
設計事例に「崖上桜の家」を追加しました。
二段擁壁の崖上に建てた 崖上の家 です。
崖上の土地で家づくりを考えている方の参考になればと思います。
是非御覧ください。
あきる野M邸上棟しました。崖と道路に挟まれた南北に細長い敷地に建つ平屋建てです。
裏がすぐ崖になっている土地で、崖下の土地に建てる家です。がけや擁壁下の土地の場合、通常はがけ・擁壁から距離を取って建てる必要があるので、崖・擁壁からの距離が取れないこのような敷地の場合は、通常の建て方では木造の家は建てられません。
「がけ」とは地表面が水平面に対し30度を超える角度をなし、かつ、その高さが2メートルを超える土地をいいます。
※がけ地近くの敷地に対する制限等は、その土地がある都道府県の「がけ条例(崖条例)」によります。
がけや擁壁のある敷地例についてのブログ記事▷「崖や擁壁のある敷地の計画、県条例に注意」もご覧ください。
工事を始める前の敷地の様子。
敷地の西側(写真左)が「がけ(崖)」で、正面の幅が狭い平らな部分に建物を建てていきます。
仮にこの崖が崩れた場合、そのまま何も考えずに崖下に建てた建物は、土砂に埋まってしまうことになってしまします。
そのため、このがけの崩壊に対して安全であるための対処をしなければなりません。
地盤が強固で崩壊しないことを証明すること(がけの地盤調査・構造計算が必要)という方法もありますが、強固ではない崖の方が多いので、この方法が取れる崖は少ないと思います。
崖下に家を建てる場合、現実的な方法としては下記の3つの方法が考えられます。
1.崖から十分に距離をとる。
(崖の上端から、崖の高さの2倍以上の距離をとる)
2.崖と建物の間に土砂を受け止める土留めをつくる。
3.建物内への土砂の流入を食い止める壁を鉄筋コンクリート造等でつくる。
その他にも、擁壁を設置する方法もありますが、工事費がかなりかかるので、ひとつの住宅を建てるためにそこまでお金を掛けるのは難しいと思います。
崖が崩れたとしても、このコンクリートの壁で受け止めるようになっています。
写真左側の色がグレーの部分が鉄筋コンクリート造の壁です。このコンクリートの壁で、崖が崩れた際には土砂が家の中に入ってくるのを防ぎます。
このコンクリートの壁は土砂の建物内への流入を止めるためのものなので、このコンクリート壁には窓等の開口部をつくることは出来ません。窓をつくったら、崖が崩れたとき土砂が家の中に入ってきてしまうためです。
ただしその範囲は土砂を受ける部分なので、このコンクリート壁の上は窓をつくれます。
リビングから東側をみたところ。目の前は道路で、道路の向こう側も崖で下がっているため、眺めはとても良いです。
私が作図した屋根先端の詳細図を基に、大工さんが合板に現寸図を描いているところ。この現寸図に垂木を載せて加工のための線を垂木に写して、垂木先端の加工をしていきます。
加工して桁上に設置した垂木。先端が鋭角になっている部分が、現場で大工さんが加工したところです。
屋根の勾配は、結設計では珍しい4寸5分勾配。
「幣串」を飾って建て方作業終了です。
幣串(へいごし・へいぐし)について知りたい方は、過去記事▷「幣串」をご覧ください。(加藤)
後日追記
完成した「あきる野の家」の紹介記事を設計事例に掲載しました。
こちらも是非ご覧ください。
住まいが間取り計画で全く違ってしまうということを、先日の内覧会の報告を兼ねてお話します。
内覧会の終り頃、建て主さんが参考にと、この住宅になる前、他所から提案頂いた別の案を複数見せて頂きました。
それを外郭の間取りだけですが見比べ、是非ではなく、同じ条件でも、解釈や優先順位の付け方で、基本的なことが如何に違ってくるか、比較してみたいと思います。
「設計とは与えられた条件内で最適解を得るための配慮と工夫である」と私たちは考えます。(配慮事項は“私たちの考え方”の▷設計作法(デザインルール)参照)
設計条件は、敷地内外の形状や近隣状況、予算、居住者の要望、社会や時代状況、法規制、等々含みます。
プロなら誰が設計しても同じようになるだろう、と思われがちです。しかし実際比べてみると千差万別で、そこに住宅設計の妙味があります。違いを生みだすのは、設計者のスタンスはもちろん、条件内での理想を求める探求の度合い、経験や価値観、嗜好や見識による発想の違い、与条件の解釈の仕方と読み込む深さや優先順位、解決のための工夫等で変わります。
今回内覧会を行った「国立の家」の場合、敷地が段差のある特殊な形状で、嗜好が入りにくい厳しい要素があったので、予算が同じなら、設計は誰がしても似たような案になるのでは、とも思えたのですが。
南隣家の二軒の建売住宅用の敷地が整備された写真で、そのブロックの手前がこちらの対象敷地です。 尚、私どもが提案を考える段階ではどんな建物が建つか不明でしたが、南敷地の広さから総二階建てがこちらの境界近くまで寄せて建つだろうということは予測できました。
他の方から提案された3階建て間取りを私どもがスケッチしました。表示は主な部分だけ記載しています。
中庭が欲しいとの建て主の新たな要望に、提案してきたのが下のスケッチの間取りだったようです。
駐車場は、地下扱いの開放された車庫と道路までの縦列駐車で二台分確保した、地下階入りの玄関です。一階は高い地盤にさらに1mほど高い基礎で、地下階にのせた床のレベルと合わせました。東側開放のコの字型の中庭を12,5畳ほど確保し、南側に平屋の客室を寄せ、その屋根越しに冬至の陽光が居間食堂に入る、地下一階地上二階建て案です。
・南隣地に建った建売住宅の二階窓と、北側道路から6m付近の敷地中央部の1mほどの高低差に着目しました。
・建物位置を道路側に寄せて南側に庭を取り、道路レベルに合わせて総3階建てとすると、土の掘削量が多くなりコストアップが予想されます。それと上の写真にある南隣家からプライバシーを確保するためには、南隣家際に5m程の高い目隠し塀を必要とし、コストアップとなります。庭も住まいの一階も殆どが日影になると予想されます。かと言って低い道路側を駐車スペースにし、南の高い敷地に建てると南から陽ざしの入らない住まいになってしまいます。
・単純な間取りや階層構成では問題を解消できないと考え、敷地状況や依頼条件および法的規制を考慮して、各スペースの面積配分と理想的全体構成をよく検討して、道路際の駐車スペースの上を活用することとしました。その上で全体予算との関係で空間構成をどうするべきかを検討を重ねていきました。敷地周囲の各住宅の敷地も道路より1.2mほど高くなっていることが見てとれ、そこを上手に活用しようと思いました。
・建物の壁面の北端まで高い地盤面の擁壁を延長して建物の東西を囲い、平均地盤面を可能な限り高く設定し、車庫スペースを地下室扱いにすることで、三層ではあっても、施工単価アップ仕様となる3階建て建築は回避しました。
・車庫と玄関を地下化することで地下1階、地上2階建てとし、居間、食堂、キッチンは二層目の一階に設けました。
・次に、各階で適切となる位置に階段とその脇に将来用エレベータースペース(バリアーフリー)を確保しました。
・居間と連続する階に、中庭を囲うように客室へ通じる廊下を設け、そこに洗面浴室等の水回りを配しています。
・客室を一階の南境界に寄せて、居間・食堂との間に中庭を設け、客室の屋根越しに陽光が入る配置にしました。
・居間と中庭が一体化するように床レベルを合わせ、冬至でも日差しがたっぷり入り、植栽も目に入ってきます。
・居間の天井を高めにするため、その上の二階の子供室をその2階レベルより80㎝程持ち上げ、その個室への階段の段板間を透かし、1階と2階の気配の感じ合う仕掛けにしています。
・2階は中庭を見下ろすように東から陽光が入る寝室と、南からも陽が入る子供室を配しています。
・要望実現の工夫のため着目と検討工夫及び試行錯誤した事項:地下と2階建て部分の基礎の設定と断熱方法、駐車場のコンクリート打ち放しと断熱材処理、地階の界壁仕上げと断熱仕様、駐車場幅、外壁と開口部の仕様と形状、90㎝有効幅の階段と構成方法、床・壁の仕上げ材、本棚、洗面台と窓採光とメディシン及び収納、駐輪場の囲い壁と屋根中止、雨水の駐車場や中庭の排水の仕方、室外機置場、冷蔵庫置き場、照明計画、表札、宅配ボックス、等々。
・この他、工事費低減のため、構造、仕様、防犯、冷暖房、設備、開口部、等々も試行錯誤しながら見直しました。
・今回の計画を通して次のことに気づかされました。条件の優先順位の付け方で間取りが大きく違ってくることは分かっても、その重要度合いまでは理解できず進めざるを得ない方や、さらに最適なプランにたどり着く手立てがなく諦めざるを得ない方が少なくない、ということです。それと土地探しもさることながら土地を決める時に専門家からのアドバイスがあると、もっと工事費用を軽減できる土地が得られ、適切で豊かな住まいをもう少し容易に得られる可能性がある、ということです。私どもも今後は設計だけでなく、土地を探しと、間取りを丁寧に考えることの大切さ広く理解していただくためにプロとしての支援も考えてみようかと思います。(藤原)
色々なことがオンラインでしか体験できない今日、コロナも激減したこの時期、久しぶりに建て主さんのご厚意で新築住宅の実体験の機会を頂きました。自粛明けといっても未だ油断できなく、第六波が始まる前に、少数ですが、私どものことを未だよく知らない方に、オンラインやネットではなく、実体験で知っていただく内覧会を開催します。
建て主の依頼条件
〇敷地は国立駅から歩いて10分程の距離の40坪程の広さの北入りの敷地(別紙)に4人家族の住まい
〇建蔽率と容積率は50/100
〇準防火地域
〇軒高7mを超えると日影規制がかかる地域
〇南隣家が近接していて、プライバシーと陽光の確保が難しいことを理解されてか、中庭を希望
〇駐車場1台分と駐輪場4台分を希望
〇できれば将来的にバリアーフリーに対応させ、階段幅を有効90㎝以上に。
〇リビングの天井高を少し高めに。
確かに私どもは「中庭ギャラリー」で紹介しているように、中庭を設けることがよくあり、色々な中庭を設けてきました。今回はさらに敷地に1.2m程の北側傾斜の高低差があり、その中で陽光とプライバシーを確保しながら限られた予算の中で、中庭のある快適な住まいを創るには、様々な計画的難しさや法的限界が内包されていています。多分、何の意識もなく、出来た家を見ていただくと、その平易さに、どう工夫したかを感じてもらえないかと思われます。今回は視覚的出来栄え以上に、敷地条件と希望をどう読み解いて、夫婦と子供二人のための住まいを設計者としてどう考えたかを、質疑交えながらご案内できればと考えています。そのため事前に敷地と周辺環境を示した測量図と建築前の敷地写真及び条件を添付します。自分ならどうするか考えて来ると楽しめるようにしています。というのは住宅設計の専門家はどんなことをしてくれるのか、理解いただけてないのではと、感じさせることが多々あり、単に格好よく作ることぐらいだろうと思っている方に、それだけでない設計者もいることを知って頂きたく開催します。
困難を誘発する要因
〇二階建ての南隣家が境界付近に迫ってあり、南に主庭を設けても、二階から丸見えでプライバシーが損なわれる。
〇単純に道路側に寄せて3階建てにしようとすると、最高軒高が7mを超え、日影規制に触れ、基準以上の日影が及ぼさないことを近隣住民に説明する必要が生じ、手続きも申請期間も大幅に長引く。しかも総三階だと道路(5.4m幅)斜線という高さ規制で道路際から離して建てる必要がある。それと真北方向がわずかに西に振れていることで、西側境界からの北側斜線規制にも触れ、3階部分の西側の部屋を縮小する必要も生じる。さらに3階建てとなると内部の石膏ボードを二重張りにするなど仕様条件と法的規制が増え、工事単価がアップする。
〇中庭のある住まいと階段幅を90㎝m以上に、という希望条件。
〇敷地の途中で1.2m程の段差があることでバリアーフリーと各部屋の十分な広がり感及び陽光をどう確保するのか。
〇総3階建て以外で単純に必用面積を確保しようとすると建蔽率と容積率オーバーになる可能性が大きい。
〇敷地の東西が隣家のアプローチのため、そこを他人が通ることでプライバシーの確保が必用。
〇総二階での中庭では最下階の部屋は自己の建物の影で陽光が望めない。
計画とできた住まいに興味のある方は下記の内覧会申込フォームから申し込みください。
この「国立の家」は、すでに完成して入居されています。プライバシー配慮のため内覧会は予約制となっております。
希望者が多いような場合は別の機会にさせていただくことがあるかもしれませんが、ご了承ください。
集合場所についてはお申込の方にメールでご案内いたします。
■日 時:2021年11月27日(土) 午後2時~4時(午後2時集合)
■場 所:東京都国立市
■交 通:JR中央線 「国立駅」から徒歩15分程
※ご好評いただき終了しました。ありがとうございました。
【お知らせ】
家づくりをご検討の方で、私どもの建物の内覧をご希望される方は、下記フォームよりお申込みください。個別に建て主と相談のうえご案内致します。
住宅を設計していく中で、プライバシーの確保が日差しと同じぐらい重要な要件になります。そのための手法として「 中庭 」が極めて有効になります。そこでこれまでの設計事例から特徴の際立った 中庭のある家 の実例を集めて、ギャラリーとして紹介します。
結設計の設計事例の中から、建物形状タイプごとに中庭の実例を紹介します。
1.ロの字型
中庭の周り(四方)を建物で囲んだタイプ。建物を上空から見るとロの字型に見えます。
1-1 空庭舎
1-2 三ツ沢上町の家
1-3 坦懐居
1-4 五枚屋根の家
1-5 つくばの家
1-6 方円汎居
2.コの字型
三方を建物に囲われていて一方は解放されている中庭
2-1 鎌倉の家
2-2 真間川の家
2-3 三鷹の家
2-4 市川の家
2-5 文京区の家
2-6 碑文谷の家
2-7 佐倉の家
2-8 空環居
3.L字型
二方を建物に囲われていて二方は解放されている中庭
3-1 飯能の家
3-2 菊名の家
4.坪庭
光や通風を主目的とした小さめの中庭
4-1 清浄居
4-2 深沢の家
紹介した中庭のリンク先に設計事例も紹介していますが、ホームページの設計事例にない場合、私共著作の「美しく住まいを整えるデザインのルール85」には掲載せていますのでそちらを参照ください。
中庭の周りを建物で囲んだタイプ。上空から見ると建物がロの字型に見えます。
中庭を全方向からしっかり囲むため、外部からの視線が気にならないプライベートな空間になります。
ただし、ロの字型にするには、比較的敷地が広いことが必要です。
空中庭園の中庭。
2階にロの字型の平屋をつくり、その中心に中庭がある事例。1階は貸し駐車場。
2階の住まいに設けた緑豊かな中庭は言わば空中庭園。都心における完全なプライベートな庭園空間を実現しました。
この家は、敷地が接している南道路より建てる場所が1.5mほど低くなっていて、普通に南側に庭を設けると周りの家から覗かれてしまい、プライバシーの確保が難しくなるため、中庭としました
広い中庭は、屋外での食事スペースや子供達の遊び場でもあるテラスも、また小さな菜園もあります。
周囲の近隣からは四方に屋根があるため、全く覗かれません。奥に見える格子壁は自転車置き場で、向こうからこちらは見えませんが、帰ってきた気配は居間から分かります。その隣の木製引き違い戸は車庫に通じていて、中庭の工事や引っ越しの物の出し入れに使用されます。
プランは広々とした中庭を中心にしたコの字型ですが、大きく開いた南面のプライバシーを確保するために、中庭より80cmほどレベルを下げた低い屋根の駐車場で通りからの視線を遮りながらも居間からの視界を極力妨げない断面構成としました。
3間×3間の四角い中庭を中心に構成された住宅です。
この中庭は、四方に開かれた敷地において完全なプライバシー空間の確保を可能にしています。又、中庭の床と壁を室内と同材で仕上げ、天井を中庭に向かって開くように勾配を設けることで一体感をもたらします。
室内を回遊する日常の中で中庭から差し込む光が時間や四季の移ろいと共に様々な表情をみせ、新たな発見を楽しむ事ができる家です。
敷地が道路より半階分下がっていて、周辺のマンションから見下ろされる場所なので、プライバシーを確保できる建物形状として、ロの字型プランで設計しました。
中庭の3方を建物で囲んだタイプ。上空から見ると建物がコの字に見えます。
中庭に対して3つの面が建物になっているので、外部からの視線をほどよくさえぎります。一部が外に面しているため、適度な開放感も確保できる点が魅力です。
周囲の住宅が密集している敷地の場合は、外に面している部分を壁等で塞いでロの字型のように、外部からの目線が気にならないプライべートな空間にすることも出来ます。
建物と中庭の両方にしっかり光が入るようにできますが、方角や建物の高さなどにも配慮する必要があります。
間口に対して奥に長い敷地などで明るさが取りにくい場合などに向いています。
敷地は、間口が狭く南北に奥行のある敷地です。その奥行に沿って西側に細い通路が存在しています。その通路と奥行の長さをどう克服し特性に転化できるかが設計のポイントです。
通路に沿ってあった既存の植栽を活かし、コの字状プランの間取りにし、中央部に中庭を設け、そこから各室の光を確保しています。二階西南側を部屋にせず、デッキを設け一階北西の部屋に午後からの陽射しも入れる工夫をしています。居間と食堂が南北に離れている気がしますが、むしろ適度な距離で、なかなか快適そうです。
南北に細長い敷地の特性を生かす事、「緑に囲まれた生活」を強く希望されている事を念頭に計画を始めました。
建物のボリュームを南北に分けコの字で囲むように中庭を設け、そこに緑を植えることで個室を除けば室内のどこからでも中庭の緑を眺めるように計画をしました。
2階の居間と食堂は中庭によってスペースを隔てられますが、それによって居間から食堂を見ると中庭の緑が家の中に取り込まれたように見えます。
南北に長く東西方向が狭い敷地なので、車2台分の駐車場を道路よりに確保するとなると、周囲はもちろん、南側にも陽光が差し込むような余裕は取れず、1階の居室には南側からの陽光は期待できません。いわゆる逆転プランの2階居間食堂の総2階建てに近い間取りになります。
おのずと1階への採光は、何とか設けたコの字形の中庭からになります。この4畳弱の中庭がこの家の重要な役割を果たしてくれることになります。中庭の周囲の壁がすべて2階建ての高さになると、小さい中庭からの光が貧弱になるので、中庭東側の2階南東側角には部屋を設けず、簡単な食事もできる屋外デッキスペースとし、手すりも中庭側はフラットバーにするなどし、できるだけ光を取り入れるようにしています。
そうすることで、1階の玄関、廊下、個室、階段、2階食堂、居間への光だけでなく、広がり感や解放感、あるいは緑のもたらす安らぎ感も違ってきます。
周囲に住宅が建て込んでいる旗竿敷地で、プライバシーを確保しつつ光を採り入れることが設計のポイントになりました。
建物をL字形にすることで、特に明るさの欲しい居間・食堂の南側隣地までの距離を十分とりました。そうして出来たL字のあいた部分をコーナーコートとすることによって、陽光を有効に導きつつ風も通します。2階のデッキを居間から離して南側隣家の影になる部分に設置することでコの字プランになり、1階デッキの上部空間を開放することで、陽光が1階にも届きます。
住宅密集地で隣家が迫っている敷地であることから、プライバシー確保を重視し、コの字プランの通常開されている一辺を壁で塞いだ事例。明るさと、通風を確保するための中庭。
建物をL字型にし、2面の壁に中庭を隣接させたタイプです。
庭を囲んでいる壁が少ないため、開放的な雰囲気にできます。
建物の形状がそれほど特殊ではなく、他の中庭のタイプに比べて最も建物の間取りが自由になります。ただし、中庭の様子が外部から見えやすく、周囲の視線が気になりやすいです。中庭のデザインや配置の仕方によっては、一般的な庭とほとんど変わらない印象になる可能性もあります。
光や通風を主目的とした小さめの中庭。
中庭としては広くないですが、明るさと通風を取り入れることができます。また、樹木を植えることなどで、眺める庭にすることもできます。外部からの視線が気にならないよりプライベートな空間になります。
中庭は住まいづくりのコンセプトにもなることがある、計画の有効な手法です。本格的庭園となるとプロの造園設計者に依頼することもありますが(伊豆高原の家、落葉舎、飯能の家、空庭舎)、建築のついでに作る簡易な中庭は、設計段階である程度のことを考えて、私どもから提案することが多いです。
中庭というと、敷地が狭い場合に設けるかのように考えがちです。いま改めて設計事例を見返してみますと、皆、敷地そのものは広く、むしろ庭のプライバシーを確保するために設けていることが多いといえます。
その理由は、庭として成立させるには最低の広さとして3間角(5.4m四方)を必要とし、その周囲に部屋を配するとなると、むしろある程度広い敷地でないと成立しにくいからです。
また敷地が広く、平屋建てが可能な場合、各部屋を連ねていくと、居間食堂用の主になる庭にも、道路や外部空間にも接しない部屋が生じて、法的有効採光や通風が確保できないことがあります。その場合、光と通風確保のために坪庭(清浄居)やコの字型の小さな庭を設ける場合もあります。
三方建物や塀等で囲まれたコの字型の庭は、敷地に十分な庭を設ける余裕がなく、その中で何とか緑や光や通風を確保したくて設ける場合が多いです。この場合、方位によって、陽ざしを取り入れたい部屋が1階にある場合、その対面の部屋は平屋にして陽ざしを遮らないようにしています(鎌倉の家)。敷地が広いのに、コの字型の庭を設けた事例に、庭そのものを計画のメインコンセプトにした「空環居」や「方円汎居」等があります。
建築計画の参考になれば幸いです。
通常、浴室にこだわるのは男性が多く、女性は洗いやすくメンテナンスの楽な浴室を要望されます。男性が口出すのは浴室ぐらいしかないという事情もあるかもしれません。
浴室はこだわらないので普通に、と言われても、自分が設計するからには、浴室に限らずあらゆる箇所を、要望や法的責任に関係なく、この程度の機能や快適性と美しさはなきゃいけないでしょう、という余計なお世話的に努めようとするところがあります。
その筆頭に浴室空間の快適性と他との差別化があります。予算があれば床や壁を石貼りや高価なタイルを貼ったり、高価なユニットバスにすることができますが、予算を加算せずにやれることは少なく、壁・天井と開口部を平易な材料でいじるぐらいしか操作できません。そのため安価な規格のハーフユニットを使い、開口部を有効に活用し、壁・天井に桧の板等を貼ることで、他との違いを表現することがよくあります。
檜板は手入れが大変では、と心配されますが、お風呂を最後に出る方が、濡れている板壁をタオル等で拭き取っていただければ、カビも発生しにくく、きれいに保てるようです。タイルやユニットバスとは一味違った趣があります。
それと窓からの眺めや見える小庭で、入浴中の心地よさが左右されるところがあります。他の視線を遮る手立てをしつつ植栽と照明で癒しの空間を何とか提供したいとあがいています。
さらに少しでも広がりを出しつつ、脱衣洗面所も広くかつ明るくするために、洗面所との間仕切りをガラスにすることもよくやります。もちろん年頃のお嬢さんのいる家は、ブラインドは必須です。
せっかく自分の家を創るなら浴室も気持ちよい空間にしませんか。
日本人の多くの方は和室にいると、落ち着き馴染むと言われます。整然とした床の間に掛け軸でもあると何となく、丸まった背をしゃんとしたくなる方も多いかと思われます。
数百年続いて洗練され、磨き上げられてきた和室は、日本人の体にしみ込んでいるからでしょうか。海外の方が真似して作った和室や床の間を見せていただくと、どことなく違和感を覚えるのもそのためと思います。
しかし今日の家づくりでは、和室は不要ですと言われる方も少なくありません。長い年月、和室の中で過ごすうちに、無用の長物というかあまりいい印象を持てなかった方も少なくないようです。
そこで和室を作るにしろ作らないにしろ、和室についての簡単な知識と、最近はこんな和室もできるということを知って頂くため、私どもの様々な事例を紹介してみようと思います。
先ずは仏壇付きの真壁の和室から。
木造建築では、構造体の柱をそのまま露にする見せる真壁構造と、柱を覆って見せない大壁構造とがあります。半世紀前の庶民の殆どの住宅は真壁構造でした。ここ半世紀で殆どが大壁構造になってきました。さらに和風住宅には大きく貴族社会の頃に発達した「寝殿造り」、武家社会で確立してきた「書院造り」、茶室から発生した「数寄屋造り」の三つのスタイルがあります。一般的和室は書院造を踏襲して構成されています。その辺りの一般的和室については、ネットに色々出ていますので、詳しく知りたいかたは、そちらで調べて頂くとして、ここでは省略します。
ただ、書道の文字に「楷書」「行書」「草書」の三段階の崩し文字があるように、和室の表情にも「真」(楷書)「行」「草」の崩し方があり、それに関連して私どもの和室の話をします。厳密な判断基準があるわけではありませんが、上の和室は真壁構造で長押も本格的なもので、真壁構造の「真」(楷書)の和室になります。
次に、上の和室は大壁構造に付け柱と付鴨居で真壁風にしたもので、楷書ほど堅苦しくなく「行」になるかと思います。この和室は居間に連続する空間となっていて、居間との間の襖を空け放すと和室の床の間が、そのまま居間の空間に方向性と奥を感じさせる効果も狙っています。 設計事例の北上尾の家を参照ください。
若い方も和室でなくてもいいから床仕上げを畳にと、要望される方も少なくありません。
このように今日では様々な和室があり、畳の部屋という言い方が相応しい和室もあります。最後に最初の計画では納戸にするはずの部屋を、多様な使い方ができるように和室にという、設計変更で、急遽和室にしたお部屋を紹介します。
武蔵浦和の調剤薬局棟は外壁施工中。その北面外壁工事も2階北面を残すのみで、もうすぐ終わりそうです。内部は2階のフローリング張りが完了し、壁・天井の石膏ボート張りが進んでいるところ。内部建具の枠付けも始まっていました。
工事完了予定まで、1か月を切りました。天気が心配でしたが、何とか大きな影響は受けず、工事は今のところ順調に進んでいます。外構工事は天気次第になってしまうので気がかりではありますが、天気に恵まれるように祈るのみです。
表側の外壁は、建主からのご要望で大谷石調のサイディングです。少し離れてみると大谷石のように見えます。庇工事も完了です。
前回のブログで紹介した建物南面のサイディングと違う柄です。手前側が大谷石調のサイディングです。
屋根は、シート防水工事は完了して、現在換気棟の板金工事が進んでいるところ。
内部は、断熱材の充填は終わり、内部壁下地の石膏ボード張りが進んでいました。
今日は武蔵浦和の調剤薬局棟で電気打ち合わせでした。現場はどんどん進みます。
現場は、屋根のシート防水工事は完了し屋根は換気棟が残っている状態。バルコニーの床もシート防水工事が完了。構造用合板張りやタイベック張り、通気胴縁は完了し外壁下地はほぼ終わりました。サッシの取り付けも完了。
上棟時にはまだついていなかった構造金物を確認しました。
電気関係は、外部照明器具やTVアンテナ等の位置を確認し、換気扇や天井埋込エアコン等の機器類の位置も最終確認。施主様から追加の要望があったコンセントや警備保障用の盤について位置を指示しました。
外壁は、南側のサイディングを張っているところでした。
1階の様子。調剤薬局の出入口の開口部は、コーナー窓でサッシではなく造作します。出入口は自動ドアを設置します。
2階は外壁の断熱材充填がほぼ終わりました。エアコン配管、換気扇のダクト工事も進んでいます。