していきます。

・8 日(金)対面・オンライン ※終了しました
  10:00~12:00 担当:加藤 
  14:00~16:00 担当:加藤 
  16:00~18:00 担当:加藤 
  18:00~20:00 担当:加藤 

・11日(月) 対面・オンライン ※終了しました
  14:00~15:30 担当:岡坂
  16:00~17:30 担当:岡坂

・13日(水)対面・オンライン ※終了しました
  14:00~16:00 担当:加藤 
  16:00~18:00 担当:加藤 
  18:00~20:00 担当:加藤 

・24日(日)オンラインのみ  ※終了しました
  14:00~16:00 担当:藁科 
  16:00~18:00 担当:藁科
  18:00~20:00 担当:藁科

・26日(火)対面・オンライン ※終了しました
  10:00~11:30 担当:岡坂
  13:00~14:30 担当:岡坂

・28日(木)オンラインのみ   ※終了しました
  10:00~12:00 担当:藁科 
  13:00~15:00 担当:藁科
  19:00~21:00 担当:藁科

※これまでご好評いただいておりました個別相談ですが、人員不足につき一時休止させていただきます。
 ご相談につきましては、引き続き受け付けております。
 お問合せフォームまたはLINEからのご連絡をお願い致します。

 

■ご予約はこちら

参加ご希望の方は、以下の申し込みフォームより必要事項をご記入のうえ送信ください。
後日担当者よりご返信いたします。

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    よくあるご質問

     

    Q.家づくり個別相談の参加にあたって事前に用意するものはありますか?

    A.ご相談の場合は、特にご用意していただくものはありませんが、計画地がすでに決まっている場合は、土地の場所・図面などをお持ちいただけるとより詳しくお話しできます。

    オンライン相談の場合は、通信環境の準備のため以下をご用意ください。

    [オンライン相談に必要なもの]
    ・インターネットにつながるパソコンまたはタブレット
    ・マイク(もしくはマイク付きパソコン)・イヤホン推奨

    ※オンライン相談の前にZoomの招待メールをお送りします。
    その招待メールにかかれているURLをクリックして参加してください。

    スマホ・タブレットでは、アプリを事前にインストールする必要があります。
    パソコンからの参加の場合は、Webブラウザから参加できますので、アプリなしで問題ありません。


    Q.家づくり個別相談の予定日時以外でも相談可能ですか?

    A.はい、予定日時以外の平日、休日ともに受け付けております。
    お仕事終わりの19時以降や週末・祝日も可能です。
    ただし、予定日時以外は、すでに他の予定が入っている場合もありますので、ご相談ください。


    Q.計画地が遠方ですが相談できますか?

    A.遠方でも大丈夫です。
    過去の実績としては、岩手県から広島県まで設計事例があります。

     


    「相模湾が見える家」設計事例掲載

    伊豆高原で大室山が見える

    設計事例に「相模湾が見える家」を追加しました。

    お子さんも独立されて、夫婦二人で都心から海と山の調和の取れた伊豆高原に 移住 をして建てられた住宅です。 移住 した後もリモートで働き、趣味のスキンダイビングを楽しみながら、自然に囲まれて快適に過ごされている住宅です。

    是非ご覧ください。

    リビングから見たキッチン


    LINE公式アカウントのお知らせ

    ■公式アカウント作りました

    連絡手段としてLINEを使っている方が多い昨今、設計事務所にいきなり電話やメールでの問い合わせをすることは敷居が高いのではないか?と考え、気軽にやり取りできるよう公式アカウントをつくりました。

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      • 「設計事例にある家について仕様を聞いてみたい」
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    など些細なことでも質問してください。その後こちらから営業でご連絡することもありませんし、気に入らなければブロックもできますので、お気軽にご利用ください。

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    釜石の家  トップライト設置

     目下建設中の「 釜石の家 」はFSU工法過去の設計事例はこちら)で杉の木をふんだんに使用した一人暮らしの建て主のための平屋の住宅です。建て主は現在名古屋に住んでおり、リタイヤ後の生活を、自然豊かで生まれ育った故郷に近い街で過ごしたいという考えで結設計と一緒に土地探しからお付き合いさせていただき、この地に計画することになりました。

     建て主さんは住まい方には具体的なイメージを持っており、災害に備えられる強い住宅、自然エネルギーを使って電気代やガス代など維持費を抑えることが希望でしたので、太陽光発電、太陽熱給湯のソーラーパネルを南に向いた切り妻屋根に載せる計画としています。

    梅雨の合間の6月に上棟し(←前回ブログ参照)、ガルバリウム鋼板の屋根が葺かれ、開口部にはサッシが入り、だんだんと家の体をなしてきました。

    工事中、敷地の南側から見た写真

     ご覧のとおり居室は陽当たりのいい南側に配置されていますが、一部、奥まっていて光が届かない箇所があり、北側の屋根にトップライトを設置しています。雪の多い地域ではトップライトの上部に通称「ジャンプ台」と呼ばれる積雪対策を施工します。あたかもジャンプ台のような急勾配を付けてトップライトの上部や周辺部に降り積もった雪が溜まらないようにするのです。(参考:日本ベルックス 積雪用鋼板横葺き施工参考例) 

    施工中のお手製ジャンプ台を頂部から見下ろしたもの

     今回は、施工者の方の経験から両脇に雪が流れるような形状に板金を製作していただきました。岩手の中でも特に雪深い遠野市の施工者ならではの配慮です。雪対策だけでなく頂部から流れてきた雨水もトップライトにかからずに流れやすくなっています。

    トップライトを中から見た様子

     トップライト直下はキッチン、水回りスペースに続く通路になります。北側からの光は直射日光のように強烈ではなく明るく安定していますので、日中は照明だけに頼らない明るさをもたらし、省エネにも寄与してくれそうです。

     今回の現場では電気、設備の施工者の方たちとも打ち合わせをしました。FSU工法の配線や配管工事は、同じ木造の在来工法と違って内装が構造材が現しになるこの工法ならでは難しさがあります。それらを計画的にうまく隠す必要があるのですが、そこをよく理解していただけて施工されていました。

     また、設計段階で分電盤の位置などから ここが最適だろう と指定していた電気の引き込み位置では、道路上で電線が横断するため規定の高さが取れず、位置を変更することにしました。(参考:東京電力 引込線地上高および離隔について

     私たちの事務所から「 釜石の家 」までは遠く、現場まで片道6時間かけて工事監理に行きますが、そのたびに得るものや気づきがあります。待ち遠しい完成までは、あと2か月程度です。


    太陽光発電 設置相談と基礎蓄冷熱設備との相性 ~十年前の建主さんからのお便り2

    前回紹介した「無垢厚板壁の家の熱帯夜での睡眠 ~十年前の建主さんからのお便り1」のブログの続きです。

    建て主さんから、最近の高騰する電気代、 太陽光発電 の設置、エコキュート、基礎蓄冷熱設備、建物の蓄熱性、等々、寝室のエアコンや熱帯夜の睡眠に関連して、まさにタイムリーな相談メールを頂き、私からの返信メールで始まるやりとりを紹介させていただきます。 前回のブログはこちら


    「 太陽光発電 」相談への返信

    A・N 様
    大変ご無沙汰しております。返信が遅くなりすみません。返信できずにいたのは、自分の怠惰もありますが、ソーラー発電をどうするかという課題は、ソーラー発電をすべきではあるが、どのメーカーでどう工事をするべきか、蓄電池も設置するか、ゼロ円で設置しますと言うところもあったり、海外メーカーの特に中国メーカーが安いということで設置し、遠い将来廃棄する場合についてはどうするかなど、どこも確かなことを謳っておらず、補助金も各県色々流動的で、結論出せずにいたからでもあります。太陽光発電設備の設置助成事業|東京都 こちら(tokyo.lg.jp)

    A・Nさんの家は、南向き切妻屋根、基礎蓄冷熱設備、エコキュート、木の無垢材を使った工法(FSU工法・FM・DEWS工法)と、確かにソーラー発電向きです。
    今、売電価格が買電価格の半分以下でもあり、設置するなら、できれば蓄電池も一緒に設置すべきと思います。蓄電池を設置しないなら、照明以外のすべての機器を夜間ではなく、昼間に稼働させたいところです。設置工事は、工事者や設計者に頼まなくても、A・Nさん(の調査と整理能力)なら自分で直に依頼した方が安上がりです。
    どの程度のKWのパネルと蓄電池を置けばよいかも(代理店が)アドバイスしてくれるかと思います。

    将来のEV自動車についてもどうしたいか、予算はどう考えているか、等も話して、見積もって頂くといいです。代理店を紹介しますので、一度来ていただいて、状況を話して見積もって頂くのがいいかと思います。
    屋根の図面や年間の電気使用量と予算含めて書面化してメールし、最初に凡その見積もりを頂いてから会うのもありかと思います。ここ一年分の電気料金の領収書を用意しておくと、どの程度のワットのパネルと蓄電池があればいいかもアドバイスしてくれると思います。
    なにか懸念があれば連絡ください。手伝えることはします。最終的に完成したら、経過も含めて教えていただけると、私たちの参考にもなり、ありがたいです。よろしくお願いします。
    結設計 藤原

    「太陽光発電」EV自動車への蓄電 職場の事例

    結設計 藤原様
    お世話になっております。ご返信ありがとうございました。アドバイスのとおり、ひとまずご担当者様にメールをしてみました。お話を聞いてプランを詰めていきたいと思います。
    電気代はけっこう節約している方だと思うのですが、年間で37万ほどでした。これで深夜電力が1.5倍になるとなかなかのインパクトになりそうです。

    蛇足の話ですが、静岡の会社の3階建ての事務所ビルには自家消費用の太陽光パネルを設置して、V2Hの設備を導入しております。
    最初は蓄電池として三菱の軽EVを購入したのですが、電池容量が少ないのと、たまに車として使うときに航続距離の短さがネックになりすぐに売ってしまったのですが、この夏再チャレンジということで、日産のリーフ(電池容量:40kwh)中古を150万ほどで購入しました。新車は電池価格が上がっているためどんどん値段が上がっていますが、程度のいい中古EVは電池容量から考えると相当コスパがいいと思っています。事業用だと太陽光パネルは特別償却ができ、中古のEVは単年一括償却ができるので、個人よりも決断が早く進められますので、導入検討が楽でいいです。
    日中の太陽光を電気やエネルギーに変えて貯めておく、というのはいいソリューションだと思っているので、家でも会社でも積極的に導入していきたいと思います。また経過報告させていただきます。
    S市 A・N

    A・N様
    色々職場での事例状況等含め、ご教授ありがとうございました。
    そうなんです。ソーラーはどうすべきかは、なかなか簡単には判断をしにくいところがあります。
    日産リーフ40KWの蓄電池ですか、確かにそれが一番コスパよさそうですね。当然V2Hを設置してパワーコンディショナーもそれに対応したものにしてあるということですね。さすがですね。よろしくお願いします。
    結設計 藤原昭夫 

    パネルの遮熱効果やリース活用

    結設計 藤原様
    お世話になっております。藤原さんの仰っていることもよくわかります。
    廃棄まで考えたソーラーパネルのライフタイムマネジメントはまだ道半ばとも言えますが、これだけ灼熱の太陽光線が注ぐようになった昨今、太陽光発電でその光を電気に変え、かつ屋根材の一部としての遮熱効果もある太陽光パネルはそれなりに有用なものだと思います。要は見積次第ですが、リースを活用しようと考えています。
    これだけ電気代が上がってくると、リースの手数料を考慮してもすぐに入れるべきかな、と思っています。

    10年前はFITで稼ぐのだ、という流れがあったので、パネル価格も高く、また技術的にも発展途上でちょっと歪んだ構造でしたが、売電価格が下がり、稼ごうという欲も削がれ、技術的にもこなれ、価格も安価になった今は導入時期としては適しています。
    S市 A・N


    以上が現在までのメールのやり取りの凡その文章です。他にも見積もりやシミユレーショングラフ等も頂いていますが、いくらか割愛させて頂いています。

    蓄電・蓄冷熱と家づくり

    東日本大震災での計画停電当時以降、売電利益を期待してソーラー発電を設置する建て主さんが一気に増えました。

    昨今では売電利益もそれほど見込めず、電気代の高騰により売電するより自家消費の目的で設置される方が増えている流れになっています。
    今回の十年前の建て主さんのメールで仰っているように、発電は昼間に限られるので、以前にお薦めした、(1年前に太陽光発電についてまとめたブログです→)電気の使用効率が約1/3ですむヒートポンプ室外機でつくった冷水・温水を昼間のうちに基礎の中に配管で回してコンクリートを蓄冷熱させ、日暮れからゆっくり放出させて家全体を蓄冷熱する基礎蓄冷熱設備の家が極めて有効な時代になってきたと言えます。

    尚、無垢の木材を使用した工法(FSU工法)だとより蓄冷熱が効果的ですが、通常の在来木造工法でも十分効果的であることは数多くの事例で実証済みです。
    (在来木造設計事例の建主さん夏の熱帯夜の睡眠にお薦め石神井公園の家  (yui-sekkei.co.jp)

    記事に関するご質問は、「お問い合わせページ」から、または「LINE」でどうぞ。

    最近のFSU工法の厚壁建て込み中で、これだけの無垢厚壁に蓄冷熱するのでより効果的です。
    最近のFSU工法の厚壁建て込み中で、これだけの無垢厚壁に蓄冷熱するのでより効果的です。

    無垢厚板壁の家の熱帯夜での睡眠 ~十年前の建主さんからのお便り1

    関東都市部に住宅を建てられた建て主さんから、最近の高騰する電気代、太陽光発電の設置、エコキュート、基礎蓄冷熱設備、建物の蓄熱性、等々のご相談から始まり、最近の寝室のエアコンや熱帯夜の睡眠に関連して、まさにタイムリーな相談メールを頂きました。

    木の無垢厚板壁(120㎜)で作られたFSU工法の蓄熱性と、基礎蓄冷熱設備との相性は設計者としては抜群と思って設計していますが、10年住まわれた建て主さんからの生の声が届きましたので、私がくどくど説明するより的確な思考をされているので、ここで紹介させていただきます。

    (基礎蓄冷熱設備とは、基礎にパイプを配管しておき、夏は冷水、冬は温水を流して基礎に蓄冷熱させる方法です。末尾写真参照)


    「結設計様、ご無沙汰しております。S市のA・Nです。

    さて、7月より東電の電気代プランが変更となり、とうとう深夜電力が日中の電力とほぼ同じになります。時代が変わったと感慨深く思います。

    当家が設計・建設された2011年当時は東日本大震災の直後ということもあり、まだ深夜電力プラン+エコキュートは有効でしたが、10年以上経過し、原発停止・化石燃料高、CO2削減の潮流には逆行した状態となり、化石燃料を使った発電で深夜にお湯を貯めるという行為が、ある意味時代に逆行している事になってしまいました。
    (特に冬は一番お湯を使う夕方のお風呂の時間に温度が下がってしまっている)

    元々2011年当時でも太陽光発電は話題になっていたので、当時も導入の検討はしましたが、結設計様がブログであげているとおり、太陽光発電パネルの技術革新のスピードや設置手法における屋根へのダメージなどを考えると前向きにはなれないという、藤原さんの話もあり、屋根自体は太陽光発電に最適な形状ですが、実際には載せなかった、というところです。
    またエコキュートも12年ほどが経過し、近隣の家でもだいたい15年位でどこか壊れる、というのを見ていると、設備更新の時期とも言えます。

    話は長くなりましたが、結設計様でのノウハウも蓄積され、ころあいかなと思いますので、太陽光発電設備増設+エコキュート更新を計画したいです。こちら結設計様に依頼すれば、業者の手配等お願いできるものでしょうか?それとも工務店さんに依頼するものですか?教えて下さい。
    当家は基礎の蓄冷熱暖房を建築時に導入しているため、自家消費で電気が惜しげもなくフルに使えるとなると、様々な最適化ができそうな気がしています。急ぎませんので、お時間あるときにアドバイスいただけたらと思います。

    話は少しズレますが、暑さが厳しいこの頃ですが、木の無垢材の調湿力には改めて感心しています。
    一階は基礎蓄冷熱設備の効果がモロに出ますので、基礎蓄冷熱設備と除湿機を稼働させると、真夏でも非常に快適な状態になりそうです。
    というのも、今までは昼間は電気代のことも頭にあり、基礎蓄冷熱設備はタイマー稼働にして昼間は稼働させていませんでしたが、7月からほぼ電気料金の時間差がなくなったこともあり、24時間稼働させたところ、一気に快適になりました。

    深夜時間のみ除湿機を稼働させていますが、毎日タンクは満タンになります。
    2日ほど除湿機が稼働すると、空間は更に心地よくなった気がします。木の無垢材が貯めていた水分をだいぶ吸い取ってあげて保湿の余力をもたせられたかな?と思っています。
    1階はまだエアコンなしでやれていますし、エアコンをつけないで寝られるのはなにより快適です。1階で布団を引いて寝ている次女が、明らかに涼しくなって快適になったとびっくりしていたので、その通りなのでしょう。
    S市という、標高が低い土地の家としては、湿度のコントロールによる空間の快適さはなかなか得られないものだと感じています。

    奥が子供室で、窓のある外壁が無垢の厚み120㎜の板壁です。

    2階は、どうしても屋根材がガルバリウム鋼板で、現しになっていることから、屋根に断熱材をだいぶ入れているとはいえ、夏の日光が当たると2階全体に熱気がこもっていました。
    なので2階の子供部屋やリビングはエアコンを稼働せざるを得なかったのですが、これも太陽光パネルが座れば、ガルバリウムを覆う遮熱材としての役割も持ちつつ、電気を生み出し日中の消費電力を気にしないでエアコンを稼働させることができ、さらに1階の基礎蓄冷熱設備&除湿機の連続稼働+エコキュートが太陽光発電で実現できれば、システムとしてはほぼ完璧になるのでは、と思っています。

    まだ想像の域ですが、木の無垢材の特徴を最大限発揮できるようなサポート機器が、電力の心配なくフル稼働したらどうなるのか。建築から10年が経ち、また楽しみができています。A・N 」

    私共は意匠設計の事務所ですが、デザインがすべてとは考えてなく、居住性能の調湿機能や木の無垢材を使ったFSU工法やFM・DEWS工法(集成材工法)など、構法の躯体の持つ蓄熱性能等まで、フル活用して、住生活をいかに豊かにするかを、建て主さんの希望に触媒的に働きかけながら実現できればと考えており、それにぴったりなメールの内容でしたので紹介させて頂きました。

    続く 熱帯夜 にどうぞ快適な睡眠を!

    べた基礎底盤の鉄筋に架橋ポリ管を配管し、そこに温(冷)水を通して蓄(冷)熱します。
    熱源は手前二台のエアコン室外機と同様のヒートポンプの大きめの室外機から分岐して配管します。(写真は他の家)

    次回は、ソーラー発電設置の相談内容について、私の返信を含めたメールのやりとりを紹介したいと思います。


    寝室エアコンの風と熱帯夜の睡眠

    エアコンの隠し方
    ベッドがだめで畳が良いという方の場合のエアコンの隠し方

    エアコンの風が苦手と言う方は多いです。暑苦しい夏の夜を、窓を開け放して、風通しで何とか凌ごうとしても、蚊の襲来は網戸で防げても、ガラリ付きの雨戸でもない限り、明け方や街灯の光で寝室が暗くならず、眠りが浅くなる方には、うまくいきません。近年の熱帯夜では、熱中症にならないためにもエアコンの世話にならざるを得ないようです。エアコンが苦手な人には、温度設定も難しく、冷たい風を避けて高めにすると、暑苦しく用をなしません。下げ過ぎても夜中手足が冷えて目覚めてしまい、人によっては偏頭痛に悩まされる方もいます。1時間切タイマーを使っても、やはり途中目覚めます。やっかいなエアコンの活用とその存在の隠し方の例を挙げてみます。

    エアコン露出型取付も壁の間だと目立ちにくい
    入り口上部にガラリでカバーした例

    設計でも、寝室は思うほど簡単ではなく、エアコンの風の向きとそれをどう隠すかもそうですが、部屋の形状と広さでも、壁芯が1間半の間にベッドを縦に置こうとすると、壁との距離が50㎝ほどしか確保できず、もう少し広く欲しくなるとか、ベッドは凹んで寝苦しくなるので畳がいいという方とか、窓の位置も夏の西日の熱が部屋に蓄熱するので避けたい方、夜明けの光で明るくなるのを避け、暗さをコントロールしたい方、等々人によって微妙に違ってくる要素が多くあり、丁寧に検討する必要があります。

    廊下へ出入口の上に設置して壁と同じ色の幕板を設けただけの場合

    エアコンの風が嫌いと言っても、確かな睡眠をとるためや、熱中症にならないためにも近年の熱帯夜ではエアコンを上手に使うしか手はなさそうです。自分の場合、古い効率の悪いエアコンなので、夕べの対処は、寝る前にヤクルト1000を飲んで、暑苦しくなる温度より1度低く、27度でドライにし、風量は最低で、角度を上向きに固定し、朝までかけ続け、タオルケットで夜中寒くならないよう身を包むことで、朝までよく眠れました。皆さんもよく工夫して、ご自愛ください。

    家具の扉と同じ色の幕板を設けてエアコンの存在が気にならなくした隠し方

    馬込の家 もうすぐ完成 和室 (茶室)

    日本の住まいから「 和室 」が消えつつあります。
    結設計でも、和室を設計する機会がだんだん減ってきました。特に本格的な和室は少なくなっています。

    かつては、マンションでも一部屋は和室でしたが、今はほとんどが洋室のみとなり、戸建て住宅でも、ハウスメーカー等で和室を作るにはオプションとして追加を出さなければならなくなっていたりします。

    和室は不要、それが世の中の大半の人々の要望なのかもしれませんが、中には和室が欲しいと思われる方もまだまだいらっしゃると思います。

    馬込の家「 和室 」六帖の寄付きと八帖の広間(襖と紙障子はまだ入っていません
)
    手前が六帖の寄付き、奥が八帖の広間(襖と紙障子はまだ入っていません)


    そういった世の流れのなか、「馬込の家」では本格的な和室(茶室)として京間で造ることになりました。和室の真、行、草の種類分けでは「草」になります。


    六帖と八帖の続き間で、八帖には床の間と脇床があります。茶室として使用するので、炉を切ってあります。裏千家の茶室なので、六帖の寄付きには大炉と(写真では畳の下で見えません)丸窓、壁床があります。
    梅をモチーフにしたいという建主様の想いもあり、床柱は梅の木となりました。建主様が銘木店で探したところ、たまたま梅の木が一本あったということで、これを床柱に使ったらどうかということになりました。

    床柱 梅
    銘木店で見つけた梅の木

    この梅の木は、かなり曲がっているので、どう使うか難しいところでした。施主様と大工の棟梁と私共で色々検討して、必要な条件を整理していくと、段々方向性が見えてきました。最後は、棟梁がうまく納めてくれました。
    曲がっていることでより梅の木らしさが出たように感じます。

    京都の畳屋さんの採寸

    写真の採寸している畳屋さんは、京都の嵯峨藤本畳店さんです。畳は、茶室用の畳表で造っていただきました。
    襖は、京都の表具工房の静好堂中島さんにお願いしました。

    左官屋さんの作業

    その後左官屋さんが内部の壁に、下塗りした後、仕上げのわら入り左官材を塗っていきました。丁寧に作業されていましたが、作業が速いです。あっという間に塗っていきます。

    天井は、杉板クロスに竿縁。本当は、無垢材の杉板を張りたいところでしたが、建物を準耐火建築物にする必要があることから天井には石膏ボード(15mm)を張ることとなり、金額を抑えることも考え杉柾目の敷き目張り風クロス貼としました。その上に竿縁を取り付けています。

    竿縁が杉の無垢材ということもあって、クロスであることに気づかないぐらい違和感がないです。

    壁は、柱が見えているので真壁に見えますがこれも準耐火建築物にするために、石膏ボード(15mm)を構造柱を覆い隠すように貼り、大壁にした上に付け柱を取り付けて真壁に見せています。

    隔てる欄間の欄間板には、梅の彫刻がある欄間板を施主様が古材店で探してきたものを使いました。そのままでは、枠が大きくてこの空間にそぐわない感じがしたので、枠を左官で塗り込み見えないようにしました。それによって、武骨な印象から繊細な印象に変わりました。

    寄付きの壁床

    寄り付きには、壁床があります。壁の上の方にある竹釘に掛け軸を掛けます。

    大工さんをはじめ多くの職人さんが仕事をしてくれることで、家が出来ていきます。

     炉壇など、続きは次回に。

    過去の物件の和室について▷「和室・床の間・飾り棚ギャラリー」としてまとめて紹介していますので、そちらも是非ご覧ください。
    (加藤)


    伊豆高原 「相模湾の見える家」写真撮影

    先日、 伊豆高原 へ「相模湾の見える家」の竣工写真撮影のためお邪魔してきました。
    お庭も整ってからの撮影タイミングで、あいにく梅雨時期となってしまいましたが、天気の様子を伺いながらカメラマンさんと共に待機させていただく時間には、デッキで育てているハーブの摘みたてハーブティーを頂いたり、建て主さんともいろいろとお話しすることも出来て良かったです。
    静寂で鳥のさえずりが響き、別荘地ということもありますが、家では無いような非日常的な特別な空間のように思えました。
    建て主さんは以前は都心に住んでいて、「相模湾の見える家」を新築し移住してきました。引き渡しをしてからおよそ半年が経ちましたが、特に不便な事も無く、とても快適に過ごされているとのお話が聞けてホッと安心しました。

    「相模湾の見える家」 伊豆高原,別荘,移住

     

    書斎の本棚に、私たちが苦労して作成した模型たちが、建て主さんによって丁寧にクリアケースの中に収蔵されコレクションの一部となっていたのを見て、感激でした。
    事務所に置いてあった時よりも数倍カッコ良く見えます。

     

    晴れ間にドローンも飛ばせ、無事に撮影を終えることが出来ました。

     

    「相模湾の見える家」の前回のブログは▶こちらです。