投稿者: 藤原昭夫

「国立の家・敷地内崖(段差)活用」アップ

設計事例国立の家・敷地内崖(段差)活用を追加しました。
道路から一段上がった敷地に建てた住宅です。
敷地内に段差がある土地で家づくりを考えている方の参考になればと思います。
是非御覧ください。

この「国立の家」設計をしていく過程で、設計者が考えたことをまとめたブログ記事「設計では何をするのか・間取り計画で着目と工夫した点「国立の家」」も併せて御覧ください。


太陽光 を住宅設計でどう考えるか その1

太陽光 ブログ
【その1 太陽光発電、これまで強いて奨めなかった理由】(4/29up) 
その2 太陽光発電、現在はお奨めするか…】(5/16up)
その3 太陽光についてのレポート~発電利用編~】(5/19up)
その4 太陽光についてのレポート~給湯利用編~】(5/24up)
その5 太陽光活用設計手法~住宅の蓄電池化~】(5/30up)

太陽光発電、これまで強いて奨めなかった理由

これまで何件か太陽光発電パネルを乗せた設計をしましたが、積極的には奨めてはいませんでした。最近地球温暖化での脱炭素やSDGs対応で、国の後押しもあり、太陽光発電パネルを屋根に載せることを検討する方が多くなってきたようです。しかし売電価格11年前の48円/kWhから2022年は17円/kWhになり、今では最低の買電価格19.88円/kWhを下回っています。設置後10年間はFIT制度により売電価格が維持されますが、卒FITを迎えた10年後の売電価格はさらに下がり8.5円/kWh程度だそうです。そうなると売電を目的として設置をする方よりも、今後電気料金がさらに上昇すると見込んで自家用消費のために設置する方が多いと思われます。

これまで太陽光パネルを住宅の屋根に乗せることを強く推奨はしませんでしたが、色々考え直すこともあり、改めて検討してみたいと思います。但し今後提示する数値は現場での感覚的報告のためアバウトで、かつ変化している場合もあり、実際での採用時にはご自分でも再確認ください。

まず、なぜ強く推奨しなかったのか、その当時の理由を挙げてみます。

1 初期の太陽光パネルは、設置後に得られる電気量の7年分ほどをそのパネルの生産に消費してしまうとのことで、エコになるか疑問を覚えたからです。

2 太陽光パネルは工事費を電気代で回収するのに、10年かかると言われていましたが、発電と蓄電能力は数年でかなり減衰すると言われていました。

3 取り付け方は、パネルメーカー指定の工事者による施工の際、金属葺の屋根面直接ビスを打ち、シールで雨水を止めるやり方が多く、建築と同じ10年補償とは言え、不安を覚えたからです。そこで私は乗せる場合の屋根仕上げや、取り付け方は色々安全な対策を施しました。

4 建築全体の予算が限られている場合が多く、建物完成後でも施工可能な太陽光パネルより、建築工事中でないと施工できないより重要な他の仕様を優先しました。これには今後発電能力の高い製品が出る可能性もあるだろうと考えていたこともあります。

以上が太陽光発電を今まで、私たちが強く推奨していなかった理由です。ですが、太陽光発電が出始めたころから性能も進化していることや、環境や防災に対する意識の高まってきたことなど、状況が変化していったこともあり、現在は考えが変わってきています。

現在の考えを、次回その2 太陽光発電、現在はお奨めするか…(2022年5月16日アップしました)にレポートします。これから数回にわたり太陽光ブログを書きますので、よろしくお付き合いください。

太陽光発電パネルの取り付け工事例。道路面から殆ど見えない南面と西面の屋根に施工しました。

 


地縄張りと地鎮祭(相模湾が見える家)

地鎮祭の前に建物が敷地のどこに建つか、壁の位置を紐で示した地縄張り

先週土曜日、伊豆高原で地鎮祭に立ち会ってきました。白い紐が建物の壁の位置です。その周囲の境界との距離が最もベストな位置になっているかを確認するために地縄を張って確認します。

北側隣地の樹木が空に映えていて気持ちの良い日よりでした。

こちらの建て主さんが私共を知ったきっかけは、設計事例にもある「伊豆の家 」とのことです。伊豆の家の建て主さんが生まれ故郷に移住するということで、土地建物を売りに出され、それを見た今回の建て主さんが気に入って頂き、私共に訪ねて来られたとのことでした。伊豆の家を購入して改修するか、他の土地に新たに建てた方がいいか、話を聞きにいらっしゃいました。つまり18年前の自分と今の自分が競い合うことになり、昔の自分より秀でていたかどうかは定かでありませんが、何とか今の私に進めさせていただくことになり、地鎮祭の運びとなりました。

建物中央南向きに竹を4本立て、祭壇をセットして神主さんが祝詞をあげています。

伊豆高原には今回の家で、私どもが設計した住宅が、「伊豆高原の家 」を含めて3軒建つことになります。当然ながら帰りに伊豆高原の家に立ち寄ってご挨拶させていただきました。元気に暮らしていらっしゃって、相変わらず庭づくりに精を出されていて、益々輝きを増していました。お暇する際、何も手土産持たず立ち寄ったのに、私と藁科に庭の竹林で取れた筍をお土産にいただいてしまいました。

筍を取られた竹林は整備が最も厄介なのですが、しっかりと手入れがされていました。
庭の中央に見事な盆栽が新しく据えられていました。

 


「崖上桜の家」アップ

設計事例崖上桜の家を追加しました。
二段擁壁の崖上に建てた 崖上の家 です。
崖上の土地で家づくりを考えている方の参考になればと思います。

是非御覧ください。


あきる野M邸ー崖下の家ー 上棟

崖下の家上棟
崖の下に家を建てる

あきる野M邸上棟しました。崖と道路に挟まれた南北に細長い敷地に建つ平屋建てです。
裏がすぐ崖になっている土地で、崖下の土地に建てる家です。がけや擁壁下の土地の場合、通常はがけ・擁壁から距離を取って建てる必要があるので、崖・擁壁からの距離が取れないこのような敷地の場合は、通常の建て方では木造の家は建てられません。

「がけ」とは地表面が水平面に対し30度を超える角度をなし、かつ、その高さが2メートルを超える土地をいいます。

※がけ地近くの敷地に対する制限等は、その土地がある都道府県の「がけ条例(崖条例)」によります。

がけや擁壁のある敷地例についてのブログ記事▷「崖や擁壁のある敷地の計画、県条例に注意」もご覧ください。

工事を始める前の敷地の様子。
敷地の西側(写真左)が「がけ(崖)」で、正面の幅が狭い平らな部分に建物を建てていきます。

 

崖の下に家を建てるには

仮にこの崖が崩れた場合、そのまま何も考えずに崖下に建てた建物は、土砂に埋まってしまうことになってしまします。

そのため、このがけの崩壊に対して安全であるための対処をしなければなりません。

地盤が強固で崩壊しないことを証明すること(がけの地盤調査・構造計算が必要)という方法もありますが、強固ではない崖の方が多いので、この方法が取れる崖は少ないと思います。

崖下に家を建てる場合、現実的な方法としては下記の3つの方法が考えられます。

1.崖から十分に距離をとる。
  (崖の上端から、崖の高さの2倍以上の距離をとる)

2.崖と建物の間に土砂を受け止める土留めをつくる。

3.建物内への土砂の流入を食い止める壁を鉄筋コンクリート造等でつくる。

その他にも、擁壁を設置する方法もありますが、工事費がかなりかかるので、ひとつの住宅を建てるためにそこまでお金を掛けるのは難しいと思います。

この敷地の場合は、建てられる平らな部分が狭いので、崖から十分に距離をとることはできません。敷地の外になってしまいます。
また、距離がないことから崖と建物の間に土留めを設けることもできません。

そのため、上記3番の建物内への土砂の流入を食い止める壁をつくる
方法を採用し、がけに面した壁を桁下高さまで鉄筋コンクリート造としました。

崖が崩れたとしても、このコンクリートの壁で受け止めるようになっています。

写真左側の色がグレーの部分が鉄筋コンクリート造の壁です。このコンクリートの壁で、崖が崩れた際には土砂が家の中に入ってくるのを防ぎます。


このコンクリートの壁は土砂の建物内への流入を止めるためのものなので、このコンクリート壁には窓等の開口部をつくることは出来ません。窓をつくったら、崖が崩れたとき土砂が家の中に入ってきてしまうためです。
ただしその範囲は土砂を受ける部分なので、このコンクリート壁の上は窓をつくれます。

あきる野M邸 断面図
あきる野M邸 断面図

大工さんの仕事

東側の見晴らしが良い

リビングから東側をみたところ。目の前は道路で、道路の向こう側も崖で下がっているため、眺めはとても良いです。

大工さんの軒先現寸図

私が作図した屋根先端の詳細図を基に、大工さんが合板に現寸図を描いているところ。この現寸図に垂木を載せて加工のための線を垂木に写して、垂木先端の加工をしていきます。

垂木軒先部分

加工して桁上に設置した垂木。先端が鋭角になっている部分が、現場で大工さんが加工したところです。
屋根の勾配は、結設計では珍しい4寸5分勾配。

幣串


「幣串」
を飾って建て方作業終了です。
幣串(へいごし・へいぐし)について知りたい方は、過去記事▷「幣串」をご覧ください。(加藤)

後日追記
完成した「あきる野の家」の紹介記事を設計事例に掲載しました。
こちらも是非ご覧ください。


設計では何をするのか・間取り計画で着目と工夫した点「国立の家」

住まいが間取り計画で全く違ってしまうということを、先日の内覧会の報告を兼ねてお話します。

内覧会の終り頃、建て主さんが参考にと、この住宅になる前、他所から提案頂いた別の案を複数見せて頂きました。
それを外郭の間取りだけですが見比べ、是非ではなく、同じ条件でも、解釈や優先順位の付け方で、基本的なことが如何に違ってくるか、比較してみたいと思います。

住宅を建てる前の敷地の様子。北側道路の間口6.6mの敷地で、南北に長く、道路から6m程の奥が1.2m高くなっています。
北側道路の間口6.6mの敷地で、南北に長く、道路から6m程の奥が1.2m高くなっています。

上の図が南隣地の建売住宅を含んだ敷地図で、対象敷地が内覧会の家の敷地です

「設計とは与えられた条件内で最適解を得るための配慮と工夫である」と私たちは考えます。(配慮事項は“私たちの考え方”の▷設計作法(デザインルール)参照

設計条件は、敷地内外の形状や近隣状況、予算、居住者の要望、社会や時代状況、法規制、等々含みます。
プロなら誰が設計しても同じようになるだろう、と思われがちです。しかし実際比べてみると千差万別で、そこに住宅設計の妙味があります。違いを生みだすのは、設計者のスタンスはもちろん、条件内での理想を求める探求の度合い、経験や価値観、嗜好や見識による発想の違い、与条件の解釈の仕方と読み込む深さや優先順位、解決のための工夫等で変わります。
今回内覧会を行った「国立の家」の場合、敷地が段差のある特殊な形状で、嗜好が入りにくい厳しい要素があったので、予算が同じなら、設計は誰がしても似たような案になるのでは、とも思えたのですが。

 

南隣家の二軒の建売住宅用の敷地が整備された写真で、そのブロックの手前がこちらの対象敷地です。 尚、私どもが提案を考える段階ではどんな建物が建つか不明でしたが、南敷地の広さから総二階建てがこちらの境界近くまで寄せて建つだろうということは予測できました。

〇他からの提案1

他の方から提案された3階建て間取りを私どもがスケッチしました。表示は主な部分だけ記載しています。

北側道路側に二台分の駐車場を用意し、土工事に余分な費用をかけないよう、建物を南に寄せて高い地盤に建てる考え方です。南隣家からのプライバシー保護及び道路からのバリアーフリーは諦め、1階に居間食堂と4.5畳のデッキを設け、2階に陽の入るセカンドリビングを配したところが特徴的です。3階に西側天井の下がった小屋裏収納を配し、各室の収納不足を補おうとする案のようです。

〇他の提案2

中庭が欲しいとの建て主の新たな要望に、提案してきたのが下のスケッチの間取りだったようです。

やはり低い土地に二台分の駐車場を設け、建物は数段外階段を上った高い土地に、南隣家から覗かれないよう南境界に寄せた総二階建てのようです。南の陽光は諦め、東側開放のコの字型のデッキスペースを4.5畳分の広さに設け、東から陽光を得る考え方です。この他の設計者にも案を求めても、似たような案だったようです。このように他の案を見ると、陽光を得ようとする優先順位は設計者によって大きく異なることがよく分かります。

〇提案3(私たちの案)

駐車場は、地下扱いの開放された車庫と道路までの縦列駐車で二台分確保した、地下階入りの玄関です。一階は高い地盤にさらに1mほど高い基礎で、地下階にのせた床のレベルと合わせました。東側開放のコの字型の中庭を12,5畳ほど確保し、南側に平屋の客室を寄せ、その屋根越しに冬至の陽光が居間食堂に入る、地下一階地上二階建て案です。

敷地半ばの1.2mの段差に着目し、高い地盤からさらに1.0mほどの高基礎の1階とすることで、地下車庫を含めた三層建ての建築が可能にしました。各階に将来用のエレベータースペースを設け、道路からのバリアーフリーの可能性を残し、南側の客室は平屋にすることで、南隣家の二階からの視線を遮りつつ、冬至の陽光を屋根越しに居間に入れることも可能にしました。

私たちが設計で何をするか・着目と配慮した点と工夫した点

・南隣地に建った建売住宅の二階窓と、北側道路から6m付近の敷地中央部の1mほどの高低差に着目しました。

対象敷地は手前の擁壁ブロック辺りから南が1m程高くなっています。

・建物位置を道路側に寄せて南側に庭を取り、道路レベルに合わせて総3階建てとすると、土の掘削量が多くなりコストアップが予想されます。それと上の写真にある南隣家からプライバシーを確保するためには、南隣家際に5m程の高い目隠し塀を必要とし、コストアップとなります。庭も住まいの一階も殆どが日影になると予想されます。かと言って低い道路側を駐車スペースにし、南の高い敷地に建てると南から陽ざしの入らない住まいになってしまいます。

敷地から北側道路方向の風景で、道路の向こう側も地盤は高くなっていることが見て取れます。

・単純な間取りや階層構成では問題を解消できないと考え、敷地状況や依頼条件および法的規制を考慮して、各スペースの面積配分と理想的全体構成をよく検討して、道路際の駐車スペースの上を活用することとしました。その上で全体予算との関係で空間構成をどうするべきかを検討を重ねていきました。敷地周囲の各住宅の敷地も道路より1.2mほど高くなっていることが見てとれ、そこを上手に活用しようと思いました。

北側の道路向こうに緑が多く借景に活用できそうです。

・建物の壁面の北端まで高い地盤面の擁壁を延長して建物の東西を囲い、平均地盤面を可能な限り高く設定し、車庫スペースを地下室扱いにすることで、三層ではあっても、施工単価アップ仕様となる3階建て建築は回避しました。

駐車スペースは当初予算削減のためシャッターのない開放車庫とし、玄関も地下入りです。車庫の奥行きは上の階の間仕切りに合わせ、高い敷地を少し削って、道路から縦列で二台分を確保しました。上の階の保温のため車庫天井と周囲のコンクリート壁を上から60㎝分の高さを、コンクリートと似た仕上げの素材の断熱材を探して覆ったため、壁の途中に段差が生じています。

・車庫と玄関を地下化することで地下1階、地上2階建てとし、居間、食堂、キッチンは二層目の一階に設けました。

一階は道路より1.2m高い地盤にさらに1m程の高基礎としたレベルにあり、そのため1階の窓が南隣家のアプローチを通る人から覗かれません。その上の2階には個室・寝室・納戸を配しています。建物形態の全体的意匠操作は、敷地形状や法規制に抗わず導かれるままに決めました。

・次に、各階で適切となる位置に階段とその脇に将来用エレベータースペース(バリアーフリー)を確保しました。

階段は風通しの良い、蹴込み板のない階段ととしていて、階段の脇が将来用のエレベータースぺースとして確保したスタディーコーナーで、地階と2階は収納にしています。

・居間と連続する階に、中庭を囲うように客室へ通じる廊下を設け、そこに洗面浴室等の水回りを配しています。

向こうが居間で左が水回りとパントリー、右が中庭で、壁厚を利用して本棚を仕込んでいます。

・客室を一階の南境界に寄せて、居間・食堂との間に中庭を設け、客室の屋根越しに陽光が入る配置にしました。

二層部分の一階は高基礎として、三層部分の二層目にあたる一階レベルに合わせ、客室は平屋にして、屋根を南隣家の窓から居間が見えない、かつ冬至の陽光が屋根越しに入る高さとしています。中庭の広さを3間×3間に満たなかったので、東側を開放したコの字型の中庭とし、その殆どをデッキスペースにし、解放された境界はウッドフェンスを立て、前に植栽を施しました。

・居間と中庭が一体化するように床レベルを合わせ、冬至でも日差しがたっぷり入り、植栽も目に入ってきます。

夏は居間の上の階のベランダで陽射しは遮られ、中には入りません。このように日差しに対するこだわりは、他の計画を拝見すると、設計者によって大きな違いが出る要素かもしれません。

・居間の天井を高めにするため、その上の二階の子供室をその2階レベルより80㎝程持ち上げ、その個室への階段の段板間を透かし、1階と2階の気配の感じ合う仕掛けにしています。

食卓には東の窓から朝日が差し、北側の窓は熱損失が大きいので、小さめのピクチャーウインドウとし、道路向かいの緑を借景にして、暮らしに彩を与えらればいいかと思っています。

・2階は中庭を見下ろすように東から陽光が入る寝室と、南からも陽が入る子供室を配しています。

子供室のベランダから下の中庭を見た情景です。


・要望実現の工夫のため着目と検討工夫及び試行錯誤した事項:地下と2階建て部分の基礎の設定と断熱方法、駐車場のコンクリート打ち放しと断熱材処理、地階の界壁仕上げと断熱仕様、駐車場幅、外壁と開口部の仕様と形状、90㎝有効幅の階段と構成方法、床・壁の仕上げ材、本棚、洗面台と窓採光とメディシン及び収納、駐輪場の囲い壁と屋根中止、雨水の駐車場や中庭の排水の仕方、室外機置場、冷蔵庫置き場、照明計画、表札、宅配ボックス、等々。
・この他、工事費低減のため、構造、仕様、防犯、冷暖房、設備、開口部、等々も試行錯誤しながら見直しました。

・今回の計画を通して次のことに気づかされました。条件の優先順位の付け方で間取りが大きく違ってくることは分かっても、その重要度合いまでは理解できず進めざるを得ない方や、さらに最適なプランにたどり着く手立てがなく諦めざるを得ない方が少なくない、ということです。それと土地探しもさることながら土地を決める時に専門家からのアドバイスがあると、もっと工事費用を軽減できる土地が得られ、適切で豊かな住まいをもう少し容易に得られる可能性がある、ということです。私どもも今後は設計だけでなく、土地を探しと、間取りを丁寧に考えることの大切さ広く理解していただくためにプロとしての支援も考えてみようかと思います。(藤原)



自粛明け、実物の内覧会いかがですか

色々なことがオンラインでしか体験できない今日、コロナも激減したこの時期、久しぶりに建て主さんのご厚意で新築住宅の実体験の機会を頂きました。自粛明けといっても未だ油断できなく、第六波が始まる前に、少数ですが、私どものことを未だよく知らない方に、オンラインやネットではなく、実体験で知っていただく内覧会を開催します。

造成開始前の敷地からの風景

建て主の依頼条件
〇敷地は国立駅から歩いて10分程の距離の40坪程の広さの北入りの敷地(別紙)に4人家族の住まい
〇建蔽率と容積率は50/100
〇準防火地域
〇軒高7mを超えると日影規制がかかる地域
〇南隣家が近接していて、プライバシーと陽光の確保が難しいことを理解されてか、中庭を希望
〇駐車場1台分と駐輪場4台分を希望
〇できれば将来的にバリアーフリーに対応させ、階段幅を有効90㎝以上に。
〇リビングの天井高を少し高めに。

確かに私どもは「中庭ギャラリー」で紹介しているように、中庭を設けることがよくあり、色々な中庭を設けてきました。今回はさらに敷地に1.2m程の北側傾斜の高低差があり、その中で陽光とプライバシーを確保しながら限られた予算の中で、中庭のある快適な住まいを創るには、様々な計画的難しさや法的限界が内包されていています。多分、何の意識もなく、出来た家を見ていただくと、その平易さに、どう工夫したかを感じてもらえないかと思われます。今回は視覚的出来栄え以上に、敷地条件と希望をどう読み解いて、夫婦と子供二人のための住まいを設計者としてどう考えたかを、質疑交えながらご案内できればと考えています。そのため事前に敷地と周辺環境を示した測量図と建築前の敷地写真及び条件を添付します。自分ならどうするか考えて来ると楽しめるようにしています。というのは住宅設計の専門家はどんなことをしてくれるのか、理解いただけてないのではと、感じさせることが多々あり、単に格好よく作ることぐらいだろうと思っている方に、それだけでない設計者もいることを知って頂きたく開催します。

困難を誘発する要因
〇二階建ての南隣家が境界付近に迫ってあり、南に主庭を設けても、二階から丸見えでプライバシーが損なわれる。
〇単純に道路側に寄せて3階建てにしようとすると、最高軒高が7mを超え、日影規制に触れ、基準以上の日影が及ぼさないことを近隣住民に説明する必要が生じ、手続きも申請期間も大幅に長引く。しかも総三階だと道路(5.4m幅)斜線という高さ規制で道路際から離して建てる必要がある。それと真北方向がわずかに西に振れていることで、西側境界からの北側斜線規制にも触れ、3階部分の西側の部屋を縮小する必要も生じる。さらに3階建てとなると内部の石膏ボードを二重張りにするなど仕様条件と法的規制が増え、工事単価がアップする。
〇中庭のある住まいと階段幅を90㎝m以上に、という希望条件。
〇敷地の途中で1.2m程の段差があることでバリアーフリーと各部屋の十分な広がり感及び陽光をどう確保するのか。
〇総3階建て以外で単純に必用面積を確保しようとすると建蔽率と容積率オーバーになる可能性が大きい。
〇敷地の東西が隣家のアプローチのため、そこを他人が通ることでプライバシーの確保が必用。
〇総二階での中庭では最下階の部屋は自己の建物の影で陽光が望めない。

建築前の段差ある敷地と南側隣地に建つ隣家2軒の写真

計画とできた住まいに興味のある方は下記の内覧会申込フォームから申し込みください。
この「国立の家」は、すでに完成して入居されています。プライバシー配慮のため内覧会は予約制となっております。

希望者が多いような場合は別の機会にさせていただくことがあるかもしれませんが、ご了承ください。
集合場所についてはお申込の方にメールでご案内いたします。

■日 時:2021年11月27日(土)  午後2時~4時(午後2時集合)
■場 所:東京都国立市
■交 通:JR中央線 「国立駅」から徒歩15分程

※ご好評いただき終了しました。ありがとうございました。

 

【お知らせ】

家づくりをご検討の方で、私どもの建物の内覧をご希望される方は、下記フォームよりお申込みください。個別に建て主と相談のうえご案内致します。

    内覧申し込みフォーム

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    見学前に教えて頂きたい事項(任意)

    建築予定敷地住所

    住まわれる家族数とその特性
    (あれば)

    予定敷地面積と敷地の特徴
    (感じている限り)

    ご希望総床面積

    建設予算

    万円


    中庭のある家 | 中庭 タイプ別ギャラリー 実例18軒

    中庭のある家 「空庭舎」中庭の夕景
      

    住宅を設計していく中で、プライバシーの確保が日差しと同じぐらい重要な要件になります。そのための手法として「 中庭 」が極めて有効になります。そこでこれまでの設計事例から特徴の際立った 中庭のある家 の実例を集めて、ギャラリーとして紹介します。


    目次

    結設計の設計事例の中から、建物形状タイプごとに中庭の実例を紹介します。

    1.ロの字型
     中庭の周り(四方)を建物で囲んだタイプ。建物を上空から見るとロの字型に見えます。
     1-1 空庭舎 
     1-2 三ツ沢上町の家
     1-3 坦懐居
     1-4 五枚屋根の家
     1-5 つくばの家
     1-6 方円汎居

    2.コの字型
     三方を建物に囲われていて一方は解放されている中庭
     2-1 鎌倉の家
     2-2 真間川の家
     2-3 三鷹の家
     2-4 市川の家
     2-5 文京区の家
     2-6 碑文谷の家
     2-7 佐倉の家
     2-8 空環居

    3.L字型
     二方を建物に囲われていて二方は解放されている中庭
     3-1 飯能の家
     3-2 菊名の家

    4.坪庭
     光や通風を主目的とした小さめの中庭
     4-1 清浄居
     4-2 深沢の家


    紹介した中庭のリンク先に設計事例も紹介していますが、ホームページの設計事例にない場合、私共著作の「美しく住まいを整えるデザインのルール85」には掲載せていますのでそちらを参照ください。


    1.ロの字型

    中庭の周りを建物で囲んだタイプ。上空から見ると建物がロの字型に見えます。
    中庭を全方向からしっかり囲むため、外部からの視線が気にならないプライベートな空間になります。
    ただし、ロの字型にするには、比較的敷地が広いことが必要です。

    1-1「空庭舎」

    空中庭園の中庭。
    2階にロの字型の平屋をつくり、その中心に中庭がある事例。1階は貸し駐車場。
    2階の住まいに設けた緑豊かな中庭は言わば空中庭園。都心における完全なプライベートな庭園空間を実現しました。

    中庭のある家 空庭舎の 中庭
    典型的な三間角(5.46m×5.46m)の中庭で、2階レベルに設けた事例。広さに殆ど不足を感じません。
    2階にあることで、周囲からの視線を感じることはありません。
    中庭の効果として、風通しが良くなることが挙げられます。
    屋根の上の風により、中庭が負圧になり、中庭から空気が吸い上げられるようになるので、中庭があることで風通しが良くなります。
    中庭のある家 空庭舎の中庭を下から覗く
    中庭の池を泳いでいるメダカが下の駐車場から見えます。(空庭舎

    1-2「三ッ沢上町の家」

    この家は、敷地が接している南道路より建てる場所が1.5mほど低くなっていて、普通に南側に庭を設けると周りの家から覗かれてしまい、プライバシーの確保が難しくなるため、中庭としました

    中庭のある家 玄関から中庭を見る
    玄関を入った先に3間角(5.46m×5.46m)の中庭
    中庭のある家 中庭を中心とした間取り
    中庭のある家 三ツ沢上町の家キッチンからの 中庭
    中庭を挟んで玄関の反対側にあるキッチンから中庭と玄関方向を正面に望むことができます。
    中庭のある家 中庭を中心に各部屋がある
    居間食堂が中庭を望んでいることが分かるように、中庭を中心として計画された家です。
    中庭のある家 和室から中庭
    和室さえも廊下の向こうの中庭から採光していて、中庭をすべての部屋が活用しています。
    中庭のある家 上空から見るとロの字型の家だと分かります
    中庭では風通しが心配されますが、屋根形状から分かるように、少しでも外に風があると中庭は負圧になり、各部屋の外壁側の窓と中庭の窓を開けると、部屋の空気が中庭に引き出されます。

    1-3「坦懐居」

    広い中庭は、屋外での食事スペースや子供達の遊び場でもあるテラスも、また小さな菜園もあります。
    周囲の近隣からは四方に屋根があるため、全く覗かれません。奥に見える格子壁は自転車置き場で、向こうからこちらは見えませんが、帰ってきた気配は居間から分かります。その隣の木製引き違い戸は車庫に通じていて、中庭の工事や引っ越しの物の出し入れに使用されます。

    中庭のある家 広めの中庭
    住まいの周りに庭を設けず、中庭のみということで4.5間×4.5間と広めの中庭事例です。
    これだけの広さがあると、中庭というよりプライバシーが完ぺきな普通の庭と言ってもよいかもしれません。

    1-4「五枚屋根の家」

    プランは広々とした中庭を中心にしたコの字型ですが、大きく開いた南面のプライバシーを確保するために、中庭より80cmほどレベルを下げた低い屋根の駐車場で通りからの視線を遮りながらも居間からの視界を極力妨げない断面構成としました。

    中庭のある家 
    南側の一方が駐車場の5間×4.25間の中庭の事例です。
    中庭というより大きなパティオと言った方がいいかもしれません。
    この中庭(パティオ)の下に、その後地下室を増築し、下の写真のようになりました。
    中庭のある家 中庭の地下に地下室を増築
    リビングの開口部の前に地下室への階段室をガラス張りで増設し、入り口としました。
    中庭のある家 浮造りのコンクリート打ち放し壁の階段
    中庭からこの階段を下りていきますと
    中庭のある家 中庭下の地下室
    中庭の下とは思えない地下書斎と練習場があります。

    1-5「つくばの家」

    3間×3間の四角い中庭を中心に構成された住宅です。
    この中庭は、四方に開かれた敷地において完全なプライバシー空間の確保を可能にしています。又、中庭の床と壁を室内と同材で仕上げ、天井を中庭に向かって開くように勾配を設けることで一体感をもたらします。

    室内を回遊する日常の中で中庭から差し込む光が時間や四季の移ろいと共に様々な表情をみせ、新たな発見を楽しむ事ができる家です。

    中庭のある家 平屋のアウトリビング中庭
    3間角の中庭の床レベルを居間と同じにすることで、アウトリビングにした事例
    中庭のある家 中庭と室内の一体感
    レベルだけでなく居間食堂の床・壁の仕上げも同じにして、中庭との一体感を強調しています。

    1-6「方円汎居」

    敷地が道路より半階分下がっていて、周辺のマンションから見下ろされる場所なので、プライバシーを確保できる建物形状として、ロの字型プランで設計しました。

    中庭のある家 多角形の中庭
    階段上った玄関から見える円弧の中庭の事例です。
    中庭は円形でも外観は正方形で、風通し用に少ない開口部を設けています。
    屋根の上に見えるのは空だけで、プライバシーは完全に守られます。
    屋根からの雨水は開口部の各継ぎ目に設けた細いパイプから室外に放流されます。
    中庭開口部は既製品サッシの全面ガラス張りで、家じゅうの様子と気配が伺えられます。
    各部屋に一日中異なる色合いの日差しが入ります。
    円形と言っても正確には12角形の中庭になります。

    2.コの字型

    中庭の3方を建物で囲んだタイプ。上空から見ると建物がコの字に見えます。
    中庭に対して3つの面が建物になっているので、外部からの視線をほどよくさえぎります。一部が外に面しているため、適度な開放感も確保できる点が魅力です。
    周囲の住宅が密集している敷地の場合は、外に面している部分を壁等で塞いでロの字型のように、外部からの目線が気にならないプライべートな空間にすることも出来ます。
    建物と中庭の両方にしっかり光が入るようにできますが、方角や建物の高さなどにも配慮する必要があります。
    間口に対して奥に長い敷地などで明るさが取りにくい場合などに向いています。

    2-1「鎌倉の家」

    敷地は、間口が狭く南北に奥行のある敷地です。その奥行に沿って西側に細い通路が存在しています。その通路と奥行の長さをどう克服し特性に転化できるかが設計のポイントです。

    通路に沿ってあった既存の植栽を活かし、コの字状プランの間取りにし、中央部に中庭を設け、そこから各室の光を確保しています。二階西南側を部屋にせず、デッキを設け一階北西の部屋に午後からの陽射しも入れる工夫をしています。居間と食堂が南北に離れている気がしますが、むしろ適度な距離で、なかなか快適そうです。

    鎌倉の家の 中庭
    中庭を玄関、階段、二階居間食堂、デッキが取り囲むコの字型の1.5間角の中庭です。
     階段越しの中庭
    鎌倉の家2階からの 中庭
    二階食堂から南側の中庭を望む写真で、向こうの玄関上に部屋がないため中庭に陽が差します。

    2-2「真間川の家」

    南北に細長い敷地の特性を生かす事、「緑に囲まれた生活」を強く希望されている事を念頭に計画を始めました。

    建物のボリュームを南北に分けコの字で囲むように中庭を設け、そこに緑を植えることで個室を除けば室内のどこからでも中庭の緑を眺めるように計画をしました。
    2階の居間と食堂は中庭によってスペースを隔てられますが、それによって居間から食堂を見ると中庭の緑が家の中に取り込まれたように見えます。

    玄関前のコの字型の中庭で階段室を開放した事例
    洗面脱衣室の採光にも活用

    2-3「三鷹の家」

    南北に長く東西方向が狭い敷地なので、車2台分の駐車場を道路よりに確保するとなると、周囲はもちろん、南側にも陽光が差し込むような余裕は取れず、1階の居室には南側からの陽光は期待できません。いわゆる逆転プランの2階居間食堂の総2階建てに近い間取りになります。

    おのずと1階への採光は、何とか設けたコの字形の中庭からになります。この4畳弱の中庭がこの家の重要な役割を果たしてくれることになります。中庭の周囲の壁がすべて2階建ての高さになると、小さい中庭からの光が貧弱になるので、中庭東側の2階南東側角には部屋を設けず、簡単な食事もできる屋外デッキスペースとし、手すりも中庭側はフラットバーにするなどし、できるだけ光を取り入れるようにしています。
    そうすることで、1階の玄関、廊下、個室、階段、2階食堂、居間への光だけでなく、広がり感や解放感、あるいは緑のもたらす安らぎ感も違ってきます。

    玄関正面にあるコの字型の中庭
    南に面した中庭のため、階段・廊下に陽光を確保できています。
    コの字型の中庭を2階西側から東方向を見ています。

    2-4「市川の家」

    周囲に住宅が建て込んでいる旗竿敷地で、プライバシーを確保しつつ光を採り入れることが設計のポイントになりました。
    建物をL字形にすることで、特に明るさの欲しい居間・食堂の南側隣地までの距離を十分とりました。そうして出来たL字のあいた部分をコーナーコートとすることによって、陽光を有効に導きつつ風も通します。2階のデッキを居間から離して南側隣家の影になる部分に設置することでコの字プランになり、1階デッキの上部空間を開放することで、陽光が1階にも届きます。

    一階の部屋に陽光が入ることを考え、二階デッキを遠ざけて設けた中庭の事例です

    2-5「文京区の家」

    住宅密集地で隣家が迫っている敷地であることから、プライバシー確保を重視し、コの字プランの通常開されている一辺を壁で塞いだ事例。明るさと、通風を確保するための中庭。

    中庭を囲む二階回廊のデッキ(著作書参照
    車庫から来客の車の進入も可能にした中庭で、各室が中庭に面して、採光を確保します。(著作書参照

    2-6「碑文谷の家」

    二階リビングの脇にある、グレーチングデッキ床の二間角の中庭です。(著作書参照
    そのデッキ下は車庫兼玄関ポーチとなっていて、中庭デッキからの透過光が注ぎます。(著作書参照

    2-7「佐倉の家」

    高さ6mの敷地擁壁を半円の壁で囲んだ中庭
    (佐倉の家・著作書参照


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    道路からの外観は四角の建物で敷地進入路幅3mです。 (著作書参照

    2-8「空環居」

    道路より1.2m上がった敷地のため、低い塀で囲むだけで、圧迫感なくプライバシーを保てます。
    中庭に面して、廊下、居間、食堂とも全面ガラス張りで、一日中、日差しが十分差してきます。
    室内の扇状の小幅板が勾配に沿って貼られ、軒先迄届きます。
    半円形の屋根で囲まれた中庭の事例
    半円形の屋根で囲まれた中庭の事例
    玄関から中庭沿いの長い曲線の廊下を通って居間に至ります。

    3.L字型

    建物をL字型にし、2面の壁に中庭を隣接させたタイプです。
    庭を囲んでいる壁が少ないため、開放的な雰囲気にできます。
    建物の形状がそれほど特殊ではなく、他の中庭のタイプに比べて最も建物の間取りが自由になります。ただし、中庭の様子が外部から見えやすく、周囲の視線が気になりやすいです。中庭のデザインや配置の仕方によっては、一般的な庭とほとんど変わらない印象になる可能性もあります。

    3-1「飯能の家」

    プライバシーが確保された庭
    その庭に向けて玄関脇の開口を設けました。

    3-2「菊名の家」

    二階デッキの木製手すりを高くすることでプライバシーを確保して中庭風にした事例

    4.坪庭

    光や通風を主目的とした小さめの中庭。
    中庭としては広くないですが、明るさと通風を取り入れることができます。また、樹木を植えることなどで、眺める庭にすることもできます。外部からの視線が気にならないよりプライベートな空間になります。

    4-1「清浄居」

    小さい1.5間角の坪庭でも、引き込み戸を設け、採光と風抜き機能を持ち負けていません。
    地上の庭だけでなく、見上げると切り抜かれた空も見えます。
    浴室は坪庭に解放されています。
    トイレだって坪庭に解放されています。

    4-2「深沢の家」

    地下入り玄関の奥に設けた一畳分の広さの坪庭です。(深沢の家


    中庭は住まいづくりのコンセプトにもなることがある、計画の有効な手法です。本格的庭園となるとプロの造園設計者に依頼することもありますが(伊豆高原の家落葉舎飯能の家空庭舎)、建築のついでに作る簡易な中庭は、設計段階である程度のことを考えて、私どもから提案することが多いです。

    中庭というと、敷地が狭い場合に設けるかのように考えがちです。いま改めて設計事例を見返してみますと、皆、敷地そのものは広く、むしろ庭のプライバシーを確保するために設けていることが多いといえます。

    その理由は、庭として成立させるには最低の広さとして3間角(5.4m四方)を必要とし、その周囲に部屋を配するとなると、むしろある程度広い敷地でないと成立しにくいからです。

    また敷地が広く、平屋建てが可能な場合、各部屋を連ねていくと、居間食堂用の主になる庭にも、道路や外部空間にも接しない部屋が生じて、法的有効採光や通風が確保できないことがあります。その場合、光と通風確保のために坪庭(清浄居)やコの字型の小さな庭を設ける場合もあります。

    三方建物や塀等で囲まれたコの字型の庭は、敷地に十分な庭を設ける余裕がなく、その中で何とか緑や光や通風を確保したくて設ける場合が多いです。この場合、方位によって、陽ざしを取り入れたい部屋が1階にある場合、その対面の部屋は平屋にして陽ざしを遮らないようにしています(鎌倉の家)。敷地が広いのに、コの字型の庭を設けた事例に、庭そのものを計画のメインコンセプトにした「空環居」や「方円汎居」等があります。

    建築計画の参考になれば幸いです。


    浴室を楽しむ・ギャラリー|お風呂を楽しむ家

    窓の外に竹林が広がる浴室で、壁天井は桧の縁甲板(三ッ沢上町の家

    浴室の大きな窓の光が脱衣洗面所まで明るくしています。

    誰もが一度はイメージする温泉宿風に青石と御影石で作り、外も板壁で囲っています。(落葉舎

    浴槽も桧で庭も坪庭風に囲い、涼み台まで設えた浴室(深沢の家

    一室化した洗面脱衣トイレとガラスで仕切った浴室(真間川の家

    近接した隣家があり、低い地窓にし、洗面所一体の浴室(練馬の家

    広い浴室でも窓は小さく確保して庭を見せた事例(五枚屋根の家

    マンションの勾配屋根に天窓を設けた浴室(フラット大井町


    森の中に屋根・壁を半分ガラスで囲って飛び出させたハーフユニットの浴室(一不異二亭

    ベランダを葦簀で囲いバスコートにした事例(等々力の家

    浴室から境界までの少ない余地に植栽を設けた浴室(飯能の家

    市街化調整区域で隣家のない森に接する浴室(聖跡桜丘の家

    大型ハーフユニットバスの出窓から大室山を望む浴室(伊豆の家

    海の見える浴室(岬の家

    自宅裏庭に解放された浴室(北上尾の家

    本格的に浴室洗面所から眺める専用の庭を造った事例(伊豆高原の家

    通常、浴室にこだわるのは男性が多く、女性は洗いやすくメンテナンスの楽な浴室を要望されます。男性が口出すのは浴室ぐらいしかないという事情もあるかもしれません。

    浴室はこだわらないので普通に、と言われても、自分が設計するからには、浴室に限らずあらゆる箇所を、要望や法的責任に関係なく、この程度の機能や快適性と美しさはなきゃいけないでしょう、という余計なお世話的に努めようとするところがあります。

    その筆頭に浴室空間の快適性と他との差別化があります。予算があれば床や壁を石貼りや高価なタイルを貼ったり、高価なユニットバスにすることができますが、予算を加算せずにやれることは少なく、壁・天井と開口部を平易な材料でいじるぐらいしか操作できません。そのため安価な規格のハーフユニットを使い、開口部を有効に活用し、壁・天井に桧の板等を貼ることで、他との違いを表現することがよくあります。

    檜板は手入れが大変では、と心配されますが、お風呂を最後に出る方が、濡れている板壁をタオル等で拭き取っていただければ、カビも発生しにくく、きれいに保てるようです。タイルやユニットバスとは一味違った趣があります。

    それと窓からの眺めや見える小庭で、入浴中の心地よさが左右されるところがあります。他の視線を遮る手立てをしつつ植栽と照明で癒しの空間を何とか提供したいとあがいています。

    さらに少しでも広がりを出しつつ、脱衣洗面所も広くかつ明るくするために、洗面所との間仕切りをガラスにすることもよくやります。もちろん年頃のお嬢さんのいる家は、ブラインドは必須です。

    せっかく自分の家を創るなら浴室も気持ちよい空間にしませんか。